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15章
念願のアレ
しおりを挟むレスリーさんは三日ほど泊まって、仕事があると名残惜しそうに帰っていった。
ブラン団長達も内覧したあのときは別として、一月以上カリダの街から離れているから、レスリーさんと一緒にご帰還。結局、なんやかんやあまり喋れなくてちょっと寂しいから、転移門を使って、夜にちょこちょこ会いに行っている。
問題は最後の一組、アーロンさん達。
アーロンさんは暇を持て余したのか、度々一人で出かけようとしては見つかって怒られていた。部下のハズの二人に。
その度にどちらかと一緒に城下町の散策となり、付き合わされていたアーノルドさんが「お嬢ちゃんの予想通りじゃねぇかよ……」って呆れてた。
何回も仕事は大丈夫なのか聞いたけど、聞く耳持たず……
最終的に、アーロンさんは延泊に延泊を重ね、二十日以上も滞在してようやく国に戻った。予定では一週間のハズだったのに。レナードさんとリシクさんに怒られてしまえ。
その間、グレンはジルを連れて呪淵の森によく狩りに、ジィジ達は自国と行ったり来たり、ニキーダは実験するかアチャと買い物か王妃とお茶を、ガルドさん達はパパ達のお使いにギルドの依頼……と、結構バラバラに行動していた。
私はといえば、ちょいちょいアーロンさんに呼び出されたり、教えていたレシピ関係で厨房に顔を出したり……プラスしてタルゴー商会と手紙のやり取り、サルースさんやデタリョ商会王都支店の支店長とレシピや出店に関するお話し合い……
ネライおばあちゃんに会いに行けたのは一度だけで、ほとんど仕事関係で動き回っていた。
◇
アーロンさんも帰り、やっとこさ仕事も一段落。
ストレスが溜まった私は、ずっとやりたかったアレのために動き出した。
まずは料理の作り置き。フライドポテトにポテチ、パンケーキにイカ焼きにたこ焼き……と、あそこにあったメニューを思い出しながら作りまくる。もちろん、ドリンクもコーラやメロンソーダ、ウォッカを使ったカクテルもレシピアプリを見て大量に。
もろもろを作るのに二日もかけ、準備はバッチリ。
朝ご飯を食べ終わったみんなの前で私は宣言した。
「私はとってもとってもストレスが溜まっているため、今日から数日間カラオケに籠ります! 何か緊急要件があれば連絡してくれて構いませんが、なるべく放っておいてください!」
「「「「……」」」」
呆気に取られているみんなに用意しておいた小袋を渡していく。
これはお小遣い。一人当たり金貨三十枚入っている。
使わないかなと思いつつ、クラオル達、ジィジやスタルティ、ニキーダとアチャの分も準備してある。仲間外れはよくないからね。
エフディアさんやアチャ、ジュードさんもいる。カラオケ中は私をご飯で呼ばないで。足りないなら買ってきてって意味を込めて。
これだけあればグレンが買い食いしたとしても大丈夫でしょう。
「なんだ? ……って、は!? 金!?」
「「「「「は(え)!?」」」」」
「昨日話した通り、クラオルとグレウスもお留守番してくれる? 音がガンガンでうるさいと思うから」
『ちゃんとご飯食べて、寝なきゃダメよ?』
「おい! この金は!?」
「あぁーえっと、うん、気を付ける。じゃ! そういうことで!」
「あっ! おい! セナ!」
後ろからガルドさんが呼ぶ声が聞こえてきたけど……ごめんね、ガルドさん。私は早くカラオケしたいの。
一応フォローとして、全員に渡した理由をガルドさん達には魔通で送っておいた。
スタコラサッサとカラオケ部屋へ。
わりと広い部屋の中にはソファとテーブルとディスプレイ。ピッピと入力する機械ないけど、マイクは三種類。普通に手に持つノーマルタイプ、スタンドマイクタイプ、ヘッドセットマイク。
ライブなんかで観客が振るケミカルライトまであった。
何故これがココにあるのか……
「まぁいいや。歌って歌いまくらねば! ふふふっ。まずはどの曲にしようかな~」
音楽再生アプリを開いたら、〝カラオケ設定〟なるものが増えていた。
マイクの音量にベース音や主音源の音量、テンポまで設定できるらしい。もう日本のカラオケと遜色ないね……
アプリを見ながら選曲開始。
私のスマホにはポップスはもちろん、アニソンから洋楽にクラシック、映画やアニメやドラマのサントラまで……トータルでいえば万超えの曲数が入っていた。それが全てカラオケで流せるなんてワンダフル!
記念すべき一曲目はいつもカラオケに行く度に歌っていた曲にした。
前奏で音量系を一通り調節。気になったら微調整すればいいでしょう。
(おおおお! マジなカラオケだぁぁぁ! この重低音よ! パパ達ありがとう! 大好き!)
間奏中に次曲も選んでおくことも忘れない。
一曲ずつ再生するのかと思ったら、ちゃんと予約ができる仕様だったんだよ。しかも、しかもね、割り込み予約までできちゃうの。
採点する機能はないけど、ガイドメロディーはある。さすがにPVはないものの、本人の歌声を出力することが可能で、大好きなアーティストとデュエットまでできちゃう。
ヤバいっしょ⁉ こんなの……こんなの……夢中にならないワケがないよね‼
「ふぁぁぁぁ! ……最っ高!」
お気に入りだった曲を数曲歌い、私のテンションはブチ上がっていった。
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