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14章

ランクアップ試験【1】

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 準備は万端、気合いも充分にギルドへ向かう。
 指定された時間が朝早かったため、それを理由に宿の朝ご飯を断って私が作った和朝食を食べた。これでトイレ対策もバッチリよ!

 日が昇り始めた時間のせいか、通りを歩いている人は少ない。
 集合場所であるギルド横の広場には昨日声をかけてきたマッチョがいた。
 声をかけようかと思ったけど、他の人と喋っているから後の方がよさそう。
 クラオルとグレウスをモフモフしながらみんなと話していると、咳払いが聞こえた。

「これより、昇級試験を行う! 本日はBランクへの試験だ! 間違えている者は帰れ。無駄話はするな。自分の名前が呼ばれたら返事をしろ」

 宣言したギルド職員が点呼を取り始めた。今回の受験者は私達の他に五人。
 最後に呼ばれた私とジルが返事をすると、他の受験者達の視線は忙しなくギルド職員と私達を行ったり来たり。
 そのうちの一人が耐えられなかったのか、疑問を呈した。

「子供も受けるのか!?」
「信じられずともその子供もお前達と同じCランクだ。試験は平等に評価する。気を取られていると落ちるぞ。まずは自分のことを考えろ」

 すぐに試験が始まるとのことで、ここでクラオルやグレン達とはしばしのお別れだ。

〈何かあったらちゃんと呼べ〉
「うん! 寂しいけど頑張ってくるね! グレンはケンカしちゃダメだよ?」
〈……気を付ける〉

 いつも私にくっ付いている三人の鼻先にチュッとキスをして、グレンの方へ移ってもらう。
 クラオル達とは離れるけど心配性を発揮され、精霊の国から全員集合した。ジルにはアルヴィンがいるものの、念の為に万能なウェヌスにお願い。他の精霊達は私と行動を共にしてくれる。

 まず案内されたのはギルド内の一室。
 机が等間隔で並べられている様子は日本の学校を彷彿とさせた。
 着席した私達に配られたのは筆記試験の紙。
(マジもんのテストじゃんか……文字書けない人もいるんじゃないの?)
 パパッと流し見して、簡単な計算問題から解いていく。

 問11:【ホーンラビは何ランクの魔物でしょう?】
(やべぇ……魔物のランクとか特に気にしたことなかった……)
 問12:【バガンタールの素材として扱われる部分はどこでしょう?】
(これ、前にジルが説明してくれたよね……どこだっけ?)

 余裕をぶっこいていたハズなのに、想像していた以上に難しい。
 図鑑を見てから月日が経っているせいもあり、思い出すのに時間がかかってしまった。
 マジでわからないのもあったけど、それは選択問題だったから勘で丸を付けておいた。

 最後の問は【自分が倒した魔物の中で一番強いと思うものを書け】というもの。
(一番強いのか……お猿さん……カイザーコングは倒したわけじゃないから、ウツボかな? ウツボって正式名称なんだっけ? あ、ヤバい。マジでド忘れしたっぽい……)
 思い出せなくて内心焦っていたら、問題を見たプルトン達が何が一番強かったかを話し始めて判明した。
(カンニングみたいになっちゃった……ま、いいか。精霊の声が聴こえるのも実力ってことで!)

 全て書き終わって顔を上げると、他の冒険者達はまだ終わっていなかった。
 一番驚いたのが、斜め前に座っているビキニアーマーのお姉さん。どうやら、ブーツを脱いで足の指まで使って計算問題と戦っているっぽい。
 制限時間の声がかかるとガックリと肩を落としていたから、解き終わらなかったのかもしれない。

「十分後に馬車で移動する。先ほどの広場に集合しろ」

 トイレを済ませて広場に行くと、乗る馬車は決められていて、私とジルは違う馬車だった。
 私が乗った馬車は私の他に受験者が三人とギルド職員が二人。あのビキニアーマーのお姉さんも一緒だ。
 「よろしくね」と挨拶したら、目を丸くしながらそれぞれ返してくれた。

「ねぇ、ちょっといい? このままじゃ集中できないから確認させてよ。お嬢ちゃん本当にCランク?」
「うん。はい!」
「ほ、本当だ……」

 話し掛けてきたビキニアーマーのお姉さんはギルドカードを見て、一応は納得したらしく「人は見かけによらないもんだね……」なんて言われてしまった。

 年季の入った馬車は振動が軽減されなくて、ポンポンと跳ねる跳ねる。
 馬車の端を掴んで耐えること二時間、着いた先は岩山に隣接している森だった。

 職員の説明によると、これから行われるのは実地試験。一人でDランク以上の魔物を倒すか、Eランクの魔物を二匹以上狩る。期限は三日。どんなに早く倒せても最低でも一泊はしなきゃいけないんだって。
(そこはCランクじゃないのか。楽な方がいいから言わんどこ)
 森の中ではバラバラになるため、一人一人に試験官が付いて採点されるそう。手助けはしてくれず、全て自分でやらなければいけない。注意事項は各受験者毎に違うらしく、担当官から聞けとのことだった。
 私の担当は……昨日のマッチョ。今日も眉間のシワが深く刻まれている。

「昨日はごめんね」
「いや……本当に来たんだな。昨日で懲りたと思ったが……忠告したはずだ。年端もいかない子供でも甘くはしない」
「うん。他の人と同じで大丈夫だよ。お兄さん試験官だったんだね。冒険者だと思ってた」
「オレはSランクだ。ギルドから依頼されている」
「なるほど」

 聞けば、Cランク以上の試験は対応できる職員が少ないらしく、高ランク冒険者に声がかけられるそう。マッチョは週三で手伝っているベテランさんだった。
 注意事項はテント禁止。念話で確認したら、ジルも同じ。買った道具類は意味なかった。
 
 他の人と時間差で森へ入り、適当に歩みを進める。マッチョは付かず離れずの一定距離を保ったまま後ろを付いてきている。
 魔物はいるにはいるけど、少し距離がある。先に入った受験者とかち合わないようにしなきゃだよね……

 アレスやクロノスがテンション高くはしゃいでいて、エルミスとプルトンが注意。それを気にせずコメータとユピテルが私の頭の上でさっきのテストについて話している。
 いつになく賑やかだけど、やっぱりクラオル達がいないのは寂しいね。
 ひとまず目に入った薬草やハーブを採取していると、あっという間にお昼になってしまった。

「お兄さーん! ご飯食べるけど一緒に食べるー?」
「あのなぁ……オレは試験官だぞ? さっきから見てればお前は採取しかしていない。これは試験だ。危機感が足りないんじゃないのか?」
「私達に一番近い魔物であっちに二キロちょいだから大丈夫だよ。それより食べる?」
「なっ……!? いらん。オレはいないものと思え」
「そうなの? わかった。食べるからちょっと待っててね」

 マッチョは私の発言がお気に召さなかったのか、ため息をついて少し離れた木に寄りかかった。
 私はオニギリとお味噌汁でお昼ご飯。精霊達はバレたら大変だと遠慮してくれた。その代わり、試験が終わったらパンケーキが食べたいとリクエストがきた。
 念話でグレン達はどうしてるか聞くと、私と離れていることを証明するためにギルドの酒場で時間を潰しているらしい。クラオルいわく、今のところ問題はないそう。

 お昼ご飯を食べ終わった私はマッチョに声をかけてから出発。
 なるべく早く帰りたいし、そろそろちゃんと魔物を狩らなくちゃね。

「お兄さーん! 身体強化使ってちょっと走るよー!」
「いちいち言わんでいい!」

 せっかくお知らせしたのに怒られた。

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