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13章
改めてご紹介
しおりを挟む『女神様、今日は泊まられますか?』
「そうだね。もうそろそろ日も陰ってくるし……外でみんなで野宿しよっか?」
『わー! 野宿! 初めてです!』
喜ぶキヒターにガルドさん達も笑顔を零す。
イグアナドンを食べたときはちゃんと紹介してなかったから、シュティーとカプリコもガルドさん達に紹介しないとね。
夜ご飯のロコモコ丼を作り、後は串焼きのお肉が焼けるのとスープを煮込むだけ。
待っている間にパトロールから帰ってきたシュティーとカプリコ、普段は精霊の国にいるアレス達を呼んでガルドさん達に紹介する。
「順番にキヒター、シュティー、カプリコ、アレス、クロノス、ユピテル、コメータだよ」
私が名前を教えると、みんなそれぞれ挨拶してくれた。
シュティーとカプリコは一回会ってるけど、やっぱり人間は怖いみたいで縮こまってしまった。
「優しいから大丈夫だよ」
『……そ、そうよね……お嬢様の仲間だものね……』
「オレっちはジュードだよー。こっちの怖い顔がガルドさんで、モルトとコルトねー。よろしくー」
ニコニコと話しかけられ、シュティーとカプリコは肩の力が抜けたみたい。ちょっとぎこちないけど『よろしくね』と微笑んだ。
「前も思ったけど喋れるんだねー。オレっち話せる魔物初めてだよー。セナっちに聞いたけど大変だったんでしょー?」
『お、お嬢様! 普通よ、普通に話してくれたわ!』
「ふふふ。だから言ったでしょ?」
『お嬢様とあの商会以外にもいい人間はいるのね!』
シュティーとカプリコはジュードさんをお気に入り認定したらしく、嬉しそうに話し始めた。
ガルドさんは驚きが隠せていないけど、前もって説明しておいたから、モルトさんもコルトさんも表情に出さないでくれている。
ガルドさん以外はイグアナドンフェアで耐性が付いてたのかもしれない。
「っつーか、他にも精霊がいたのかよ……俺はそっちのが驚いたぞ」
「うん。成り行きでね。アレス達は普段精霊の国にいるから一緒に行動してないんだ」
「ったく、お前さんはどこまで規格外なんだよ……」
ガルドさんは呆れたように笑って私の頭を撫でた。
「これで全部か?」
「うん。契約してるのはこれで全員だよ。ガルドさん達に紹介できてよかった! ずっと内緒にしてる感じだったから」
「まぁ、再会したときじゃ驚いたなんてもんじゃなかっただろうが……お前さんの規格外を知った後だからな。驚きはするが、それだけだ。あいつらはここに住んでるのか?」
「うん。あ……この教会ね、ガルドさん達と森で別れて私が辿り着いた教会なんだ」
「そうか…………ん? ここキアーロ国だよな?」
「うん。そうだよ?」
「神にカリダの街へ飛ばされたんじゃないのか? ちゃんと説明してくれるんだろうな?」
大ざっぱに保護してもらったとしか言ってなかったのがアダになった!
私の頭を撫でていた手はいつの間にかガッシリと私の頭を握り、徐々に力が込められる。
それ危険! ズレたらアイアンクローになっちゃうから!
急いであのときは夢中で走っていたことを説明すると、ガルドさんは痛みを堪えるような表情になってしまった。
「ガルドさんが気にすると思って言わなかったんだよ……今言っちゃったけど……ごめんね」
「謝るのは俺達だろ……」
「ううん。また会えたからいいの! 会えなかった期間はスパイスだよ!」
余計なことを言っちゃった私は、ガルドさんが気に病まないように足に抱きついてニカッと笑って見せる。
ガルドさんは「なんだそれは」と笑ってくれた。
私のせいで大変な目に遭ってるのに、ガルドさん達は私を責めない。だから私は甘えてしまう。
話す私達にしびれを切らしたグレンからご飯の催促がきた。
〈セナ! 肉が焼けたぞ!〉
「はーい! ご飯食べよ?」
「そうだな」
今日はテーブルだとアレス達の場所がないので、地面にラグを敷いてみんなで座って食べる。
アレス達は初めて外で食べる料理に大興奮、シュティー達は大絶賛と大盛り上がりとなった。
そんな中でもブレないキヒターは一人だけ魔力水をニコニコと飲んでいた。
教会前の広場でみんなで毛布にくるまり、夜空に瞬く星空を見上げる。
隣りで横になっているガルドさんは何も言わずに頭を撫で続けてくれていた。
◇ ◆ ◇
見事に寝落ちした私はガルドさんに引っ付いて眠っていたらしく、起きた瞬間叫びそうになったのを堪えた自分を褒めてあげたい。
私がそろ~っと離れた途端に寝返りをうつガルドさん。
(絶対寝返り打てなかったパターンだ! ごめんね! ゆっくり寝て!)
みんなを起こさないように朝ご飯を作り始める。
ご飯を作り終わったころ、まだ寝ていたガルドさんはジュードさんに文字通り叩き起された。
アレス達は精霊の国に戻り、グリネロはクーヴェ達にアドバイスをもらいながら飛ぶ練習。私達は久しぶり揃って呪淵の森に足を踏み入れた。
呪淵の森の魔物の素材は高く買い取ってもらえるらしく、タルゴー商会でめいっぱい買い物をしたジュードさんはやる気充分だったんだけど……教会近くはシュティー達がパトロールがてら狩っているため魔物がいない。
結局、徘徊しただけで教会に戻ることになった。
夕方、魔物がいなかったと残念そうに話すジュードさんをシュティー達が倉庫に案内。狩っていた魔物の肉や素材を半ば無理矢理ジュードさんに押し付けた。
『遠慮しないで!』
『そうそう! アタイ達が狩った魔物が役に立つのは嬉しいわ!』
「セナっちー!」
「ふふっ。もらってあげて。シュティー達は仲よくなれて嬉しいんだよ」
「ありがとー。でも、こんなのなくても仲よくするよー?」
『『まぁ! 嬉しいわ!』』
ジュードさんの言葉に感動したシュティー達はジュードさんを思いっきり抱きしめた。それはもう……お胸でギュウギュウと。
「ム゛ー! ム゛ー! ……プハッ」
『あら、ごめんなさい。そんなに苦しかったのね』
《お顔が……大丈夫ですか?》
「だ、大丈夫、大丈夫ー! な、な何ともないよー!」
抱擁を解かれたジュードさんは顔が真っ赤。純粋に心配するキヒターにブンブンと手を振っている。
ガルドさん達は……こっちも真っ赤!
しかもこれでもかと顔を背けてる姿に笑いそうになってしまった。
◇ ◆ ◇
魔物がいないことがわかったので、薬草やハーブやキノコを採取したり、ジュードさんに料理を教えたり、稽古をしたり……とまったりした四日間をすごした。
これからガルドさん達はお仕事に向かう。
教会の像の前で最後の挨拶だ。
「気を付けてね?」
「あぁ。お前さんもな。あんま目立つことすんじゃねぇぞ? ったく、そんな顔すんな。終わったら戻ってくる」
「うん……」
最後にしっかりと四人とハグをすると、彼らはパパ達によってどこかに送られていった。
目の前でシュンッて消えるのは何回見ても慣れないね。
『主様大丈夫?』
「うん。大きいのが終わったって言ってたからすぐ会えると思うし」
〈なら我らも出発か?〉
「そうだね。でも精霊の国に行きたいから明後日出発でもいい?」
〈それくらい構わん〉
「よし! じゃあ私はこれからパン作るから、みんなは自由にしてていいよ」
〈ふむ。なら我はグリネロをからかってくる〉
「えっと……ほどほどにね?」
グリネロは頑張っているけど、まだ上手く飛べない。そんなグリネロにグレンがよくチャチャを入れてグリネロを煽っている。そして夜ご飯のときに『今日もダメだった』としょげるグリネロを慰めるのが恒例化してしまったパターンだ。
私は今日もデザートが必要だなと思いながら、ジルと一緒にコテージのキッチンへ向かった。
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