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記録1
7日目/6pm●
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「陽加古さーん。」
拠点を出て、陽加古さんの名前を呼びながら歩いていると、いつの間にか海岸沿いにまで来ていた。夕方の海には夕日が差し掛かり、水面に反射して、茜色の空が一層輝きを増していた。
「綺麗だな…」
そんな景色に、ついつい気を取られていると、視界の棲みにあった崖の上に、人の姿のようなものが現れた。
(あれは…もしかして陽加古さん?)
と思い、足を進める。
海沿いに沿って、砂浜を走っていくと、石碑のように高く聳え立つ大岩へと辿り着く。そのすぐ手前には、崖へと続く、森で覆われた分かれ道があった。躊躇わずに、分かれ道を真っ直ぐ突っ切ると、つい先ほど目の端で確認した、崖の手前にへと出た。
だが、夕日の光がちょうど崖全体を覆うようにして差し掛かっていた。そのため、眩しくて目も開けていられない。
そんな状態であったため、崖へとたどり着くも、人影の近くまでよらないと、正体を知るということは出来なかった。
顔を下に伏せながら、前へと進む中、時々、
「陽加古さーん?」
と、名前を呼びながら、一歩一歩崖を登っていく。
そして…頂上、ちょうど人影があった辺りまでやって来た。
「陽加古さん…?」
顔を上にあげ、声を掛けた…その直後である。
ボチャッ
という音と共に、先ほどまであった人影が姿を消した。
「え…」
一瞬の出来事であった。
急ぎ、崖の下にへと目をやる。
だが見えたのは、崖下の岩山へと強く打ち付ける白波の水しぶき。
海面の詳しい様子を見ることなんて出来なかった。
「嘘だろ…」
手も足も出せぬまま、呆然とその場にへたれこむ。
一瞬…見間違えだと思ったが、そんなはずはない…この目で確かに、人が目前でいなくなるのを見た。
崖から落っこちのだ。
「陽加古さん…」
「…」
「…伝えないと…」
ショックで朦朧とする意識の中、立ち上がり、拠点へと向かった。その足どりは決して軽いものではなかった。
時間を掛けて、海岸沿いへと戻ってきた。
「何か鉄臭いな…」
海沿いに歩いていると、やたらと鉄臭い匂いが鼻につく。
(一体、この匂いの正体は何なのだろうか…)
そう思った直後であった。
「あれは…!!」
海沿い遠方、その海面上に人の手首や足首、その他顔を除く、諸々の部位が浮かんでいた。
その辺りの海面が血で真っ赤に染まっていたお陰で、匂いの正体もすぐに、否応なしに理解できた。
「一体誰の…」
そう口に出しながらも、頭の中では最悪の状況を想定していた。
「…。」
無言で後退りしてしまう。
(どうしてこんなことに…)
頭が追い付かない…
この島に来て、人の死を何度見ることになるなんて…
それよりも、こんな状況なのに自分は何も出来ていない…
「ッ…!」
自分自身に問い続ける。
その最中であった。
キュエエエエエェェェー
という悲鳴が鼓膜へと響く。
突然の事態に驚き、瞬間、耳元に手を当てた。
そして、辺りを見回すと…
「何だ…あれは…」
目についたのは、拠点を破壊し、そこから伸び出て来る無数の人の手足であった。
拠点を出て、陽加古さんの名前を呼びながら歩いていると、いつの間にか海岸沿いにまで来ていた。夕方の海には夕日が差し掛かり、水面に反射して、茜色の空が一層輝きを増していた。
「綺麗だな…」
そんな景色に、ついつい気を取られていると、視界の棲みにあった崖の上に、人の姿のようなものが現れた。
(あれは…もしかして陽加古さん?)
と思い、足を進める。
海沿いに沿って、砂浜を走っていくと、石碑のように高く聳え立つ大岩へと辿り着く。そのすぐ手前には、崖へと続く、森で覆われた分かれ道があった。躊躇わずに、分かれ道を真っ直ぐ突っ切ると、つい先ほど目の端で確認した、崖の手前にへと出た。
だが、夕日の光がちょうど崖全体を覆うようにして差し掛かっていた。そのため、眩しくて目も開けていられない。
そんな状態であったため、崖へとたどり着くも、人影の近くまでよらないと、正体を知るということは出来なかった。
顔を下に伏せながら、前へと進む中、時々、
「陽加古さーん?」
と、名前を呼びながら、一歩一歩崖を登っていく。
そして…頂上、ちょうど人影があった辺りまでやって来た。
「陽加古さん…?」
顔を上にあげ、声を掛けた…その直後である。
ボチャッ
という音と共に、先ほどまであった人影が姿を消した。
「え…」
一瞬の出来事であった。
急ぎ、崖の下にへと目をやる。
だが見えたのは、崖下の岩山へと強く打ち付ける白波の水しぶき。
海面の詳しい様子を見ることなんて出来なかった。
「嘘だろ…」
手も足も出せぬまま、呆然とその場にへたれこむ。
一瞬…見間違えだと思ったが、そんなはずはない…この目で確かに、人が目前でいなくなるのを見た。
崖から落っこちのだ。
「陽加古さん…」
「…」
「…伝えないと…」
ショックで朦朧とする意識の中、立ち上がり、拠点へと向かった。その足どりは決して軽いものではなかった。
時間を掛けて、海岸沿いへと戻ってきた。
「何か鉄臭いな…」
海沿いに歩いていると、やたらと鉄臭い匂いが鼻につく。
(一体、この匂いの正体は何なのだろうか…)
そう思った直後であった。
「あれは…!!」
海沿い遠方、その海面上に人の手首や足首、その他顔を除く、諸々の部位が浮かんでいた。
その辺りの海面が血で真っ赤に染まっていたお陰で、匂いの正体もすぐに、否応なしに理解できた。
「一体誰の…」
そう口に出しながらも、頭の中では最悪の状況を想定していた。
「…。」
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キュエエエエエェェェー
という悲鳴が鼓膜へと響く。
突然の事態に驚き、瞬間、耳元に手を当てた。
そして、辺りを見回すと…
「何だ…あれは…」
目についたのは、拠点を破壊し、そこから伸び出て来る無数の人の手足であった。
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