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 ライムは過去に1度だけ唇を軽く合わせるだけのキスをしたことがある。ジギー様だ。ソレは最悪の記憶だった。

 乙女のイメージでキスとは、ドキドキ胸が高鳴り目を閉じて『チュッ』とするものだと思っていた。ソレが、フンフンッと鼻息荒く顔が近づき、唇が触れた時には気持ちが悪く、息が臭く、すぐに一歩後ろに下がってしまった。あれ以来上手く逃げていた。

 それなのに、マークとのキスはどこまでも甘く、もっとキスしていたくなる。頭が溶けてしまいそうだった。再び唇が吸い寄せられるそうになるが、ふと視界の端に薔薇の花がいっぱい落ちている事に気づいた。

 「あ、あの・・・。マーク?部屋に薔薇の花がいっぱい落ちているわ!?さっきはあったかな?うわっ!?ベッドの上まで!?」

 「ああ、真紅の薔薇が俺とハニーの花なんだね。情熱の赤か」

 ふっ、と笑いマークは薔薇の花を1本手に持ち、薔薇にキスをした。

 「あの・・・。意味が?」

 「ハニーの両親は番なのか?」

 「ええ、いつまでもラブラブな番ですけど」

 「家にはいつも花があるだろう?買ってるのを見た事がある?」

 「ん?そう言えば、うちには庭に、薔薇の花は無いし買ってるのも見た事ないかも」

 どうしてたんだろう?あんまり裕福じゃ無いからしょっちゅう買える訳ないし?

 「ハニーは番について何を知ってる?」

 「え?と、匂いがするとしか」

 「ふむ。普通、親が番ならそこそこ子供が大きくなったら不思議な事を説明しそうなものだがな?まず、匂いはお互いにしか感じない匂いがする。ハニーは甘い薔薇の匂いだ。そして、体液。唾液や血液や、まあ愛する時に出てくるモノだな、ソレは蜂蜜みたいに甘くてクセになる。俺とハニーのキスも甘々だな。で、花だ。お互いが愛しく感じると花が降ってくる。2人の周りに愛情が深いだけタップリな」

 ライムが周りを見渡すと、50本以上は落ちてると思う。

 「聞いた事無かった」

 「実はな、ハニーをココに運ぶ際、『番婚約破棄された子ですね』て言われたんだ。ハニーは俺の番。番が人と被る事は絶対に無いんだ。どういう事だ?」

 「うっ。聞いてくれますかっ!?実はっ!」

 と昼間にあった番婚約破棄の話をした。3年前の一方的な婚約者から。

 「ちょっと待て。さっき話した番の特徴的事例で、番かそうじゃ無いか分かりそうなものだろ?」

 「でも、匂いがしないって言うと、そんな訳無いって言い切られるし。伯爵家にはソレ以上何も言えないし。キスは気持ち悪かったし」

 「・・・、キスしたの?」

 「無理矢理1回だけ。気持ち悪かった」

 「・・・、そう。とりあえず、もう少しキスしようか?」

 それからマークは薔薇に埋もれるんじゃないかというくらい、甘い甘いキスをした。

 「あの、マークと私は番なの?」

 「鈍いハニーは、もっとキスが欲しいんだね?」

 ニヤリとマークは笑った。



 
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