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第三部 12章

再会に次ぐ再会

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 アランさんにについてオタクばりに熱く語られたあの日から……数日、レシピの調理法を教えたり、王妃の取り調べに同席したりとバタバタとすごした。

 そこで判明したのは……なんと、アチャの実家が傾いたのはチスタ家が裏で糸を引いていたせいだった!
 いろいろとジィジが取り計らって、原因を取り除いた今は盛り返しつつある。

 民衆に【ホイップフラワー】が認知され始めると、空前のブームに。冒険者を中心に買い取り事業は軌道に乗り、雪族の村では冷凍保存箱も開発された。
 第二段階としてホイップクリームを使ったバニラアイスをレシピ登録。
 それは【ホイップアイス】として毎日長蛇の列を作っている。寒い地域だからあんまり売れないかな? って思ってたのに、こんなにすぐに浸透するとは予想外だった。

 私はグレンが見つけてきた【ホシカッキー】という干し柿と、【シラルゥ】というホワイトシチューのルゥ(板状のアレ)のためにダンジョンに入ったり、ギルドの依頼をこなしたり、天狐に別の雪族の村を紹介してもらったり、実験したり……と充実した月日を過ごしていた。

◇ ◆ ◇

 約束のパーティーが近付き、私達はおばあちゃんのチカラでキヒターの教会に前乗り。
 私の予定が終わったら、ジィジ達も合流して、キアーロ国の王都に向かう。向かうって言っても、王都にある魔女おばあちゃんのお店に飛ばしてもらうんだけどね。
 そこから転移門ゲートを使って、ブラン団長達と一緒に今回の会場であるシュグタイルハン国の王都に移動する予定。


 キヒター達と一日遊んだ翌日、私達は精霊の国へ。
 ジィジのお城の近くには精霊の国へ繋がるがなかったため、かなり久しぶり。そのせいでウェヌスも精霊の国に戻れていなかったんだよね。
 精霊達は大歓待で迎えてくれ、食材の在庫も魔道具の在庫も一気に増えた。
 しかも! 私が行けなかった腐呪ふじゅの森の北にあるという山の湧き水を汲んでくれていたんだよ!
 さらになんと! この湧き水の正体はワインビネガーとバルサミコ酢。ワインビネガーは赤・白・ロゼと三種類。
 腐呪ふじゅの森になかったお酢が手に入って私は歓喜! 喜ぶ私を見て、精霊達は殊更喜んでくれた。

 ウェヌス達は私に新しい指輪を作ってくれ、のアレス達からも精霊の指輪を受け取った。普段一緒にいない四人とは念話でたまに話していたけど、私が指輪を持っていた方が何かと都合がいいらしい。


 精霊の国で楽しい二日間を過ごした私達はクラオルファミリーの棲家へ。
 ファミリー達は大喜びで……突撃してきたモフモフ達に揉みくちゃにされた。
 私が行方不明になったとき、もしかしたら私がまた呪淵じゅえんの森に飛ばされたかもしれないとガイにぃから連絡が入って、みんな探してくれていたんだそう。
 まさかガイにぃからそんな連絡がいっているなんて知らなかった私は、もっと早く来ればよかったと後悔に苛まれる。
 そんな私に〝無事ならいい!〟〝また会えて嬉しい〟と、一生懸命ジェスチャーで教えてくれる可愛いモフモフ達。控えめに言っても最高すぎる!!


 離れがたいモフモフパラダイスでまたも二日ほど過ごし、私達はカリダの街のデタリョ商会のおじいちゃんを訪ねた。
 おじいちゃんも心配してくれていて、会ったら渡そうと思っていたと、シュティーとカプリコ用の服やブラシをプレゼントしてくれた。

 一度キアーロ国の王都へ飛び、ネライおばあちゃんに挨拶。おばあちゃんには涙を流しながらハグされたんだけど……以前よりも痩せていたため、「お土産だよ」と天狐と一緒に作った霊薬を飲んでもらった。見た目も鑑定の【状態】も大丈夫なことを確認して、ホッと一安心。

 会いたい人達に久しぶりに会えて私も大満足!
 残りの人達に会えるのを楽しみにしながら、キヒターの教会に戻った。

◇ ◆ ◇

 翌日、訪れたジィジ達と一緒にキアーロ国の王都にある、おばあちゃんのお店に飛ばしてもらう。
 ちなみに、おばあちゃんのことやキヒター達のことを知らないスタルティは、ジィジの腕の中で眠らされている。スタルティには「魔法で向かうが、慣れていないと気分が悪くなるから」と伝えてあるらしい。

 お店のカウンターで魔女スタイルのおばあちゃんが待っていた。
 ジィジ、天狐、アチャはおばあちゃんの見た目とお店のゴチャゴチャ具合に驚いている。

「ヴィー、なのか……?」
「ヒャッヒャッヒャ。いかにも。観光するのじゃろう? セナが以前泊まった宿にお泊まり。部屋はインプがとっておるよ」
「ありがとう!」
「ヒャーッヒャッヒャ! …………セナ。普段見えているものが全てではない。おのれを信じるんじゃ」
「え?」
「ヒャーッヒャッヒャ! さぁ、おゆき」

 急に真面目な顔で言うおばあちゃんに驚いている間に、おばあちゃんが笑いながら指をパチンと鳴らす。
 すると私達は一瞬にしておばあちゃんのお店の前の通りに移動していた。

「えぇー!? ちょっと、おばあちゃん! どういう意味!?」

 ドアには〝クローズ〟と札がかけられていて、開かないドアを叩いても、おばあちゃんからの返事はない。
 そのフラグみたいな発言……何かあるってことなの!? 怖いわ!

「ふふふ。セナちゃん、いらっしゃい。何かあっても大丈夫よ。セナちゃんにはアタシ達がいるわ」
「うん……ありがとう」

 天狐は私を抱っこして頬をつんつんとつつく。
 天狐の優しい温もりにギュッと抱きつくと、私を安心させるように微笑んでくれた。

「さ、とりあえず、スタルティを起こしてあげるためにその宿に行きましょ?」

 天狐に促され、以前泊まったベーネさんの宿、〝渡り鳥〟に向かう。
 宿のベッドでスタルティを起こし、私達は王都の観光。
 スタルティとアチャは「雪がない!」「暖かい!」と大興奮。ジィジは久しぶりだけど、天狐は春の季節の地には来たことがないらしく、終始楽しそうだった。
 夜ご飯はベーネさん達が豪勢な食事を用意してくれ、グレンはジィジや天狐とワインをガバガバ飲んでいた。

◇ ◆ ◇

 ジィジにパーティーの件を聞いてから半年、今日はついにパーティー当日。
 朝、宿に迎えに来てくれたブラン団長達に駆け寄る。

「久しぶりー!」
「……会いたかった」
「心配したんですよ」
「大変だったね! 無事でよかった!」

 ブラン団長、フレディ副隊長、パブロさんは代わる代わる私を抱きしめ、頭を撫でまくる。
 ちょっと頭がクラクラするけど、心配かけた私のせいだから甘んじて受け入れるよ!
 落ち着いた三人にジィジ達を紹介すると、ブラン団長達はスッと表情を引き締めた。

「普段通りで構わん。セナから聞いている」
「そうそう。アタシも堅苦しいのは辞めて欲しいわ。ね? アリシアちゃん」
「えっと……わたしはその……」

 天狐に話を振られたアチャはオロオロと言い淀む。
 すると、ブラン団長は「では遠慮なく」と表情を緩めた。

 全員でお城に向かい、王様に挨拶。
 ブラン団長からの手紙に書いてあったけど、王太子だったブラン団長の義兄が正式に王位を継いでいた。
 今回のこのパーティーのように周辺国が集まる機会はそうそうないと、元国王も一緒に向かうらしい。
 今回は特例として、もれなく全員転移門ゲートをくぐった。

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