転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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15章

城は城でも……

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 私に追い付いたガルドさん達も驚いたらしく、「なんだあの建物は……」と驚いている。
 そりゃそうだ。この世界にあるハズのない日本を代表するお城――カラス城と地元民に呼ばれて親しまれている松本城だもん。
 しかも黒いからめちゃくちゃ目立つし、街の景観から完全に浮いているじゃん。
 何故、数あるお城の中からこのお城をチョイスしたのか……

「天守だけじゃなくて二の丸や石垣まで再現しなくても……」
『主様、あれは家……なの?』
「えっとね……家っていうか……」

 クラオルから投げかけられた質問にどう答えるのが正解なのか悩む。
 城主が住んでたのって天守じゃなくて本丸じゃなかった?? 天守に住んでた人っているの? 私お城詳しくないんだけど……

 必死に記憶を掘り起こしていた私はバーン! と何かが割れる音に驚いて顔を上げた。
 三階ほどの高さの窓から何か黒いものが飛び出してきておったまげる。あれは……

「インプ!?」

 インプは私の声で気が付いたようで、留まっていた空中から私達の方へ舞い降りてきた。

「イッヒッヒ。おかえりなさいませ。お早いお着きでしたねぇ」
「ただい、ま? ……大丈夫なの?」
「ご心配ありがとうございます。あれくらいでケガを負うほど弱くはありませんよ。イーッヒッヒ」
「ならよかった……ってそうじゃなくて! あ、いや、ケガがないのはよかったけど、なんでアレなの!?」
「おや? お気に召しませんでしたか? こちらの城は白っぽいのが多いですからねぇ。黒いのにしたんですよ」

 そんな理由!?
 さも当然そうに告げるインプに気が抜ける。

「なんでお城なのよ……普通の一軒家がよかった……」
「あぁ! なるほど。セナ様の家は別にありますよ。アレは来客用です。インパクトがあるでしょう?」
「インパクト……ありすぎでしょ! 周り見てよ! 目立ってるじゃん! 浮いてるじゃん!」
「……ふむ。では少し移動させましょうかねぇ。正面には違うものを持って来ましょう」

 移動……これを取り壊す気はないのね……来客なんて来ないよ……
 再び肩を落とした私をクラオルとグレウスが慰めてくれた。

「移動はできるのね……」
「イッヒッヒ。可能ですよ。中もまだ途中なので少々お時間をいただきますがねぇ。では、セナ様の家に案内致しましょうか。こちらです」

 門を開けた途端歩き出したインプを慌てて追いかける。
 土が剥き出しだったハズの地面は芝生、木々も植えられていて、さながら森のよう。
 相変わらず滑るように歩くなぁ……
 足元に注目していると、前を歩いていたインプが止まった。

「イッヒッヒ。このつるが巻かれた二本の木が目印です。お先にどうぞ」

 促された私達が先に進むと、途端に開けた。
 そこにはまたも見覚えのある建築物が。
 背の低い石壁に囲まれた赤瓦の趣きある平屋型の家……旅行で訪れた際に見た民家そっくりだった。
 違うところと言えば風避けの壁――ヒンプンがないことと、このを守るように木に囲まれていることくらい。

「沖縄じゃん……」
「イッヒッヒ。セナ様の理想のイメージだとお聞きしましたので。お気に召しましたか?」
「……うん!」
「イーッヒッヒ! それはようございました」

 嬉しそうに笑ったインプによると、私達の家はお城とは違ってインプが造ったそう。
 一番大きい母屋ウフヤが私の家で、ガルドさん達用の家とジィジ達用の家、さらにニキーダ用の家が離れアシャギとして用意されているらしい。
 全てコテージばりの魔道具化された家具家電付き、さらに私が好きだからという理由で露天風呂もあるんだって。

 説明がてら案内してもらったらなんと! 首里城モドキまであったんだよ……見た瞬間、乾いた笑いが漏れちゃった。ここまでくると何も言えなくなっちゃうよね。
 これはパパ達が遊びに来られる用で、神力が漏れない仕様になっているそう。
 しかもね、首里城の一室に転移門ゲートが設置されていて、カリダの街・キヒターの教会・ジィジの国と行き来ができるらしいよ! ヤバいよね!
 これらを全て使えるのは今ここにいるメンバーのみ。私が希望するだろうと、ブラン団長達はカリダの街にだけ行けるようにしてくれたそう。ただ、私がいるときのみだからあまり使われなさそうだ。

「……チートじゃん。ありがたいけど、こんなにしてもらっていいの?」
「イッヒッヒ。もちろんです。からのお詫びも込められてるんですよ」
「お詫び?」
「解決したとはいえグレンさんが火山で想定以上に弱ったことと、里のお詫びです」
「……あぁ、なるほど」

 理由を聞くと少し納得してしまう。それでも融通しすぎな気もするけど、もうできちゃったものを遠慮するのもね……と、いうことでありがたくいただくことにした。
 ジィジとニキーダは移動が楽になるし、毎度宿を取らなくて済むしね。

「これから先ほどのマツモトジョーを移動させますので、今日はごゆるりとお休みください」
「はーい! ありがとう!」

 インプが去り、私達は中に入った。
 私以外のメンバーは戸惑いつつも見慣れない家屋に興奮が隠せないようで、探検してくると好きに動いている。

「はぁぁ……なんかドッと疲れた……」

 畳にゴロンと横になり、クラオルとグレウスをモフモフさせてもらう。
 まさか畳まで造ってもらえるとは思っていなかった。気持ちいい……
 松本城のインパクトが強すぎて今なら何されても驚かないよ。

『主様、ギルドはいいの?』
「あぁ……忘れてた。明日にしてもらおうかな……今日はもうやる気出ない」

 レシピの件もあるから時間かかるんだよね。きっとサルースさんなら実演すれば許してくれるハズ。
 なんてゴロゴロできたのはつかの間……戻ってきたみんなはテンション高く、何があったかを報告してくれた。
 それは夕食時まで続き、みんなが気に入ったことが否が応でも理解した。

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