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第三部 12章

ドラゴン襲来

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 翌日から私には大量の手紙が届くようになった。
 個人的なお茶会への招待状だ。
 それは私だけだったり、スタルティと私の二人だったり、スタルティだけだったりとバラバラ。
 私は面倒だから全部断ったけど、スタルティはいくつかに参加していた。
 面白そうだと情報収集に行ったプルトンによると……ほとんどが私のレシピ目当てで親に言われてお茶会を開いた子だった。一人だけクラオルとグレウス狙いの子がいて、その子は私の中でブラックリスト入り。

 お茶会を断ると、今度は面会を求める手紙が届くようになった。
 内容らしい内容はなく、〝ぜひ一度お話を〟なんて書かれていた。
 これももちろん拒否!
 まだ見つけていない食材や素材があるかもしれないけど、それを王様達が把握しているとは思えない。
 冒険者とか商人だったら話したら、何かしら発見がありそうなんだけどね。

 ドナルドさんとアーノルドさんのおかげで、私達がどこに滞在しているのかはバレていない。
 私達を守ってくれている暗部の人達にパンやポーションを差し入れ。アーノルドさんからのリクエストで、一度夜ご飯にも招待した。



 ニキーダとアチャはタルゴー商会のリシータさんと仲よくなっていて、連日商会に通っている。
 ジィジはお仕事。
 念のため、ニキーダ達にはプルトン、ジィジにはエルミスに護衛を頼んだ。
 暇な私はスタルティとジルとグレンと一緒に調べ物をしに書庫へ。
 書庫にはパーティーで見かけた子供が三人ほどいたけど、それぞれがバラバラの席に座って本を読んでいる。

〈何を調べるんだ?〉
「前にリシータさんにダンジョンドロップ品一覧をまとめてもらってたんだけど、名前だけじゃわからなくてさ。ドナルドさんが書庫に本があるって言ってたから。グレンはリバーシやってる? 久しぶりでしょ?」
〈いいのか?〉
「防音の結界張れば大丈夫だと思うよ」

 ここはアーロンさんの国だから、うるさくしなければ許してくれると思うんだよね。
 ガッチリと結界を張り、リバーシをテーブルに広げると、スタルティに「これは?」と聞かれた。

「そっか。スタルティの前でやったことなかったね。あ! それならグレンが教えてあげて?」
われがか?〉
「うん。グレンはルールがわかるからピッタリでしょ? 先生ね」
〈先生……仕方ないな! われが教えてやる!〉

 仕方ないなんて言いながら、グレンは嬉しそう。先生と呼ばれたのが嬉しいらしい。
 得意気なグレンにスタルティを任せ、私とジルはお目当ての本を探す。
 サーチを使っていくつかの本を取り、グレン達の近くに座って読書開始。

 紙にメモしながら読み進めていると、素材は使用用途不明のものが多いことがわかった。
 使用用途不明というより、使い方がわからないの方が正しいのかもしれない。
 例えば……エチルという水風船みたいな魔物と、色違いのアルコルという魔物を一緒に倒すと、エタノル水というスプレー入りのがドロップ品になるらしいんだけど……これ絶対アルコールだよね。消毒用のエタノールとしか思えない。
 これは〝激マズの水〟として冒険者の間ではいらない物。もちろん買い取りもしてもらえないそう。
 エタノール飲んだ人、死んだりしてないよね? ご丁寧にスプレイヤー入りとか……おばあちゃんがわざわざそうしたのかな?

「セナ様。この国ではございませんが、セナ様が求めておられる素材と思わしき記述がありました」
「どこどこ?」
「こちらの一文です」

 ジルが指さした箇所を見てみると、〝これはくさい空気を取ると言われている〟と書かれていた。

「おぉー! 流石ジル! これ、見てみたいね!」
「商会かギルドで問い合わせてみましょう」
「うんうん! そうしよう!」

 もしこれが使えるなら、中敷きに消臭機能が付けられる。リシータさんとの約束が果たせそうだ。
 再びメモを取りつつ本を読んでいると、廊下が何やら騒がしい。

――バターン!!
「お嬢!」

 派手な音を立ててドナルドさんが飛び込んできた。

「どうしたの?」
「お嬢! ドラゴン呼んだのか!?」
「へ? 何それ?」
「!」
「ちょっと待って!」

 踵を返して出て行こうとするドナルドさんの服を掴む。
 どういうことか説明を求めると、大量のドラゴンがここ王都に向かってきているとのことだった。
 気配を探ると、ドラゴンかはわからないけど、強い魔力がこちらへ向かっていることがわかった。ただ、私でもかろうじてわかる程度。かなり離れているから、ここに確実に来るとは言えないと思うんだけど……

「ねぇ、グレン。ドラゴンの仲間呼んだ?」
〈ん? 仲間?〉

 盛り上がっているグレン達の結界を解除して、グレンに聞いてみると首を傾げられた。

「なんかドラゴンが向かって来てるらしいんだけど」
〈んー? ……おぉ! あいつらか! 久しいな!〉
「知り合いか……陛下に伝えてくる」
「何かごめんね?」

 謝る私の頭をひと撫でして、ドナルドさんは報告に向かった。

〈リバーシは中止だ! セナ! 行くぞ!〉

 何故かテンションの上がったグレンに連れられて来たのは、パーティー会場からほど近い、広いテラス。
 そこへ着くと、グレンは〈ん゛! ん゛ー〉と喉を慣らし、空に向かって。人型のままでも、ドラゴンみたいな咆哮はできるらしい……
 しかも、それが合図だったかのようにこちらに向かっている気配はスピードを上げる。
 グレンの声を聞いて、ジィジやアーロンさん、他の王族達までテラス近くに集まってきてしまった。

 目視できるほどまで近付いてきたたと思ったら、あっという間にテラスを囲われる。その数、なんと十匹!

――グルァァァァ!
〈ふむ。久しいな〉
――グルグルギャアァァ!
〈ん? いや、忘れていただけだ〉

 グレンは笑顔で話しているけど、ドラゴンの鳴き声で空気がビリビリと震えている。
 私はグレンのドラゴン姿を見ているから特に怖いとかは思わないけど、兵士さんはガクガク震えながら武器を構えているし、来賓者達は腰を抜かしている。ジィジやアーロンさんまで目を丸くして言葉を失っている。

「ジルとスタルティは大丈夫?」
「はい」
「うん……セナは大丈夫か?」
「グレンの知り合いみたいだし、平気だよ。……これで大丈夫?」
「あぁ……楽になった。ありがとう」
「どういたしまして」

 守るように結界を纏わせてあげると、スタルティはホッとした様子で微笑んだ。

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