上 下
377 / 537
第三部 12章

あるあるパターン

しおりを挟む


 翌日、ニキーダとアチャはタルゴー商会に買い物に行き、ジィジとスタルティは聞いていた通りに会合へ。
 私達は料理人さん達に挨拶しに食堂を訪れた。

「お、先生! 来てくれたのか!」
「昨日約束したからね」
「おれらの出来はどうだった!?」
「美味しかったよ~」
「「「「うぉぉぉぉ!!」」」」

 料理長に感想を伝えると、厨房に歓声が上がった。
 褒められたのがうれしいのか、「食ってってくれ!」と料理長からはまたもカレーを渡された。
 朝ご飯でおなかがいっぱいの私はグレンにお願い。
 料理長からは見習い君が昇格して、ベビーカステラ担当になったと紹介された。
 何でも、アーロンさん達もそうだけど兵士や使用人に大人気で、毎日ベビーカステラを朝から晩まで作り続けているらしい。

「そんなに!? ごめんね?」
「いえ! やりがいもありますし、陛下よりお褒めの言葉をいただきました! 給金も上がっていいこと尽くめです!」
「なら、いいんだけど……無理はしないでね?」
「はい! ありがとうございます!」

 元見習い君はそれはもういい笑顔でベビーカステラ作りに戻って行った。
 そのまま厨房で料理長達と話していると、他国の貴族の話やアーロンさんの甥っ子と姪っ子の話などいろいろ聞けた。

「なるほどねぇ……」
「先生はニェドーラ国と仲がいいんだろ? 知っておいた方がいいと思ってな。みんな食事を運ぶときに聞き耳立ててたんだ」
「すっごく助かる!」
「いいってことよ! また何か聞いたら教えてやる」
「ありがとうー!」

 まさか利用しようと考えている本人に筒抜けだとは思うまい。
 パーティーで特に絡まれたり、変な視線は感じなかったけど、やっぱり気を引き締めておいた方がよさそう。
 ニキーダやアチャ、スタルティにもちゃんと伝えないと!



 一度部屋に戻り、お昼ご飯を食べたらこの後のために着替える。
 気が乗らないけど、お茶会なんだよね……
 昨日戻ってきたジィジに「子供達は子供達で交流させようという話になった」って言われた。

《セナちゃんできたわよ~。今日は花を編み込んでみたわ!》
「プルトンありがとう」
〈こんな髪型にしたら余計な者が寄ってくるではないか! いいか? ジルベルト、セナを守るのだぞ!?〉
「もちろんです。命にかえてもお守りします」
「いやいや、物騒なこと言わないで!」
〈昨日のパーティーではわれが睨みを効かせていたが、われが傍にいれないなど……〉

 グレンはぶつぶつと不穏なことを呟いている。
 グレンさん……そんなことしてたの? もしかして、そのおかげで絡まれなかったのかな?
 私が参加するお茶会にはグレンは大人だからという理由で参加できない。

「大丈夫だよ。パパ達のアクセ着けてるし」
〈セナは甘すぎる! さっきも食堂で言われてただろ。いいか? 何かあればわれを呼ぶのだぞ!?〉
「わかったよ。グレンはジィジと大人のお茶会でしょ? 喧嘩売っちゃダメだよ?? ジィジの取り引きに支障が出るかもしれないからね」

 グレンに注意すると、〈われより自分の心配をしろ!〉と怒られた。
 相手は子供だし、大丈夫だと思うんだけどな……



 会合が終わったスタルティとジルと一緒にお茶会の会場に向かう。
 スタルティは昨日と色違いの王族スタイル、ジルは執事服だ。
 イケメンは眼福だけど、挟まれてるのが私ってところが残念だよね……

 普段ならジルに支えてもらうんだけど、今回はスタルティにエスコートしてもらっている。
 理由は王族だから。王家のメダルを持ってはいるけど、私自身は平民のため、舐められない措置なんだそう。ちなみに、言い出しっぺはジィジ。

 会場へ着くと既に子供達は集まっていて、入った瞬間、注目を浴びた。
 ただ、子供達ゆえか、早々に視線は外され、それぞれグループ毎の話に戻った。

 総勢四十人以上はいそう。
 昨日のパーティーではここまで多いとは思っていなかったし、おそらく昨日のパーティーに参加していない子供もいる。

「セナ様、あちらの食事を食べながらの立食パーティーのようです」
「なるほど……とりあえず取りに行こうか?」

 並べられている料理はベビーカステラ、砂糖コーティングのクッキー、ナッツパン、ドライフルーツパン。
 私は一番小さいベビーカステラをお皿に盛り、私達は壁際へ。

 食べようとすると、早速中学生くらいの女の子が話しかけてきた。

「初めまして。わたくしはヴァリージェ国、第三王女、べギー・ヴァリージェでございます」
「……ニェドーラ国、第一王子、スタルティ・ジュラルだ」
「えっと……セナです」
「まぁ! 平民風情が許可を得ず話し出すなんて! 非常識ですのねぇ!」

 女の子は私を鼻で笑い、扇を口元にあててふんぞり返った。
 あぁ……またこのパターンか……面倒だなぁ……

「((ジル! 武器はダメだよ! しまって!))」
「((セナ様を侮辱するなど……あの無駄な腹肉を削ぎ落としてやりましょう))」
「((ダメだって! 我慢して我慢!))」
「……僕の大切な友人をバカにするのは止めてくれないか? 不愉快だ。それにセナは僕の国の恩人、シュグタイルハン国やキアーロ国にとっても恩人。キミの発言は三ヶ国にケンカを売っているようなものだ。その言葉、そのまま報告させてもらう」

 ジルを念話で止めていると、スタルティが私を庇いながら目に鋭さを持たせる。
 冷たく言い放たれた女はわなわなと震え、私をすごい形相で睨んできた。

「その顔、鏡で見るといい」

 スタルティが尚もあしらうと、「ひどい!」と走っていった。途中、思いっきり転んでたけど。
 ジルはスタルティの言葉に満足そうに武器をしまった。

「全く、ひどいのはどちらだ」
「スタルティ、あんな言い方していいの? 私は大丈夫だよ?」
「お爺様にも言われているし、僕も許せない。嫌な気持ちにさせてごめん」
「ううん。庇ってくれてありがとう」

 元々冷めた考え方だったけど、ここへ来てから一気に大人びた感じ。
 そんなに生き急がなくてもいいのに……と思うけど、そうは言ってられないのかもしれない。王族や貴族のドロドロは料理人さん達にもバレているくらいだもんね……あんまりストレスを抱えないで欲しい。

 その後スタルティや私に挨拶してくる子供達はマウントをとることもなく、無難に話しては去って行く。
 マウントを取ろうとしていた子達は遠巻きに見ている感じ。

 ぶっちゃけ、名前も国も覚えきれない。国毎にまとめて来て欲しい!
 覚えることを諦めた私は、途中から心の中であだ名を付けて遊んでいる。
 カボチャパンツはどっかの国の王子だった。彼のあだ名はもちろんカボチャパンツだ。

 子供達を見ていると、意外にも美男美女ではなく普通の子達が多い。この世界はイケメンと美人がほとんどだと思っていたけど、そうでもなかった。私的には親近感が湧く。
 本来なら私はそっち属性だよな~なんて思いながら、挨拶しにきた女の子に微笑みかけると、顔を赤くされた。

「大丈夫ですか? お顔が赤いですけど……」
「しゅっ、しゅみません! 大丈夫でしゅ!」

 いや、めっちゃ噛みまくりじゃん! 全然大丈夫じゃなくない!?
 女の子はガバッと頭を下げて走っていってしまった。
 ジルはその子のことを「要注意ですね」なんて言っていて、どこを見てそうなったのかさっぱりわからなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

転生幼児は夢いっぱい

meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、 ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい?? らしいというのも……前世を思い出したのは 転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。 これは秘匿された出自を知らないまま、 チートしつつ異世界を楽しむ男の話である! ☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。 誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。 ☆ファンタジーカップありがとうございました!!(*^^*) 今後ともよろしくお願い致します🍀

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

転生幼女の愛され公爵令嬢

meimei
恋愛
地球日本国2005年生まれの女子高生だったはずの咲良(サクラ)は目が覚めたら3歳幼女だった。どうやら昨日転んで頭をぶつけて一気に 前世を思い出したらしい…。 愛されチートと加護、神獣 逆ハーレムと願望をすべて詰め込んだ作品に… (*ノω・*)テヘ なにぶん初めての素人作品なのでゆるーく読んで頂けたらありがたいです! 幼女からスタートなので逆ハーレムは先がながいです… 一応R15指定にしました(;・∀・) 注意: これは作者の妄想により書かれた すべてフィクションのお話です! 物や人、動物、植物、全てが妄想による産物なので宜しくお願いしますm(_ _)m また誤字脱字もゆるく流して頂けるとありがたいですm(_ _)m エール&いいね♡ありがとうございます!! とても嬉しく励みになります!! 投票ありがとうございました!!(*^^*)

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。