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第三部 12章
家族との別れ
しおりを挟む近況ボードにお知らせを書きました。
一読いただけると幸いです。
--------キリトリ線--------
ジィジのお仕事も無事に話しがまとまり、今日は久しぶりにジィジも一緒にマッタリ。
アーロンさんはお仕事でいないけど、ブラン団長達やリシータさんも一緒に、リビング化した応接室で寛ぐ。
「ねぇ、ジィジ。国交結ぶのはいいことだと思うんだけど、販路ってどうなってるの? めっちゃ遠いじゃん」
「ん? あぁ、一応陸路と海路も確保したが、主に使うのは転送魔法が組み込まれた魔道具だな」
「え? ギルドにあるのってちっちゃい物しか送れないんじゃないの?」
「あれとは別だ。大昔に己が手に入れた物だが、大きなものも転送できる。対になっているから一ヶ所にしか送れないのと、場所を取るのが難点だが……幸い、ここシュグタイルハン国とキアーロ国を中心とした国交だからな。ちょうどいいだろう」
「そんな便利なものがあったのね……」
「あぁ。だが、生き物は送れないから、生きた魔物はもちろん、人族も獣族も魔族も行き来はできんぞ」
「そうなんだ……」
(じゃあ、ジィジ達とはなかなか会えなくなっちゃうのか……わかっていたけど、寂しいな……)
これは転移魔法の精度を上げて、気軽に行けるようにしなければ!
あ! パパ達に頼んで印付けてもらおうかな? そしたらクラオルファミリーのところみたいに一発で行けるかも?
「荷物ならすぐに送れるから、セナが心配している【ホイップフラワー】は簡単に手に入ると思うぞ?」
「あぁー、うん。とっても助かる」
ジィジに言われ、私は苦笑い。
ジィジ達に会えなくなるのが寂しいのに、食材の心配だと思われていたみたい。
(ジィジは特に寂しいとか思ってないのかな……)
軽くショックを受けていると、ニキーダが思い出したかのようにポンッ! と手を打った。
「そうそう! セナちゃんがあの中敷き作ったのよね?」
「ん? 蒸れない中敷きならそうだよ?」
「あれ、ブーツが濡れても早く乾くから、あっちでも売れるわよ~」
「なるほど……じゃぁ、向こうでも作る? 工房のシステムをリシータさんに教えてもらえたら、そのまま再現できると思うよ?」
「リシータちゃん、いいかしら?」
「は、はい! セナ様に全面的に協力するよう言われております」
「あ! そうだ。中敷きで思い出した! リシータさん、【ショシュ丸】って取り扱ってたりする?」
先日書庫で見た消臭する素材のことを聞いてみる。
リシータさんは「ショシュ丸……ショシュ丸……」と呟いた後、申し訳なさそうに「取り扱っておりません」と肩を落とした。
「そっかぁ……中敷きの臭い消せるかと思ったんだけど、ないならまた今度だね」
「ほ、本当ですか!?」
「う、うん。試してないからわかんないけど、本に臭いのを消すって書いてあったから、できるかなって思ったの」
リシータさんの勢いに驚きながら答えると、「それはどちらの国のものかわかりますか!?」と詰め寄られた。
「え、えっと……どこだっけ?」
「本にはナノスモ国と記載されていました」
「ナノスモ国……」
「ナノスモ国なら今回国交を結んだ国だな」
「そうなの?」
「うむ。国土は小さく、特に特産はないと言っていたが、国王が礼儀正しかった。茶会のときに王女がセナに微笑まれて大喜びしていたと言っていたぞ」
「え?」
私そんなことしたっけ? べギーちゃんとあの王子しか覚えてない……
首を捻る私に、スタルティが「あの子だよ」と、特徴を教えてくれた。
「あぁ! あの、そばかすが可愛くて小柄な子ね! ……笑いかけたら、顔真っ赤にして逃げられたよ?」
「「…………」」
あのときのことを話すと、ジィジとスタルティに不憫な子を見るような目を向けられた。解せぬ。
「セナが欲しいのなら明日にでも伝えておこう」
「ありがとう!」
ジィジの発言を聞いて、リシータさんが「商会長に連絡を!」と、止める間もなく部屋を飛び出して行ってしまった。
まだできるって決まったワケじゃないのに……
「……完成したらカリダの街にも頼む」
「そうですね。団員達が喜びます」
「ブラン団長とフレディ副隊長まで……できないかもしれないのに……」
口を尖らせた私の頭をパブロさんが笑いながら撫でてくれた。
◇ ◆ ◇
ジィジがナノスモ国の国王に伝えてからは早かった。
元々、タルゴー商会では扱っていなかったけど、他の商会では扱っていたそう。
国王が融通を利かせてくれ、その日のうちに大量の【ショシュ丸】が私に届いた。
【ショシュ丸】は透明な直径三センチほどの丸い玉で、プルンプルンのゲル。
中敷きに使っている【スライム砂】に水分を吸収されちゃうかと思ったんだけど、特殊な素材なのか、そんなことはなかった。
試行錯誤を繰り返し、無事消臭機能付きの中敷きが完成!
まさか、玉から形状を変えられるとは思ってなかったし、いい香りは吸収しないなんて素晴らしい性能だとは思ってなかった。
グレンとジルの中敷きも作り直し、ついでにみんなの分も作った。
みんなブーツそのものが軽くなったと、喜んでくれた。
作った中敷きはすぐにレシピ登録され、現在タルゴー商会によって量産中。
ジィジの国交会議も全て終わり、私達は揃って転移門をくぐってキアーロ国へ戻った。
おばあちゃんのお店でジィジ達を見送るとき、寂しさから泣く私をニキーダが「すぐに会いにくるわ」と慰める。
前に「戻ったら忙しくなりそう」なんて言ってたのに……
既に眠らされているスタルティを抱えたジィジに「またな」と頭を撫でられたのを最後に、ジィジ達はニェドーラ国に戻って行った。
それから手紙のやり取りはしているものの、私のテンションは落ちたまま。
考えないように連日コテージに籠って実験に明け暮れている。
そんな日々を過ごすこと一週間、ソイヤ村の村長から手紙が届いた。
内容は――キアーロ国に戻ってきたと聞いたこと、村人が会いたがっているから一度村を訪れて欲しい。ということが書かれていた。
『主様、気分転換にいいんじゃない? ずっと何か作ってばっかりじゃない』
「うん……そうだね」
《精霊の国でもいいぞ》
「ふふっ。わかった。精霊の国も行こう!」
ちょっと今回は引きずりすぎたと自分でも反省。
私だけならいいけど、ジルもグレンもいる。ちゃんとみんなのこと考えないとね。
ソイヤ村もそうだけど、シュグタイルハン国のミカニアの街でお世話になったラゴーネさんや、ベヌグの街のネルピオ爺にも会いたい。
そうとなれば準備しなくちゃ!
「よし! 買い物に行こう!」
〈やっとか!〉
「うん! ごめんね? 準備したら出発だよ!」
グレンとジルに声をかけ、私達は〝渡り鳥〟の宿を後にした。
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