転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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14章

頭の中まで筋肉

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 ガルドさん達は他の冒険者がいる手前、ガッツリと収集できていない。そのため、連続で入ることにしたらしい。ダンジョン自体は中級ダンジョンの中でも楽な部類だそうで、三日もあればクリアできるくらいの難易度なんだって。

 キヒター達のおかげで私は存分に癒されたし、キノコやハーブの在庫も増えた。てっきりグレンは狩りに行くと思ってたのに、ずっとジルとウェヌス達と何か話し合っていたんだよね。
 内容は教えてもらえなかった。グレンいわく、男同士の秘密らしい。



 一昨日掲示板前が争奪戦でゴチャゴチャしてたから、混む前にって早く来たんだけど……ギルドに入った瞬間にギルマスに呼び留められた。
 執務室のソファに座るなり、ギルマスは咎めるような低い声で問いかけてきた。

「昨日どこ行ってた?」
「え? なんで? 何かあったの?」
「お前がウンザを助けたんだろうが……!」
「うんざ?」
「昨日ギルドの酒場でぶっ倒れたやつだ」
「……あぁ! あの超くさい人か。あの人ウンザって名前なんだね。助けたっていうか詰まらせてたの吐き出させただけだよ」
「全く……(会わせねぇようにしてたのが意味ねぇじゃねぇか……)」
「なーに?」

 よく聞き取れなくて首を傾げた私をしばし見つめ、ギルマスは盛大にため息を吐きながら首を振った。

「アイツを助けたことには感謝するが、目立つようなことはするんじゃねぇ」
「見殺しにしろと?」
「違う。そうじゃない。『いきなり現れた天使がアニキを助けてくれた』ってウンザの舎弟が言いふらしてんだよ」
「は? 何それ……私達普通に掲示板見てたからギルドにいたんだけど……」
「…………とにかく! 絡まれたくなかったら目立つようなことするんじゃねぇ!」

 フンッと鼻を鳴らして言い切ったギルマスに再び首を傾げる。
 私が吐き出させなかったら、あのくさい坊主死んでたと思うんだけど……どうすればよかったわけ?

「話ってそれだけ?」
「いや、まだある。お前が渡したポーションはどこのやつだ?」
「なんで?」
「確認したときに古傷まで薄くなっていやがった。相当等級が高くなきゃそんなことは起きん」
「え? あれ初級ポーションだよ。そりゃちょっとは普通のより効能はいいけど」
「……は?」

 理解できないと言わんばかりにポカンと口を開けたギルマスは、モゴモゴとしてから「は?」と同じことを言った。

「っていうか、私的には街で売ってるポーションの質が低いだけだと思うよ。で、それがどうしたの?」
「あ、ああ。この街はダンジョンの街だからケガを負うやつが多い。ギルドとしては買い取りたい。なんならその製作者を雇いたい」
〈ならん〉

 キッパリと即答したグレンは〈貴様らが黙っていたせいで面倒なことになった〉と続けた。
 根に持っていらっしゃる……まぁ、私も人のこと言えないけどさ。文字教えるの大変だったんだからね!

「そうだよ。私も言いたいことがあったんだった」
「なんだ?」
「冒険者に試験を課すって言うなら、サポートしてあげるべきじゃない? 計算どころか文字を読むことすら危うい人に教えろって無理があるよ?」
「そんなもんそのうち覚えていくだろ」
「あのさぁ……だからあなたも書類できないんだよ」
「なんだと……」

 呆れたように呟いた私をピクリと眉を動かしたギルマスが睨みつける。

「適材適所は重要だと思うよ。でもさ、掲示板に貼る依頼書の文字を職員が間違えるってアウトでしょ。冒険者にそういうのを求めるなら、ギルド職員の識字率も上げなきゃダメじゃない? それに元々冒険者の人達を雇ってるみたいだけど、恩あるギルドなら働きたいって人も出てくるだろうし、雇うときも一定水準見込めるじゃん」
「は? なんでそんな面倒なことをギルドがしなきゃならん。冒険者なんぞ力が一番重要だ。書類なんて得意なやつだけやればいい」

 苦々しい顔をして言うギルマスにピンときた。
 ――この人予想に違わず脳筋だ。

「あぁ……うん。わかった。サブマスとおばさんに言おう」

 私の勘が正しければ、このギルドの書類担当の二人のハズ。
 ジルに頼んで呼んできてもらって説明すると、二人共に大賛成だった。

「セナ様、そろそろ時間ですので僕は一足先に向かいたいと思います」
「あ、ホントだ。ごめんね。話がまとまり次第行くから、ちゃんと覚えてるか確認してもらってもいい?」
「かしこまりました」

 了承してくれたジルの瞳が一瞬怪しく光った気がしたんだけど……気のせいだよね?
 ジルが退出したところで、本格的に話を詰めていく。

「冒険者は強くてなんぼだろうが。書類なんてなくなっちま――グホッ!」
「!」

 話しているギルマスの顔面を真横にいたおばさんが裏拳で殴った。
 ギルマスは一瞬にしてソファに仰け反り、おばさんの拳に付いた血が威力を物語っている。
 わお……デンジャラス……
 おばさんは般若のような顔をしてワナワナと震えながら、「あんたが……あんたがそうだから私達が大変なんでしょうが! この……頭ん中まで筋肉ジジイが!!」と叫んだ。
 すごいパワーワードだ。

 初対面時の張り付けた笑顔はどこへやら、おばさんは今までの鬱憤を晴らすかのように声を荒らげている。
 「ちゃんと聞いてんの!?」と、ときどき炸裂されるボディーブローが痛そうだ。
(見た目は〝ザ・おばさん〟なのに、おばさんも充分アグレッシブじゃんか……)
 私はウェヌスが張った結界のおかげで遮音されてるけど、逆サイドに座るサブマスは助けるでもなくうんうんと頷いている。
 二人共かなりストレスが溜まっていたらしい。
 ヤバくなったら回復してあげようと、様子を見ながらグレン達とおやつタイム。

 一時間以上経ってから、おばさんは幾分スッキリした顔で私に笑顔を向けてきた。

「お見苦しいところをお見せしてすみません。今日からギルド職員を一人追加してもよろしいでしょうか? もちろん費用はお支払いします」
「う、うん。その人は文字読める?」
「はい。職員としての最低限の知識は持っています」
「なら大丈夫」
「助かります」

 ギルマスは唸っているけど、鼻血を出しておなかを摩っている程度だ。脳筋だけあって打たれ強いみたい。
 言われていたポーションを五本ほど卸した後、サブマスからギルド職員の猿族の三十代女性を紹介された。
 女性は私が子供だからかやる気はなさそうで、私を見る目が冷たい。
 一抹の不安を覚えながら、一緒に教室へ向かった。

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