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15章
宿泊者達と条件【2】
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少しゆっくりと休憩し、午後はブラン団長達とレスリーさん。
私達プラスしてジィジで、こちらも一通り案内と注意事項を解説した。その後、先触れを出してさえくれれば私達がいなくても泊まりに来てもOKだと話すと驚かれた。
ジィジの許可も下りていることがわかったからか、全員にお礼と感謝を伝えられた。
レスリーさん以外の三人にはまだ話したいことがある。
そのため、一度全員に部屋の鍵を渡して解散した後、少し時間を置いてから伝言板魔導具を使って再集合してもらった。
今度はジィジの他にスタルティ達やガルドさん達も全員一緒。
松本城のエントランスに集まった三人をそのまま首里城の建物に案内する。
ここは神社風の部屋。和を基調としているものの、祀られているのはおばあちゃんとパパ達……この世界の神様だ。
通称〝神の間〟。そのままだよね。
「……セナ、大事な話とは?」
「うん。ここから先の話は三人だけの内緒にして欲しいんだよね」
「……わかった」
「本当に極秘事項となります。ここで神に誓っていただきたいです」
ジルの様子に少々顔を見合せた三人は、パパ達の像に向かって「神に誓って秘密は守る」と宣誓してくれた。
三人を転移門の部屋に連れていく。
ドアを開いた瞬間、ブラン団長達は息を呑んだ。
「……これは……まさか転移門、か?」
「うん。インプが移動が大変だからって設置してくれたの。で、ブラン団長達が建ててくれたカリダの街の家と通じてるから、ブラン団長達も使うかなって思って。御者さんを雇って馬車連れて出発することが多いと思うけど、緊急時にはこれが使えるってことを覚えてて欲しくて」
「……ありがたいが……いいのか?」
「うん。ただ頻繁に使ってお城に顔出すとドヴァレーさんに怪しまれそうだから、そこだけは気を付けて欲しいかな」
「……それはもちろん」
「僕達もいいの!?」
勢いよく聞いてきたパブロさんに笑ってしまう。
私がいるときだけって思ってたんだけど、本当に緊急の際、王都にいるメンバーにすぐに伝えられるように……ってことでブラン団長達だけでも通れるようにしたんだって。
「ふふっ。ダメだったらここまで案内してないから安心して。私達がいなくても三人は使えるようになってて、このプレートに手のひらを押し当てるの。そうするとプレートがオレンジ色になるから、色が変わったのを確認したら扉を開いて」
お試しだとブラン団長に転移門を開けてもらう。
私達だとパネルに目的地の選択肢が出るけど、彼らの場合はカリダの街しか行けないからね。
本人であると魔力で確認するために、プレートには触らなきゃいけない。カリダの街の家に設置されている転移門も同様だ。
もし、数多ある防犯システムをかいくぐって転移門までたどり着けたとしても、本人じゃなければ反応しないんだって。
ブラン団長に続いて私達もゾロゾロと門をくぐる。
着いた先は家の中の一室。門は部屋の広さに合わせ、入ってきた王都の門より一回りほど小さいサイズ。
どうなってるのか謎だよね。
この部屋の門の両サイドには可愛らしくデフォルメされたシーサーが置いてある。以前、精霊の子が作ってくれたやつに瓜二つで私のお気に入りだ。あ、本物はコテージの玄関に飾ってあるよ。
「ブラン達には言っておく。この魔導具は敵を排除するようになっている。家への侵入者同様、あの牢だ」
「……了解した」
ジィジが指差していたのはまさかのシーサー。
え、ちょっと待って。私そんな話聞いてないんだけど……魔導具って何? あの牢って何⁉
「こ、このシーサーって魔導具なの……?」
「うむ。これはシーサーというのか。セナが気に入っていた置物なんだろう? インプが似た造形で作ったらしい」
「そうなんだ……じゃなくて! ブラン団長もすんなり納得しないでよ……」
「ん? 一度来たときにインプから聞いてないのか?」
「転移門を設置したとしか聞いてないよ。その後すぐに戻ったし……」
「そうか。ならセナ達にも説明しておこう」
ジィジが教えてくれたのは、カリダの街の第二騎士団のところに新しく造られた牢屋の話。
私の家への侵入者はシステムに反応され次第、全てその牢屋に飛ばされる。
それとは別に、実はあの王都の敷地内にも牢屋が作られているらしい。王都の場合は尋問後になるそうで、もろもろ終わった後に犯人を魔法陣が設置されている牢に入れれば、騎士団のその牢に転送される仕組みなんだって。
ヤバいじゃん。めちゃくちゃチートっていうか怖い家じゃん。魔王城へ到るラストステージみたいじゃん。ゴーレムが警備するんじゃないの⁉ 松本城以外にもいろいろと防犯システムがあるとは聞いていたけど、そんなに大がかりだなんて……
極めつけはブラン団長にもたらされた情報。ジィジと牢について連絡を取ってたら、インプが現れて図面を渡されたらしい。建設後に再び現れたインプが高笑いしながら何かをやっていたと。で、念のため余計な詮索をされないように第一~第四の全団員に〝特殊牢〟だと報告。ここまではまだマシ。
なんとなんと〝この牢屋に送られてくるのはセナの敵であり、慈悲は無用〟って第二騎士団には極秘ながらも周知されてるとのこと。
パブロさんに「みんな殺る気満々だから安心してね」って言われたけど、全然安心できないのは気のせいかな?
「ハハッ! さすがインプだねー!」
「そうですね。第二騎士団には自分達もお世話になりましたし、セナさんの味方になってもらえるのは心強いですね」
ジュードさんとモルトさんの会話を聞いてコルトさんが頷いている。
ジュードさん……笑いごとじゃないと思うんだけど……
「そう言っていただけると私達も嬉しいです。第二騎士団は皆さんも歓迎しますのでまたぜひ顔を出して下さい。隊員が喜びます」
「うんうん。ニキーダさんが来るときはちゃんとリカルド隊長も隔離するし」
「あら、それはいいわね。第二騎士団は貴族と平民混じってるのよね?」
「……あぁ、そうだ」
「アリシアちゃん、いい男探しに行く?」
「わ、わたしですか⁉」
「おい、天狐。アリシアを巻き込むな」
「あら、いいじゃない。流血王の近くにいたら出会いなんてあってないようなもんだわ。ね、スタルティ?」
「え……えっと……」
いきなり話題を振られたスタルティは困惑している。
みんななんであの話を聞いて普通にしてられるの⁉ 私と同じ人はいないの⁉ 防犯システムおかしいでしょ⁉ 過剰すぎて引くレベルだよ⁉ インプもジィジも私の家を魔王城にでもする気なの⁉ 私は平凡がいいのに……
現実逃避しかけたとき、無言で頭を優しくポンポンされた。ガルドさんだ。
見上げたら、諦めろと言わんばかりに首を振られた。
ガルドさん! こういうとき私の気持ちをわかってくれるのはガルドさんだけだよ!
〈ふぁぁ。いつまでここにいるんだ? 他に何もないなら我は帰ってセナのおやつが食べたい〉
「……そうだな。移動しよう」
グレンのアクビ混じりの一言でぞろぞろと部屋を出た。
ここはブラン団長達が主導で造ってくれた家だから、気を取り直して彼らの案内で見て回る。
ちゃんとみんなの部屋もあったし、各部屋にシャワールームとトイレが完備されていた。部屋の間取り的には騎士団の宿舎に近いかもしれない。
思わず笑っちゃったのが、キッチンの充実さ。レストランばりに広くて、コンロの数が十個も。貴族宅にしかない大きな冷蔵庫やジィジの国から送られたと思われる冷凍庫、さらに一際大きな業務用オーブンまであった。
これにはジュードさんが大はしゃぎだった。
内見が終わった後、この家のリビングでみんなでティータイム。
スコーンやパウンドケーキも出して、ワイワイと楽しい時間をすごした。
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