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薬について調べてみたよ
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「うーん、演劇部じゃないとしたら、いったいどこで紛れ込んだのかな?」
お昼休みに昼食を食べ終わった僕は、通路の窓際で薬瓶を掲げながら目を細める。
そもそも胡散臭いんだよね、瓶に錠剤入ってる時点でまず病院で出される処方薬とは違うだろうし、かといって市販の薬にラベルがない、おまけに色とりどりっていうのがおかしいんだよね。
だから演劇部で使う小道具かなって思ったんだけどなぁ。
職員室でも一応聞いてみたけど、落としたって人はいなかったみたいだし、学校以外の場所で入り込んだ可能性ってあるかな。
そんなことを考えてると、後ろから誰かに瓶を持ってる方の手首を掴まれた。
「ふぇ?」
僕は振り返り、腕を掴んだ手の先を見ると入学式で見た顔がそこにいた。
「ええと、梅園.....くんだっけ?」
梅園くんの視線は、僕が手にもっている瓶に固定されていた。
「...この薬は、君の?」
僕は返答に困り首を傾ける。
「僕のではないのだけど、昨日カバンの中に紛れてて持ち主を今さがしているんだよね」
「なるほど」
よくみたら、この人なんで白衣着てるんだろう、謎だ。
白衣に視線が行っている事に気付いた梅園くんが、ああ、と呟く。
「自分は化学探究部なんだ」
そういえば、化学探究部は普段から白衣をきてる怖い人たちが多いとつかさが言ってたな。
僕は、梅園くんに事の経緯を説明した。
「君の持ってるその錠剤については、何かわかるかもしれない」
「本当ですか!?」
思わぬ展開に思わず前のめりになる。
「錠剤に番号が振ってある、検索すれば何かわかるかもしれない、よかったら部室のパソコンから検索しないかい?」
「はい、お願いします!」
僕は即答で頷いた。
今は少しでも情報が欲しいしね。
「ええっと、それで君の名前は」
ここでお互いに自己紹介をしてない事に気付いて、我に帰る。
「ああ!はじめまして、僕は1年の九条 円って言います、まどかって呼んでください」
「自分は梅園 璣(うめぞの たまき)だ、好きに呼んでくれ、それと、同じ一年だし敬語はいらない」
「うん、それじゃよろしくね、たまちゃん!」
◇
「残念なことに、この薬の製造番号はまだ登録されていないものだ」
僕はがっくりと肩を落とす。
「しかし、よく見ると薬瓶の底に製造番号が振ってある、この製造番号は東亜硝子の千葉にある工場のものだ、ここのHPをみると化粧品メーカーが主な取引先のようだが、その中で1つ興味深い企業がある」
たまちゃんは、パソコンの画面をこちらに向けその箇所を指差す。
「三喬製薬株式会社.....」
僕はその名前に聞き覚えがあった。
「ここの製薬会社は特殊でね、一般企業2社と日本政府による合弁企業で、主に陸軍の研究所で開発された製薬を製造しているメーカーだ、表向きは、軍に従事した兵士のPTSDの治療などに関する薬を製造しているとされている、だが裏では「軍で使用する毒薬や向精神薬などを研究しているですよね?」」
あくまでも噂でだけどね。
「知っているのか?」
たまちゃんは一瞬驚き目を見開くも、答えあわせをするように先を促す。
「うん、たまちゃんもさっき言ってたよね、この企業は一般企業と日本政府による合弁会社だって、この会社に出資してる2社のうちの1社は九条財閥だからね」
「もしやと思ったが驚いたな、九条財閥の子息がどうしてここに?普通は目白か神奈川にあるエスカレーター式の私学にいくんじゃ?」
「一般受験だよ、単純に一人暮らしがしたかったのと、ここだと知り合いもいないので気楽かなと思ったんだよね.....」
「そうか...」
たまちゃんは顎に手を置き思考を巡らせているようだ。
僕も会話に詰まり、お互いに沈黙が続くも、スピーカーから出たチャイム音によって遮られる。
「お昼終わっちゃったね、僕は教室にもどるよ」
「ああ、わかった」
僕は化学探究部の部室を出ようとノブに手をかける。
「.....まどか、自分の方でも調べておくが、家の者に聞いてみてはどうだ?恐らくそっちの方が手っ取り早い、それが三喬製薬の物であれば君の家で紛れたとしても不思議ではないしな」
「うん、騒がせてごめんねたまちゃん、自宅で紛れ込む可能性を失念していたよ」
「気にするな、何かあれば相談してこい」
そう言ってたまちゃんはメモに何かを書くと立ち上がり、僕の手にそれを握らせた。
渡された紙を広げると、たまちゃんの連絡先と思われる番号が書かれてあった。
「ありがとう、僕の連絡先も後で送っておくよ」
チャイムがすでになった事を思い出した僕たちは、慌てて部室をでてそれぞれの教室へと戻った。
◇
帰り道、僕は少し憂鬱だった。
とぼとぼと家に帰り、玄関を開けるとエプロン姿のトシが待っていた。
ちなみにトシが着ているエプロンは、僕が小学生の時に家庭科の授業で作った物なんだよね。
「おかえりなさいませ、まどか様」
そう言ってトシは、僕から荷物を受け取る。
「トシ、週末実家に帰るから一応連絡入れといて」
「まどか様、もしかしてお小遣い無駄遣いしちゃいました?」
失敬な!疑わしい目で僕を見るトシに対して、口を膨らませムッとする。
「違うよ、僕の鞄の中に会社の物が紛れ込んだかもしれないんだよね」
「そうですか、それはすいませんでした、ではご実家にご連絡いれておきますね」
トシは素直に謝罪し頭を下げる。
まぁ、僕の方から実家に帰るなんていうのは如何にも怪しいよね。
「ありがとう、頼むね、それと今日は先にお風呂入るから」
「わかりました」
僕はお風呂場に行き、1日の汚れを流れ落とすとバスタブに浸かり、一際大きなため息をついた。
お昼休みに昼食を食べ終わった僕は、通路の窓際で薬瓶を掲げながら目を細める。
そもそも胡散臭いんだよね、瓶に錠剤入ってる時点でまず病院で出される処方薬とは違うだろうし、かといって市販の薬にラベルがない、おまけに色とりどりっていうのがおかしいんだよね。
だから演劇部で使う小道具かなって思ったんだけどなぁ。
職員室でも一応聞いてみたけど、落としたって人はいなかったみたいだし、学校以外の場所で入り込んだ可能性ってあるかな。
そんなことを考えてると、後ろから誰かに瓶を持ってる方の手首を掴まれた。
「ふぇ?」
僕は振り返り、腕を掴んだ手の先を見ると入学式で見た顔がそこにいた。
「ええと、梅園.....くんだっけ?」
梅園くんの視線は、僕が手にもっている瓶に固定されていた。
「...この薬は、君の?」
僕は返答に困り首を傾ける。
「僕のではないのだけど、昨日カバンの中に紛れてて持ち主を今さがしているんだよね」
「なるほど」
よくみたら、この人なんで白衣着てるんだろう、謎だ。
白衣に視線が行っている事に気付いた梅園くんが、ああ、と呟く。
「自分は化学探究部なんだ」
そういえば、化学探究部は普段から白衣をきてる怖い人たちが多いとつかさが言ってたな。
僕は、梅園くんに事の経緯を説明した。
「君の持ってるその錠剤については、何かわかるかもしれない」
「本当ですか!?」
思わぬ展開に思わず前のめりになる。
「錠剤に番号が振ってある、検索すれば何かわかるかもしれない、よかったら部室のパソコンから検索しないかい?」
「はい、お願いします!」
僕は即答で頷いた。
今は少しでも情報が欲しいしね。
「ええっと、それで君の名前は」
ここでお互いに自己紹介をしてない事に気付いて、我に帰る。
「ああ!はじめまして、僕は1年の九条 円って言います、まどかって呼んでください」
「自分は梅園 璣(うめぞの たまき)だ、好きに呼んでくれ、それと、同じ一年だし敬語はいらない」
「うん、それじゃよろしくね、たまちゃん!」
◇
「残念なことに、この薬の製造番号はまだ登録されていないものだ」
僕はがっくりと肩を落とす。
「しかし、よく見ると薬瓶の底に製造番号が振ってある、この製造番号は東亜硝子の千葉にある工場のものだ、ここのHPをみると化粧品メーカーが主な取引先のようだが、その中で1つ興味深い企業がある」
たまちゃんは、パソコンの画面をこちらに向けその箇所を指差す。
「三喬製薬株式会社.....」
僕はその名前に聞き覚えがあった。
「ここの製薬会社は特殊でね、一般企業2社と日本政府による合弁企業で、主に陸軍の研究所で開発された製薬を製造しているメーカーだ、表向きは、軍に従事した兵士のPTSDの治療などに関する薬を製造しているとされている、だが裏では「軍で使用する毒薬や向精神薬などを研究しているですよね?」」
あくまでも噂でだけどね。
「知っているのか?」
たまちゃんは一瞬驚き目を見開くも、答えあわせをするように先を促す。
「うん、たまちゃんもさっき言ってたよね、この企業は一般企業と日本政府による合弁会社だって、この会社に出資してる2社のうちの1社は九条財閥だからね」
「もしやと思ったが驚いたな、九条財閥の子息がどうしてここに?普通は目白か神奈川にあるエスカレーター式の私学にいくんじゃ?」
「一般受験だよ、単純に一人暮らしがしたかったのと、ここだと知り合いもいないので気楽かなと思ったんだよね.....」
「そうか...」
たまちゃんは顎に手を置き思考を巡らせているようだ。
僕も会話に詰まり、お互いに沈黙が続くも、スピーカーから出たチャイム音によって遮られる。
「お昼終わっちゃったね、僕は教室にもどるよ」
「ああ、わかった」
僕は化学探究部の部室を出ようとノブに手をかける。
「.....まどか、自分の方でも調べておくが、家の者に聞いてみてはどうだ?恐らくそっちの方が手っ取り早い、それが三喬製薬の物であれば君の家で紛れたとしても不思議ではないしな」
「うん、騒がせてごめんねたまちゃん、自宅で紛れ込む可能性を失念していたよ」
「気にするな、何かあれば相談してこい」
そう言ってたまちゃんはメモに何かを書くと立ち上がり、僕の手にそれを握らせた。
渡された紙を広げると、たまちゃんの連絡先と思われる番号が書かれてあった。
「ありがとう、僕の連絡先も後で送っておくよ」
チャイムがすでになった事を思い出した僕たちは、慌てて部室をでてそれぞれの教室へと戻った。
◇
帰り道、僕は少し憂鬱だった。
とぼとぼと家に帰り、玄関を開けるとエプロン姿のトシが待っていた。
ちなみにトシが着ているエプロンは、僕が小学生の時に家庭科の授業で作った物なんだよね。
「おかえりなさいませ、まどか様」
そう言ってトシは、僕から荷物を受け取る。
「トシ、週末実家に帰るから一応連絡入れといて」
「まどか様、もしかしてお小遣い無駄遣いしちゃいました?」
失敬な!疑わしい目で僕を見るトシに対して、口を膨らませムッとする。
「違うよ、僕の鞄の中に会社の物が紛れ込んだかもしれないんだよね」
「そうですか、それはすいませんでした、ではご実家にご連絡いれておきますね」
トシは素直に謝罪し頭を下げる。
まぁ、僕の方から実家に帰るなんていうのは如何にも怪しいよね。
「ありがとう、頼むね、それと今日は先にお風呂入るから」
「わかりました」
僕はお風呂場に行き、1日の汚れを流れ落とすとバスタブに浸かり、一際大きなため息をついた。
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