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ダンデリオン+バードッグルート (ティザン)
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薬局の棚という棚には、陶磁器の壺やガラスの密封容器、木箱などかひしめき合うように並べてあった。
なかでもカウンターの後ろにある木製の薬棚は店の中でも一際重厚な存在感を放っている。
その中には様々な薬草たちがずらりと並び、古めかしくもどこか懐かしい雰囲気を醸し出していた。
店主はカウンターの上に広げた基剤を一つ一つ確認してはチェックをして棚へと戻しながら鼻歌を歌っては、その作業を楽しげに行っていた。
カラン、と控えめな鐘の音が店に響いて、一人の青年が入ってきた。
「戻りました。センセ」
「おかえり。配達ご苦労様」
青年は荷物を壁のツールに引っかけると胸元をパタパタさせながら水さしから水を注ぎゴクゴクと喉を鳴らして飲み干す。
青年はこの薬局の従業員で薬剤師ではあるが、まだまだ見習いで勤めて半年くらいである。ここ数ヶ月でようやく仕事に慣れ始めた頃だった。
「センセ、午後に二番街のセトリさんが店に寄りますって、言ってましたよ」
「そういえば、そろそろ処方していた分がなくなる頃だったかな」
のんびりと作業を続けながら「センセ、」と呼ばれた店主は、ふむ、と頷いた。
「じゃあ、準備しておきましょうか。エーリッヒは在庫チェックの続きをして」
「了解っす、センセ、」
エーリッヒと呼んだ青年に書き込んでいた帳簿を手渡したセンセ、は、カウンター横の桶で手を念入りに洗い、使い込んだ皮の手袋をはめて調剤にとりかかることにした。
「あ、なんか雨降りそうでしたよ」
「季節の変わり目は天候がコロコロ変わってしまうからね」
センセ、はのんびりとした口調でも慣れた手つきでセイヨウタンポポの根をローストしはじめる。
セイヨウタンポポの根はダンデリオンと呼ばれていて、ビタミンやミネラルがたっぷり含まれている。とても利尿作用効果が高い薬草だ。
消化も助ける効果もあって、乾燥したものそのままでも十分ハーブティーとして飲めるものの、苦味が強いのでローストして「タンポポコーヒー」なるものに加工にする事が多い。
センセ、はローストしたダンデリオンにバードッグルートも少し足した。バードッグルートは乾燥させたゴボウの事である。
これでセトリさんお気に入りのデドックス系としてはちょっと強めの薬草茶のできあがりだ。
あら熱をとったそれを袋に詰めて空気を抜く。センセ、にはいつもの作業だったが、エーリッヒにはまだまだ珍しいもので、在庫チェックの傍らセンセ、の作業をチラチラと見ていた。
「……センセ、はデドックス系の処方には必ずティザンしますけど理由があるんですか?」
ティザンとは香りの高いハーブや植物の抽出液のことで、健康作用やリラックス効果、気力が出る香りなどを目当てに飲まれるものだ。
カフェイン飲料の代わりになるものとして飲まれる。
「理由? メリットかなぁ……ティザンだとアロマテラピーの効果がそれ単体よりも多く含まれるからね。だからかな?」
「アロマかぁ……そっちも勉強した方が良いのかな?」
「まあ、知っておいて損はないと思うけど」
センセ、はにこりと微笑んで「難しいよ?」と、エーリッヒに答えた。
その風貌は纏っている雰囲気はどこまでも優しく暖かいまるで陽だまりの様だとエーリッヒは思うのだ。
本人にしてみれば常に黒い衣服を着込んだ者を陽だまりのようだと例えるのは可笑しいと思っているらしかったが。
「あ、雨が降る前に乾燥させている薬草たちを取り入れてきてもらえる?」
「りょーかいです。シア、センセ、」
新緑の季節の雨は恵みをもたらす雨でもある。
きっと店の裏の薬草畑にも恵みをもたらしてくれるであろう。
なかでもカウンターの後ろにある木製の薬棚は店の中でも一際重厚な存在感を放っている。
その中には様々な薬草たちがずらりと並び、古めかしくもどこか懐かしい雰囲気を醸し出していた。
店主はカウンターの上に広げた基剤を一つ一つ確認してはチェックをして棚へと戻しながら鼻歌を歌っては、その作業を楽しげに行っていた。
カラン、と控えめな鐘の音が店に響いて、一人の青年が入ってきた。
「戻りました。センセ」
「おかえり。配達ご苦労様」
青年は荷物を壁のツールに引っかけると胸元をパタパタさせながら水さしから水を注ぎゴクゴクと喉を鳴らして飲み干す。
青年はこの薬局の従業員で薬剤師ではあるが、まだまだ見習いで勤めて半年くらいである。ここ数ヶ月でようやく仕事に慣れ始めた頃だった。
「センセ、午後に二番街のセトリさんが店に寄りますって、言ってましたよ」
「そういえば、そろそろ処方していた分がなくなる頃だったかな」
のんびりと作業を続けながら「センセ、」と呼ばれた店主は、ふむ、と頷いた。
「じゃあ、準備しておきましょうか。エーリッヒは在庫チェックの続きをして」
「了解っす、センセ、」
エーリッヒと呼んだ青年に書き込んでいた帳簿を手渡したセンセ、は、カウンター横の桶で手を念入りに洗い、使い込んだ皮の手袋をはめて調剤にとりかかることにした。
「あ、なんか雨降りそうでしたよ」
「季節の変わり目は天候がコロコロ変わってしまうからね」
センセ、はのんびりとした口調でも慣れた手つきでセイヨウタンポポの根をローストしはじめる。
セイヨウタンポポの根はダンデリオンと呼ばれていて、ビタミンやミネラルがたっぷり含まれている。とても利尿作用効果が高い薬草だ。
消化も助ける効果もあって、乾燥したものそのままでも十分ハーブティーとして飲めるものの、苦味が強いのでローストして「タンポポコーヒー」なるものに加工にする事が多い。
センセ、はローストしたダンデリオンにバードッグルートも少し足した。バードッグルートは乾燥させたゴボウの事である。
これでセトリさんお気に入りのデドックス系としてはちょっと強めの薬草茶のできあがりだ。
あら熱をとったそれを袋に詰めて空気を抜く。センセ、にはいつもの作業だったが、エーリッヒにはまだまだ珍しいもので、在庫チェックの傍らセンセ、の作業をチラチラと見ていた。
「……センセ、はデドックス系の処方には必ずティザンしますけど理由があるんですか?」
ティザンとは香りの高いハーブや植物の抽出液のことで、健康作用やリラックス効果、気力が出る香りなどを目当てに飲まれるものだ。
カフェイン飲料の代わりになるものとして飲まれる。
「理由? メリットかなぁ……ティザンだとアロマテラピーの効果がそれ単体よりも多く含まれるからね。だからかな?」
「アロマかぁ……そっちも勉強した方が良いのかな?」
「まあ、知っておいて損はないと思うけど」
センセ、はにこりと微笑んで「難しいよ?」と、エーリッヒに答えた。
その風貌は纏っている雰囲気はどこまでも優しく暖かいまるで陽だまりの様だとエーリッヒは思うのだ。
本人にしてみれば常に黒い衣服を着込んだ者を陽だまりのようだと例えるのは可笑しいと思っているらしかったが。
「あ、雨が降る前に乾燥させている薬草たちを取り入れてきてもらえる?」
「りょーかいです。シア、センセ、」
新緑の季節の雨は恵みをもたらす雨でもある。
きっと店の裏の薬草畑にも恵みをもたらしてくれるであろう。
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