君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)

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 やけ食いプランを頭の中で思い浮かべつつも、ライムの心は悲鳴を上げていた。ジギー様に一方的に番宣言をされてから、ライムの日常は変わった。ライムの家は男爵家で、父も母ものんびり優しい人だ。

 しかしジギー様はいつも上から目線の命令タイプ。休みの日もいつも振り回されていた。体調が悪くても断る事を受け入れてもらえなかった。ジギー様の両親はいつもピリピリとライムに冷ややかな態度を取っていた。

 それに、ライムのそれまでの親友たちも、一線を引いた態度になった。主にジギー様が原因だ。ライムの周りにいる男友達には、いつも因縁をつけて回った。女友達には、俺との時間を優先させろと言う。

 結果、ライムの周りには、友達が居なくなってしまったのだ。

 考えていたら、ライムは歩きながら泣き出してしまった。太陽が真上にある暑い時間帯にトボトボ歩きながら泣き、路に倒れ込んでしまい、そのまま意識を手放した。




 ライムが目を覚ますと、見知らぬ部屋だった。西日のオレンジの光が窓から差し込んでいる。

 どこだろう?

 起き上り、キョロキョロと部屋の中を確認すると、扉が開き1人の男性が入ってくる。

 「体調はどうかな?マイハニー」

 男性が近づいてくると、爽やかな薔薇の香りがした。背が高く、涼しげな目元のこの人にピッタリな匂いだ。

 ニコリと微笑みながら、おデコに手を当て、体温を測っているようだ。

 「うん、熱は下がったね。あんな所で倒れているから肝が冷えたよ。喉は乾いてないかな?果実水があるんだが」

 飲みたいっ!と思うが上手く声が出ない。

 すると男性はライムが水を飲みたい事がわかったようだが、何故か自分の口に水を含み、ライムに口付ける。そして舌で口を開けるように指示し、口移しで水を飲ませた。

 「んっ、甘い・・・」

 もっと飲みたくなる味だ。離れる唇を追ってしまう。その唇はまた水を含んだ。ライムは吸い寄せられるように唇に吸い付き、水を飲ませてもらった。

 「甘くて美味しい・・・。はっ!!貴方はっ!?」

 見ず知らずの男性の唇に吸い付いてしまった!!きゃ~っ、どうしようっ!

 「私は、マクシミリアン・ローランドだ。マイハニー、マークと呼んでくれ」

 ローランド、ローランド!?

 「おっ、王族の方ですかっ!」

 「マークだ」

 「・・・、マーク」

 「よろしい。ハニーが道端で倒れていたから、私の部屋に運んできた。軽い熱中症だったみたいだな。手当が早かったから、もう大丈夫だ」

 そう言って、マークは頭を撫でてから、抱きしめた。

 「生きた心地がしなかったぞ、マイハニー」

 唇に甘い・・キスを落とされた。

 そのキスは先程の果実水同様、甘かった。

 キスが甘い!?何で!?





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