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16章

紙相撲と紙芝居(*お知らせアリ)

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 久々のお昼更新ですね。寝落ちで時間設定しきれてませんでした。朝間に合わなくてすみません。
 お先にお知らせをば。
 Twitterで先にお知らせしていたので知っている方は知っていると思いますが……

 * 第三巻が発売されます!!! *
    出荷日は~【5月22日】
     そう、来週です。

 楽しみにしていてくださった方々、大変お待たせ致しました。
 書影はまだ担当編集さんからもらっていないので見せられないのですが、今回もキャナリーヌさまが可愛く描いてくださってます!
 NEWキャラクター現る!?
 そちらは書影をいただき次第公開予定です。お楽しみに!
 今公開できる詳細は本日の夜に近況ボードにてまとめたいと思っております。


 今回ちょっと長くなっております。
 では本編をお楽しみくださいませ。

--------キリトリ線--------


「そもそも、セナ様がヴィルシル国の恩人だということを理解しておられますか? あなた方はこちらの王族の方々の血筋が途絶えても構わなかったと?」
「ハンッ。何を言うかと思えば馬鹿馬鹿しい! 関係のないことまで持ち出して混乱させる気か? 私がいる限り騙し通せると思うな!!」

 ジルの発言を宰相は鼻で嘲笑う。
 ん? ちょっと待って。何かおかしくない? こう、話が通じてなくない?

「ね、ねぇ、なんで今まで王族の血縁者に忌み子が生まれたかわかってる?」
「は? 理由などあるわけないだろう! わけのわからないことを言いおって……!」

 宰相は叫ぶように捲し立て、壊しそうな勢いでテーブルをバンッと叩いた。
 フゥフゥと肩で息をする宰相と、シラけ気味の私達との温度差が激しい。
 うん、確実にわかっていないパターンですね。

〈話にならんな〉
「だねぇ……((ねぇ、プルトン。怒鳴り声で話の腰を折られたくないからさ、こっちの声は向こうに聞こえるけど、向こうの声はこっちに聞こえない、みたいな結界って張れる?))」
《((任せて! 黙らせてあげるわ!))》

 念話で頼んだ私にパチンとウィンクをキメたプルトンは瞬時に結界を張った。
 黙らせるとは少し違うんじゃないかと思ったものの、結界によって宰相の声が聞こえなくなったからいいか。気にしたら負けよ。

「王様、この人になんて説明したの?」
「火山への入山許可の代わりに、アデトアに魔力制御を教えてくれ、さらに暴発させないように天狐と共に魔導具を作ってくれたと」
「簡略化させすぎでしょ! 火山については? 話してないの?」
「魔に堕ちたドラゴンが居座っていたが、セナ嬢達が追い払ったと説明した」

 うん、王様の言葉足らずが原因ってことがよくわかった。こうなった原因はあなたですよ、王様!
 アデトア君もそう思ったんだろう、頭を抱えてしまった。

「僕もそう聞いていましたけど、違うのですか?」
「違くはないが肝心なところが抜けてるんだよ……」
「魔導具の素材については話さないと約束したし、ドラゴンの里のことはこちらに関係ないゆえ、そう説明したのだが、何かいけなかっただろうか?」

 不思議そうに首を傾げる王様は本当にわかっていなそう。
 確かに赤獄龍せきごくりゅうや族長のおじいさんのことはこの国に直接関係があるわけではないけどさ……逆にこの説明で、よくフラーマ王子は納得したな……あ、ブラコンだからか。

「なんで居座っていたか、居座ったことによる弊害を説明していないのなら、宰相さんの態度も納得だよ……」

 私がそう言った後、顔を見合わせた私達は揃ってため息をついた。
 アデトア君が「オレも報告のときに同席すればよかった……」と項垂れているのを横目に、ジィジ達と一緒にいるガルドさんに魔通を使って連絡を取る。
 ジィジの返答をガルドさんから伝えてもらった私は必要なものをテーブルの上に出していく。

「セナ、紙なんか出してどうする気だ?」
「スタルティみたいに上手くないけど、口だけで説明するより、絵があった方がわかりやすいかなって思って」
「なるほど」

 アデトア君が納得したところで、私はカラーペンを手に取る。
 いざ、描き始めようとしたとき、ジルから声がかけられた。

「セナ様、何かお手伝いできることはありますか?」
「あ、なら、私がメイン描くから、ジルには背景頼んでもいい? イスこっち持ってきて隣においでよ」
「かしこまりました」
〈セナ、われは? 時間がかかるならリバーシがいい!〉
「あぁー………………あ! 新しいの作ってあげるよ。ちょっと待ってね」

 いいことを思い付いた私はペンから手を放し、厚紙を折ってからハサミで切っていく。それに人の絵を描いたら主役の出来上がり。そう、紙相撲用の力士です。色違いの方がわかりやすいかなとフンドシの色を赤と青にしてみた。ダンボールの代わりは木箱。真ん中に置いた円状の紙が土俵代わりだ。
 リバーシを渡さなかったのは盛り上がりすぎるから。紙相撲なんて幼児時代に見てた教育番組のワ◯ワ◯さん思い出しちゃったよね。毎度サポートしてくれるジルはゴ◯リのポジションかな?
 見本としてジルと対戦をして見せると、グレンは目を輝かせた。

「ジル、ストップ。こうやって戦って、自分の力士がこの円形の紙からはみ出たり、転んだりしたら負け。今回は私の赤色力士が倒れたから、私の負けになるの」
〈勝負か、楽しそうだ!〉

 最初はグレンVSクラオル・グレウスみたい。グレンは両手、クラオルとグレウスは木箱に乗ってジャンプで振動させるらしい。
 クラオルとグレウス大変だな……後でたっぷり労ってあげよう。何かデザートを作ってあげるのもアリかも。
 盛り上がり始めた声を聞きながら、私とジルは紙芝居用の絵を描き始めた。


――一時間後。
 ようやく完成した紙芝居に、ふぅ……と息を吐く。
 十枚を超える枚数を一時間で終わらせたことに満足感を覚えるね。まぁ、ジルが背景を描いてくれたことが大きいんだけどさ。ジルさん、普通に上手いのよ。才能ありすぎじゃない?

 声をかけようとそちらに顔を向けると、いつの間にかグレンの相手がアデトア君になっていた。集中してて気付いてなかったわ。

「お待たせ、終わったよ~」
〈ちょ、ちょっと待て……あ! あああああ!! コケ、コケッ……クソッ、コケた!〉

 私が声をかけたせいで集中力が途切れたのか、振動させる力加減を間違えたのか……赤フンドシの力士がお尻の折り目を支点にクルクル回ってノックアウトしてしまった。
 盛大に悔しがる様子から、赤フンドシがグレンの担当だったことが窺える。

「え、なんかごめん」
〈……いい。無効だと思うが、今回の勝ちは譲ってやる。われは優しいからな!〉
「驚いたんだろ? 無効でいい」

 願望がダダ漏れなあげく、エラそうなグレンの発言にアデトア君は苦笑いで答えていた。
 うちのグレンがごめんね。気を利かせてくれてありがとう。
 これ以上ご機嫌ナナメにならないようにウィンナーロールを出した途端、機嫌が直ったグレンにアデトア君がジト目を向けている。

「さてさて、お話始めるよ。宰相さん達はよく聞いててね。〝魔に堕ちたドラゴンと忌み子に秘められた力〟」

 全員がこちらに注目していることを確認した私は、勝手に命名した題名を書いた紙をペロリと捲る。
 最初は〝秘められた秘密〟にしようかと思ったんだけど、細かいことにツッコんできそうな宰相さんがいるから辞めた。重複表現が通じなくて、誤用だとか学がないとかなんか言って、バカにされそうじゃない?

「むか~し、昔。かなり大昔、ヴィルシル国の火山に降り立った一頭の古代龍エンシェントドラゴンがおりました……」

 一ページ目には火山の上を飛ぶドラゴンが、二ページ目はコーラとメロンソーダのつるが描いてある。

「火山にはマグマの熱にも負けない植物が自生していました。古代龍エンシェントドラゴンはその植物の実を気に入り、火山に長居します。どれくらいの月日が経ったでしょう? ある日、留まり続けていた古代龍エンシェントドラゴンを訪ねてきた者がおりました……」

 紙を捲っている最中、横に座ったままのジルが私が話している内容をメモしていることに気が付いた。
 え、ウソでしょ? やめて、やめて。ぶっつけ本番なの。台本なんてないの。恥ずかしいからやめてくれ!
 話の腰を折ることになるため、視線で訴えたのに、返ってきたのはニッコリとした笑みだった。
 うん、いい笑顔。基本は能面なのに私には微笑んでくれるんだよね……でもね……
(違う、そうじゃない。そうじゃないんだよ。ジルさんや、微笑んで欲しかったわけじゃないんですよ……)
 ナレーションを続けながら、後で処分してもらうことを心に決めた。

 紙芝居は事実を時系列に沿ったストーリー仕立てにしているだけ。なのに、王様から「ほうほう」やら「おぉ」なんて感嘆詞が聞こえてくるのはなんでだろうね?

「――国を民を……ヴィルシル国で暮らす全ての者を守っていたのです。知らず知らずのうちに。その身に宿した力を正しく扱えるようになれば、それは糧となったことでしょう。しかし、詳細を調べられることもなく、呪いだと邪険にされ、冷遇され、突き放され、さらには忌み子と呼ばれるようになってしまいます。その境遇から、忌み子は身に宿った力に勝てず、短命の一途を辿ることを余儀なくされました。魔に堕ちしドラゴンをなんとかしなければ、何も変わりません。いえ、年月が経つほど魔の力は強くなり、王族への影響も色濃くなります。このままでは王族の血が途絶えるどころか、ヴィルシル国の土地も人も何もかもがことになるでしょう」

 昔の出来事を語り終えたら、私達が見てきたこと。
 妖精シノノラーに導かれたこと、魔力制御を教えることを条件に忌み子であるアデトア君が同伴者となったこと、調査のこと、魔導具のこと、道中の出来事、火山周辺を含めた火山でのこと……と紙芝居を進めていく。

「――魔に堕ちたドラゴンを浄化し、アデトア王子は宿らされた力に打ち勝ちました。もう忌み子は生まれず、王族の血が途絶えることはないでしょう。もちろん、土地や民に影響が出ることもなくなりました。めでたし、めでたし」

 話し終えた私がふぅっと顔を上げると、目の前には驚愕の光景が広がっていた。


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