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13章

突撃してきた訪問者

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 極楽のマッサージを受けた次の日から二日間はコテージでゆっくりすごした。
 グレンもジルもマッサージでオフモードになったのか、三人共それぞれ自分の部屋でゴロゴロ。
 その間ネラース達やグリネロ達はコテージの周りで遊んでいた。

◇ ◆ ◇

 朝ご飯を食べ、お出かけしようと宿の一階に降りると、ちょうど口髭を生やした知的なオジサマが宿に入って来た。
 白髪を七三分けにしていて、服はピシッとしたスーツ。小洒落た飾りが胸ポケットのところでキラリと光っている。

「おや、タイミングがよかった。キミがセナ嬢かな?」
〈「!」〉

 そのオジサマに話しかけられ、ジルとグレンは警戒心をあらわにした。
 ジルは私を庇うように前に立ち、私は一瞬にしてグレンの腕の中へ。
 このオジサマは知らないけど、私は違う気配が近付いていることに気が付いた。
 グレンとジルのあからさまな態度を見て、オジサマは目を丸くしたけど、すぐに納得したように頷いた。

「あぁ、すまないね。怪しい者ではないんだ。私は……」
「俺達の連れに何かようか?」

 オジサマの真後ろに立った人物は、目に鋭さを持たせ、低く聞き咎めた。
 その人物は……ガルドさん。
 私がグレンの腕の中からブンブンと手を振ると、目元をちょっとだけ緩ませる。

「で、この子達に何か用なのー?」

 と、ジュードさんがガルドさんの横に並んで問いかける。
 その様子は口元は笑っているのに目が笑っていなくて、すごく圧を感じた。

「あ、あぁ。私の家に招待しようと思ってね」
「お知り合いには見えないのですが」

 答えたオジサマにすかさずモルトさんが疑問を呈した。

「……流石冒険者たる所以か……ふぅ。ちゃんと説明しよう。私はこの街の領主、シパブレ・タルゴー。キミ達に世話になっているタルゴー商会商会長、カルリーノ・タルゴーのいとこにあたる。会う度にキミ達のことは聞かされていたから、ずっと会いたいと思っていたんだ。今回、あの討伐に協力してくれたと報告を受けてね、冒険者ギルドに滞在している宿を聞いたんだよ」
「あぁ……(あのギルマスめ……)」
「ここ二日ほど空振りだったけど、会えてよかった」

 小声でごちる私に領主のオジサマはそう言って笑顔を見せた。
 とりあえず、遭遇しちゃったからには話をするしかないと場所を移動。宿の隣にある喫茶店の個室に入った。

〈……で、セナに何の用だ〉
「ん? それについてはちょっと待ってもらってもいいかい? このメニューのこれとコレは何が違うのかね?」
「ミエールツが入っているかどうかです」

 私達に見えるようにメニューを指さして聞いてきた領主に、ジルが教えてあげると、「それだけの違いで値段が変わるものなのか」と面白そうに呟いた。
 オジサマの飲み物が決まり、注文した物が届いてからようやく、オジサマは語りだした。

 タルゴーさんを助けたと聞いたこと。ゲーノさんの村を助けたくても自分の領地じゃなくて助けられなかったこと。ラップサンド、ダンジョン、ホットプレートによって村が豊かになったこと。タルゴー商会が雇ったため、街の平民だけじゃなく、貧民も飢えることがなくなったこと。タルゴーさんが私自慢をしていたこと……そして、今回の討伐隊の件。

「キミ達のおかげで私の親族、さらには領内の平和が守られた。カルリーノの執事からセナ嬢は貴族が好きじゃないと聞いていたが、流石に今回ばかりはどうしても直接お礼が言いたくてね」
「なるほど」
「本当に感謝している。ありがとう」

 領主は私達に頭を下げた。冒険者だからって態度を変えたり、バカにしたりはしない人らしい。タルゴーさんのいとこだけある。

「それで何かお礼をと思ったのだが、何がいいのかわからなくてね……家の中を探し回ったらコレを見つけたんだ」

 そう言う領主がポケットから取り出したのはハンカチ。彼が結び目を解くと、ハンカチはハラリと広がって、黒い物体が現れた。

〈何だそれは……〉
「これは【プラビナの実】の種。【プラビナの実】は、この大陸のはるか北の国で〝気付けの実〟と呼ばれているものだ。本来はこの種を覆っている部分を食する」
「!」
「あの国は今は内政が荒れているらしく、他国とあまり関わりがない。私の祖父が若いころに旅行に行ったときに買ったものだそうだ。カルリーノからセナ嬢は不思議な物を求めると聞いていたんだが……いくら珍しいからといって、やはりこれでは礼にならんよな……他の物は年月を経ちすぎてわからないものが多かったのだ……」
「いやいやいや! それちょっと見せて!」

 私の勢いに驚きながらも領主は種を一つ渡してくれた。
 種に鑑定をかけてみると、私の予想通りの梅干し! の種。
 以前カリダの王城の書庫で読んだ内容そのままだった。

「わぁ~っ! 最高! 北に行けなかったから諦めてたんだよね! これもらっちゃっていいの!?」
「……ククク。構わない。こちら全てもらってくれ」
「やった~!! ジュードさん! これを育てて収穫したら、新しい料理が作れるようになるよ!」
「えぇー!? ホントに!?」
「うん!」

 私と盛り上がるジュードさんを見た領主の「まさかここまで喜ばれるとはな」なんて呟きは私の耳には届いていなかった。

「ありがとう! 超嬉しい!」
「そんなに喜んでもらえて私も嬉しく思う。本当にカルリーノから聞いていた通りだ。セナ嬢の笑顔は人を幸せにするのだな。どうだね? 私の孫に一度会ってみないか?」
〈貴様……〉
「じょ、冗談だ」

 グレンに睨まれ、領主は苦笑い。
 その後は穏やかな面会となり、お昼ご飯をご馳走になって別れた。
 ガルドさん達と会えた私達は揃って宿に戻る。

「ガルドさん、ジュードさん、モルトさん、コルトさんおかえりー!」

 部屋に案内した私はガルドさん達に順番に抱きついた。

「ただいま」
「ただいまー! 久しぶりだねー」
「お久しぶりです」
「……会えて嬉しい」
「私も嬉しい!」

 抱きつく私の頭を撫でてくれるガルドさん達。この感覚は久しぶりだ。

「ジルベルトは普通に身長伸びたねー」
「セナはあんま変わんねぇな」
「むむ! ちょっと伸びたもん!」
「そんなムクれんな。俺達といないときにあんま成長されると、会ったとき気まずいだろうが」

 フォローになってないフォローをしながら、誤魔化すように私の頭を撫でるガルドさん。
 久しぶりだし、許しちゃうじゃないか!

「ゆっくりできるの??」
「あぁ、少しな。ちょっと休んだらまた出発だ」
「そっかぁ……」
「デカいとこは終わったらしいから、今度はちょこちょこ戻って来られそうだ」
「本当!?」
「あぁ」
「やったー!! ガルドさん達も戻ってきたし、今日のよるはグレンお楽しみのあのお肉にしようか?」
〈おぉ! やっとか! 今日は肉のご馳走だな!〉

 グレンは夜ご飯がイグアナドンだとわかって大喜び。
 ガルドさん達もゆっくり休んで欲しいから、コテージでご飯にしよう!
 そうとなったら準備しないと!


--------キリトリ線--------

 すみません。またご報告がありまして……
 昨日、近況ボードを更新しましたので、チェックしていただけると幸いです。
 あまりの自分の不甲斐なさにショックを受けております。。
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