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16章
遊び尽くしたその後は……1
しおりを挟むおばあちゃんに抱えられて眠った翌日、目を開けたらインプの顔がドアップで視界いっぱいに広がっていて、目覚めてすぐ叫ぶハメに。
ホント心臓に悪いから驚かさないでほしい……寝起きにインプの笑い声もビックリするんだよね……
私が寝かされていたのはおばあちゃんの空間に置かれたベッド。呼ばれたそのままお泊りしたみたい。
精神的な疲労からくる、なんとなくの不快感みたいなのがなくなったのはおばあちゃんのおかげっぽいな。
クラオル達の許へと戻された私は、おばあちゃんとインプのアドバイスに従い、気分転換にいろんなところへお邪魔することに決定。
まずはキヒター達がいる教会。ゾーノとキヒターに仲よくお出迎えされてちょっとビックリした。
本人によると、ゾーノはよく教会の方に来ているとのこと。異常を感知したらすぐ戻るから安心してって言われた。
そういえばそんな話だったね。仲よきことはよきことよ。存分に遊んでくれ。
そんなに仲よしなら「普段はこっちにいて、その異常を感知したときだけ戻ればいいんじゃない?」って言ったんだけど、それはダメなんだって。彼らの説明をまとめると、どうやらメインはメインとして扱わないといけないらしい。
シュティーとカプリコはお気に入りのガルドさん達(特にジュードさん)に会えて嬉しそうだった。
次はクラオルファミリーのところ。モフモフ達は相も変わらず大変可愛かった。
グレンは森に狩りに行くのかなって思ってたんだけど、珍しくファミリー達に埋もれて寝ていた。キヒターの教会に泊まってる間狩りに行ってたからいいんだって。モフモフに囲まれて眠るグレンが可愛すぎて、やっぱり写真が欲しくなった。
可愛いは正義。モフモフしか勝たん。モフモフよ、永遠なれ。
続いて精霊の国。育ててくれていた食材や生ハム、かつお節の在庫がめちゃくちゃ増えたし、頼んでいた魔導具の他にもなんかいろいろもらった。
ミスリルカイーコからの大量の糸にはポラルがウッピウピ。髪飾り系は私の髪の毛のアレンジが楽しくなるわとプルトンがご機嫌に。
お礼に精霊達と一緒にパン製作。これには精霊達が大フィーバー。ワイワイと楽しいクッキングだった。
普段精霊の国にいるアレス達ともボールやバドミントンモドキの他に、ドロケイ(ケイドロ)、缶蹴り、だるまさんがころんだ、フルーツバスケット……なんて、マジな子供のように遊び倒した。
精霊同士のバトルが結構容赦なくて、魔法の応酬に発展することが何回かあった。普段はゆるふわなユピテルも意外と好戦的なことを知った。
そしてグーさんのところ。手紙のやり取りはしていたとはいえ、会うのは本当に久しぶり。サーカスから逃した魔物達も大歓迎で喜んでくれた。
グレンが〈ヒマだからダンジョンに入ってくる〉と、自ら望んであのマッスルダンジョンに入ろうとしたことに驚き。
この森は虎達が計算して獲物を狩っているため、気を利かせた結果らしい。ついでにと、マジックバッグを持たせてプロテイン集めを頼んだら、ネラース達も連れて行った。
おかげでアーロンさん用のプロテインの在庫が増えたよ、ありがとう。
締めは……キアーロ国の王都、ベトヴァウムで一人カラオケ。
クラオルに『夢中になりすぎちゃダメよ!』ってめちゃくちゃ言い聞かせられた。心配性なクラオルはご飯タイムと寝る時間になったら部屋に突撃してきて、オールなんて出来るハズもなく……とても健康的なカラオケ二日間だった。
沖縄民家な家では時間がゆっくり流れている気がして、縁側で三線弾いたり、畳でゴロゴロしたり……こちらも心が和らいだ。
基本的にはガルドさん達が一緒で、キヒターの教会やクラオルファミリーの棲家にはスタルティ達も。
それぞれのところで連泊させてもらい、私は復活!
スタルティとアチャもしっかりと癒やされたみたいで表情が明るくなった。
◇
リフレッシュから帰ってきた私達を迎えたのは死んだ魚のような目をしたアデトア君だった。
どうしたのかと聞けば、そろばんで効率が上がったのはいいものの……過去の書類の不備(主に計算間違い)が大量に見つかって、現在進行系でてんやわんやなんだそう。
「現存する全ての書類に修正をかけなきゃいけないかもしれない」
「あぁー……なんかごめん。頑張ってとしか言えない」
「いや、セナのおかげで発見できたようなものだから謝るな。そうじゃなくて……セナへの支払いに遅延が生じる可能性がある」
あれもこれも……でグチャグチャに。何がなんだかわからない状態になっちゃったんだって。
「私は別にせっつく気はないけど、私以外にも遅延……ってなると国の信用失くすことにならない?」
「まぁ、そうなんだが……」
「一回リセットしちゃえば?」
「リセット?」
おそらくになるけど、現状を考えると建国した当初から書類に不備がある可能性が高い。そこまでの書類を全て確認するとなると何十年ってかかるでしょ? だから、過去は過去で置いておいて、今ある国のお金を計上して、そのお金の配分っていうか、どうやりくりするのかを考えるの。
「過去の間違いはもう直せないってことで教訓に留めておいて、今現在から始めるんだよ」
「なるほど。その方がよさそうだな」
アデトア君は早速伝えてくると部屋を後にした。
横領に使い込み、隣国関与の殺人事件もあったのに大変だな……ヴィルシル国、金運に見放されてるんじゃないの?
――なんてことがあった後、シュグタイルハン国やキアーロ国でも似たようなことが起こっていることをアーロンさんやドヴァレーさん、ブラン団長達からの手紙で知った。
アデトア君にした話を返事として送ったら、各国似たような対応をすることになったみたい。
冒険者と商業の両ギルドも誤差が出たそう。こちらはお城ほどひどくなかったみたいで、「これから気をつけよう」って早々に見切りをつけたらしい。決断が早いよね。
そろばんが優秀すぎる弊害か……? いや、これから先の未来を思えば、これでよかったんだろう。
実際、彼らからの手紙にはお礼が書かれていたのだから。
それにしてもさ……そろばんってそんな早くマスターできるもんなの? この世界の人、ポテンシャル高くない? 作って宣伝しておいてなんだけど、私そんなに得意じゃないんだよね。
◇ ◆ ◇
今日は生憎の雨模様。なのにニキーダとアチャは朝から買い物をしてくると出かけて行った。
アデトア君も落ち着いたっぽいし、そろそろ出発したいところ。
だが、その前に私はやらねばならぬことがある……ということで、クラオルにお願いしてパパ達と約束を取り付けてもらっておいたのだ。
「セナさ~ん!」
「セナ!」
「!」
久しぶりのエアリルパパの突撃ハグ。体に走った衝撃で頭が取れるかと思ったよ。
ニッコニコのエアリルパパに抱えられ、私のコテージの空間から神界へ移動。私はごく自然にいつものリビングでアクエスパパの膝の上に座らせられた。
「妾の膝がよければいつでも来ていいからの」
「セナさんが希望するなら僕の膝でもいいんですよ」
「ジャンケンで勝ったのは俺だ」
珍しくケンカしないなと思ったら、ジャンケンで決めてたのね……神様もジャンケンするんか……
「ほら、話が進まないでしょう。それで、どうしたのかな?」
さすがガイ兄。話を進められるよ、ありがとう。
「あのね、離れててもすぐにみんなに会いに行けるように、コテージとキヒターの教会かキアーロ国の家を繋げて欲しくて……お願い」
喰らえっ、私の最大限の媚売りを!
両手を握り、順番に目を合わせてウルウル上目遣いでおねだり。
あざとさ満点である。ここは恥ずかしがっている場合じゃないのだ。開き直りよ。
「「「ン゛ッ(がわ゛い゛い゛……!)」」」
「ふふっ」
パパ達とイグ姐は勢いよく上や横を向いてしまい、ガイ兄には笑われた。
顔を背けられるほど見るに耐えなかったか……ごめん。
「やっぱダメ……?」
「ふふふっ。アクエス達のことは気にしなくて大丈夫だよ。それで、コテージと繋げて欲しいんだっけ?」
「うん。そしたら今より会いに行けるから私も嬉しいし、シュティー達に寂しい思いをさせないで済むかなって思って」
キアーロ国かキヒターの教会に繋げてもらえれば、ジィジ達やブラン団長達、精霊の国にクラオルファミリー達にもすぐ会いにいける。あとは、せっかく作ってもらったカラオケも活用したいんですよ、私は。
まぁ、転移の精度を上げて長距離移動を出来るようになればいい話なんだけどさ。カラオケのために長距離移動って、面倒になるのが目に見えてるんだよね。
それに……疲れてるとき会いたくなっても魔法禁止令がクラオル達から出される可能性が高い気がするのよ。
「んー……それは構わないんだけど、条件があるかな」
「……条件?」
神が条件として出すってなんだろう? 私に甘々だけど、個人的なお願いが過ぎるってことだよね……
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