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16章

商会長集合

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 あのパーティーが終わってからしばらくはお城中がバタバタしていた。配置転換や新規で雇う人の部署決め等々。もともとその予定で動いていたものの、いざとなると想定外のことが起きたり、伝達ミスがあったり……といろいろあったらしい。

 アデトア君の部下は私達がチェックしたオススメ人物達を中心に声をかけたみたい。
 私とアデトア君は忌み子のイメージで断られることも想定していたんだけど……あの宰相が「君たちは優秀ゆえ中核を担うに相応しいと抜擢された」なんて口車に乗せ、全員が了承したそう。「あなたは何を知ってるの?」ってツッコミは誰もいれなかったらしい。

 そんな中、私は私で別件でいろいろと動いていた。
 カリダの街へ飛び、キアーロ国の王都へ飛び、ピリクの街へ飛び、シュグタイルハン国の王都へ飛び……ブラン団長達は第二騎士団総出で大歓待だったし、サルースさんには新作料理を求められたし、タルゴーさんは大興奮だったし、アーロンさんは「しばらく会えないかと思ってたんだがな」と笑っていた。

 ◇ ◆ ◇

 目処が立ち、諸々が一段落した今日、ゾロゾロとみんなを引き連れ、城下のとある邸宅を訪れた。
 通された応接室では、目的の人物が揃って待ち構えていた。

「まぁ、セナ様! お会いできて嬉しいですわ! 本日はとても楽しみにしておりましたのよ!」
「此度はわたくし共にもお声をかけていただき、大変光栄に存じます」

 タルゴーさんの勢いが予想外だったのか、アデトア君がビクッと反応していて笑いそうになった。
 今回待ち合わせしていたのはタルゴーさんとデタリョ商会のおじいちゃん。それぞれ執事も一緒だ。
 相変わらずタルゴーさんは〝ですわ〟だし、おじいちゃんは言い回しが丁寧である。

「今日は来てくれてありがとう。先に紹介するね。奥から順に――」

 タルゴーさんとダーリさんは知っているメンバーもいるけどデタリョ商会のおじいちゃん達もいるので、アデトア君、ジィジ達、ガルドさん達と順番に紹介していく。
 タルゴーさんはアデトア君よりもガルドさん達を見て目を輝かせた。

「まぁ! あなた方が【黒煙】の皆様ですのね! お話は聞いておりますわ! お会いできて光栄ですわ!」
「あ、あぁ……」

 ガルドさんの手を両手で握り、ブンブンと上下に振っている。ガルドさんはタルゴーさんの勢いに呑まれ、タジタジだ。

「奥様、興奮するのはわかりますが、まずは座られては?」
「はっ! そうですわね。失礼いたしましたわ」

 執事のダーリさんのおかげで少し落ち着いたタルゴーさんに促され、私達は着席。そこへ執事組が紅茶を配っていく。打ち合わせをしたわけじゃないのに、それに交ざっているジルとアチャは流石としかいいようがない。

「ドラゴン便、大丈夫だった?」
「それはもう! 空を飛べる日が来るなんてなんて思いませんでしたわ!」
「とても快適で、ありがたい限りでございます」
「ならよかった。グレン、アインスさん達にありがとうってアレ渡してあげて」
〈うむ。われが戻るより先に移動するなら連絡しろ〉
「りょーかい」

 今回タルゴーさん達を運んでくれたのはグレンの部下達四人のドラゴン。
 まとめ役のアインスさんと二番手のツヴァイさんは喋れるんだけど、荷物を担当してくれた六番手のゼックスさんはカタコトだし、八番手のアハトさんはドラゴンの言葉しか喋れない。
 そのため、今現在街から少し離れた場所に待機している。街中でドラゴンの鳴き声が響き渡ったらまた混乱させちゃいそうでしょ?
 大量に作ったパンを持たせたし、グレンが労ってあげる予定である。

「セナ様がお作りになったあの箱? も素晴らしかったですわ!」
「えぇ、ほとんど揺れも感じず、馬車より快適なくらいでございました」

 タルゴーさん達が褒めてくれているのは私が作った乗り物だろう。
 グレンのときはバスケット型にしたけど、アインスさん達がどう飛ぶのかがわからなかったため、落ちないように箱型にした。モデルは観覧車のゴンドラである。強風を受けようがゆらゆら揺れるくらいで落ちる心配がない。乗り物酔いは……自己責任で。一応外が見えるように窓は付けてあるし、換気扇の魔導具も設置してある。さらに錆びたり、劣化したりしないように全体をコーティング。中にはシートベルトも作ったし、衝撃でエアバッグが作動するようにもした。

「あ、そうそう。あれ、今後もこうやって集まってもらうこともあるかもしれないから二人に持っててもらおうかと思って」
「まぁ! よろしいんですの!?」
「うん。でも結構重さがあることと、いろいろ魔道具化してるからあまり人前に出して欲しくないんだよね。だから保管はなるべくマジックバッグでお願いしたい」
「もちろんですわ!」
「容量が大丈夫なら持ってて。ドラゴン達が許可するなら普段も使っていいよ。ただ、乗り降りの場所は気を付けて欲しいかな。街の人が混乱したり、周りの魔物が騒ぐこともあるだろうから」
「かしこまりましたわ!」

 両商会共にマジックバッグでの保管を約束してくれたので大丈夫でしょう。
 次の話題に移ろうかというとき、おじいちゃんから名前を呼ばれた。

「セナ様、あの乗り物は買い取りということでよろしいでしょうか?」
「へ? 今回来てもらうために作ったものだからお金は別にいらないよ」
「「それはいけません(わ)!」」
「大変貴重なものにございます。我々が自由に使えるとのことならば相応の金額をお支払いしなければなりません」
「そうですわ!」
「いや、日頃お世話になってるし」
「それはわたくし達の方ですわ!」
「えぇ。身の安全、収益は増し、店舗も拡大。過去に役に立たないと言われていたものを使用したレシピ。全てセナ様のおかげでございます」

 レシピは登録しているけど、全部丸投げ状態だからお金だけもらって何もしていない状態なんだけどな……
 おじいちゃんとタルゴーさんに結託され、私は降参。それぞれ五千万なんていう大金を押し付けられた。
 プルトンが《かなり安く見積もったわね。まぁ誠意は感じるわ》って言っていたセリフは聞かなかったことにした。こちらはタダのつもりだったんですよ。

「えっと、本題に入ろうか」



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