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14章
閑話:仲間side
しおりを挟むセナが眠りにつくのを見守っていたジルベルトは、プルトンと目を合わせて頷きあった。
「少々お話をよろしいでしょうか?」
「ん? どうした?」
「今回のことでお耳に入れておきたいことがあります」
「そりゃ構わねぇが、ちゃんと寝かせてやった方がいいんじゃないか?」
〈ダメだ。セナが昔を思い出して寂しがるだろう〉
「……あぁ、なるほど。だが聞かれてもいいのか? 眠るまで待ったってことは聞かせたくねぇんだろ?」
《それはお任せを》
ウェヌスがセナに魔力を纏わせたのを見たガルド達は納得した様子で揃ってジルベルトに向き直った。
そこでジルベルトはここまでの経緯を順序だてて説明していく。
「サブマスの様子が気になったのでプルトン様に協力していただきました」
《ジルベルトったら自分で調べようとしてたのよー》
《プルトン、報告を》
話が脱線しそうだと踏んだウェヌスに注意されたプルトンは《あ、そうね》と話を戻した。
《なんかね、折り合いの悪い冒険者達がいるらしいのよ。で、その人達がちょうどダンジョンに入ってて、ギルドとしてはどうしてもダンジョンに入って欲しくなかったみたいなの》
「ケンカに巻き込まれると思われたってことか?」
《それもあるんだけど、〝可愛い子〟が好きな人がいるらしいの。前にギルド職員で可愛い子がいたらしいんだけど、猛アピールがすごかったみたい。セナちゃん可愛いでしょ? だからギルドが他の冒険者に絡まれないようにって、Sランク冒険者を付けたのよ》
「ですが、ダンジョンに入っている冒険者達はクラオル様がガイア様に確認したところ大丈夫だそうです。それよりも酒場で冒険者達が話していた方が問題なのです」
「は?」
話が見えないガルドが思わず声を上げる。
「えーっとですね、ギルド側がセナ様を心配してダンジョンに入れさせないようにセナ様にも試験を受けさせました。あの応接室でドアを守っていた冒険者はセナ様の試験官を務めましたが、他の冒険者に絡まれないようにと護衛も兼ねて抜擢されたようです。ここまでは大丈夫でしょうか?」
「あぁ」
「プルトン様が小耳に挟んだ情報によりますと、とある貴族がセナ様に興味を持つかもしれないと。その人物は珍しいものを収集しているらしく、セナ様の美しい髪やクラオル様を欲しがりそうだと」
「はぁぁ!? なんだそりゃ! 危ねぇどころじゃねぇだろうが!!」
「はい。なのでどうすべきか悩んでいたのですが、教えるためにギルドに通うことになりましたので……まだ安全かなと」
「……だからあんとき黙ってたのか。その貴族は誰だかわかってるのか?」
《それは今闇の子達が調査中よ!》
「見つけたらどうするんだ? まさか……」
「いえ。まだ狙われていると決まったワケではありません。セナ様のためならばやぶさかではないですが、穢れた手ではセナ様に触れられません。それに犯罪歴が魂に刻まれる可能性もありますし、セナ様が気にするとエルミス様に言われましたので……社会的に死んでもらえれば充分かと思っております」
笑顔でキッパリと言い切るジルベルトにガルドは顔が引き攣った。
《私達もいるから大丈夫よ! 殺したりはしないわ! うふふふ》
怪しい笑みを浮かべるプルトンを見て、益々不安になったガルドはウェヌスに本当に大丈夫なのかと視線を送る。ニッコリと笑顔を返されたガルドは精霊を怒らせてはいけないと再確認した。
「止めても無駄みてぇだな……頼むから勘違いで何かすんのはやめてくれよ?」
《えぇ、その点はご安心ください》
不敵に微笑むウェヌスに対しガルドがため息を吐いた隣りで、ジュードがおずおずと手を上げた。
「んー、ちょっと整理させてー」
「はい」
「まず、ダンジョンに入ってる冒険者が危ないからってギルドがセナっちを入らせないようにしたんだよねー?」
「はい」
「それって本当は年齢制限はないってことー?」
「ダンジョンの許可は素行や依頼の達成状況を考えたギルドの采配によるものらしいです。セナ様がクリアしていないワケがないので、わかりやすく〝年齢制限〟という形をとったのでしょう。受付けをした女性の態度を考えて、暗黙の了解のようなものとして浸透していると思います。実際、僕達がサブマスの話を聞いている間に『あんな子供に許可を出すのか』と一悶着あったようです。公に公表していない情報なので、言うのを躊躇ったと思われます。あわよくば試験の話の段階でダンジョンを諦めて欲しかったのでしょう。含みのある言い方をしておけば、理由など後付けできますし」
「なるほどー。で、貴族に狙われているかもしれないんだよねー? それはギルドは把握してるのー?」
「いえ、ギルドの心配は冒険者達のみですね。指名依頼にすると言ったのは部屋にいれば、例え件の冒険者がギルドに来てもかち合わないで済むからでしょう。ちょうどいいからセナ様を利用しようとの思惑もありそうですが……」
「ふむふむ。じゃあ、オレっち達は普通にダンジョン攻略すればいいのー? もし本当に狙われてたらギルドにいても危なくないー? 街出た方がいいんじゃないー?」
〈我がいる〉
《私とエルミスはガルド達に付いて行くけど、ウェヌス達はセナちゃんと一緒にいるわ。この話をしたのはガルド達も知っておいた方がいいと思ったからなの。まだ確定じゃないし、いつも通りで大丈夫よ》
先ほどまでとは打って変わってあっけらかんと言い放つプルトンにガルド達は顔を見合わせる。
「いつも通りってなぁ……んなこと聞いて『はい、そうですか』なんて言えるかよ……俺達だって心配に決まってんだろ。とりあえず、詳細がわかったら教えてくれ」
《わかったわ。ダンジョンに入ったら、セナちゃんが望む食材いっぱい確保しなくちゃよ? 今のうちにちゃんと体休めなさい。結構大変なことさせられてるんでしょ?》
お見通しだと言わんばかりのプルトンの発言にガルド達は曖昧に笑って返す。
鑑定をかけたグレンは納得したように一つ頷いた。
〈ほう。なるほどな。仕方ない。セナと寝るのを許可してやる〉
「どういう風の吹き回し……っておい!」
「……ん、可愛い」
ガルドが疑問を呈している間にコルトが手を伸ばしてセナを受け取っていた。
普段は決して見せない柔らかな顔でコルトはセナの頭を撫でている。
「はぁ……まぁ、いいか。俺達の気も知らずに幸せそうな顔して寝やがって」
そう言うガルドもセナを撫でる手つきは優しく、起こさないように配慮していることが一目瞭然だった。
「ひとまず、その精霊の子とやらの情報待ちですね。セナさんに悟られないように気を付けなければ。もういい時間ですし、自分達もそろそろ眠らないと明日に響きそうです」
モルトの言葉に頷きあった面々はそれぞれのベッドに入った。
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