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1巻
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しおりを挟む第一章 ここはドコですか?
第一話 気が付くと
ふと気が付くと、見知らぬ場所に立っていた。
「ここドコ⁉」
見渡す限り木木木木木木木木……
「って森⁉」
落ち着こうと深呼吸。
すぅーはぁー。
すぅーはぁー。
うん。朝方の新鮮な空気!
……ってちがーう‼
え? なんで?
私、自分の部屋のベッドで寝てたよね?? うん。寝てたハズ。
「意味わかんない……」
周りは木。地面は土が剥き出しのところと草が茂ってるところがあり、小枝なんかも落ちている。
所々に背丈の高い草や蔓の塊みたいなモノもあった。
それにしても木が高い! 何メートルくらいあるんだろう? 二十メートルくらいだろうか……
木の高さのせいで薄暗いけど、朝や昼、夜の区別は付けられそう。
まぁ、夜は真っ暗で何も見えない! とかなりそうだけど……
ここはどこ? な状態だけど、私は誰? とはなっていない。
私は日本に住む、人生とお肌の曲がり角である三十路の女。仕事をして給料をもらってはいるけど、キャリアウーマンなんてカッコイイ呼び方は似合わない。一日中パソコンとにらめっこしているだけ。同業種の人に言ったら怒られそうだけど。
好きなことは、読書(漫画を含む)・ゲーム(RPG)・一人カラオケ・料理・自爪のネイル。自称ライトなオタクである。
コンビニや近所のスーパーに行くくらいならメイクもしないし、部屋着のジャージやスウェットで行動しちゃう。口癖は「面倒臭い」だ。
さて、現状を考えよう。
ここは森。私は昨日疲れて早々にベッドで寝たはず。おかしくない? 森っておかしくない?
今日仕事が休みでよかった……
「何故か目が覚めたら空気が美味しい、朝方の森でした~」なんて言ったら頭がおかしくなったと思われそうだ。
近所に森なんてあったっけ? なかったと思うんだけど……
考えてもわからない。わからないもんはわからない。とりあえず歩けなくはなさそうだ。
こんなところで夜を明かすなんて真っ平御免。
とにかく歩いて人を探して現在地を聞かねばと、一歩踏み出した瞬間、自分の足を見て衝撃を受けた。
「えええええぇぇぇ⁉ なんで⁉ なんでちっちゃくなってんの⁉」
おかしい! コレはおかしい! え? 私頭おかしくなったんかな?
どう見ても小さい足。モミジみたいな小さな手。今着ている服も見たこともない膝丈ワンピースにミドルブーツ。身長もちびっ子サイズなことに気が付いた。
思わず着ているワンピースを捲って体を確認してしまった。
ささやかながらも存在していたハズの胸はツルペタになっていて、下着の中も確かめた結果……どうも私は幼女になっているらしい。
「……あぁ! 夢か! なーんだ。もう、ビックリしたわ」
夢なら納得。目覚めたら森で幼女になっていた……なんて頭がおかしいにもほどがある。夢ならなんでもありだろう。
よく主人公が異世界に転生する小説を読んでいたけど、現実にありえるはずがない。
とりあえず夢から醒める前にせめて人に逢いたいと、再び歩き出すとすぐに転んだ。
「地味に痛い。そしてものすごく動きにくい。この体に慣れるために、体の動かし方を把握しないと大ケガしそうだわ」
小さくなった弊害か、何というか自分が考える動きに体が対応できていない感じがする。
体を動かすなら某ラジ〇体操! と思ったけど、体操の順番や記憶そのものも曖昧なので覚えてる限りのことをやっていく。途中からあやふや過ぎて、結局普通のストレッチに変えた。
何となく動きがスムーズになったところで、ゆっくりと深呼吸してフィニッシュ。
「ふぅ。とりあえずは動けるようになったし、出発しよう」
しばらく森の中を歩いているけど、人の気配がしない。
「コレ、近くに人って住んでるのかな?」
行けども行けども森。
「っていうか、私の妄想力も大したもんだね。本やRPGで培った妄想力で、自分が幼女になって森を散策する夢を見るなんて、我ながら頭が心配になる」
失笑しつつ、いくら妄想とはいえ迷子になっては困るから、拾った石で木に印を付けながらまっすぐだと思うところを歩いていく。
――――ガサガサガサガサッ。
ん? なんだ?
音の方へ目を向けると……幼女姿になった自分を優に超えるサイズの、大きな黒色のカマキリが現れた。
ギーギーと鳴きながら前脚のカマを刃物を研ぐように擦り合わせている。
「……ひっ! 虫⁉ 無理無理無理無理! 気持ち悪っ!」
テンパって顔を背けながら手を顔の前でバタバタさせていると、いつの間にかカマキリの鳴き声が聞こえなくなっていた。
「……あれ? ……うわぁぁぁぁ!」
カマキリがいたところを見ると、切り刻まれた残骸が散らばっている。
「うげぇ。襲われなかったのはいいけどこの状態も気持ち悪い……そしてこの残骸、どうすればいいの? 触りたくない」
小説では魔物の血の匂いとかで他の魔物が寄ってくるとか、アンデッドになるから回収するか燃やすか、土に埋めるのがいいとかってよく書いてあったよね……
既に何とも形容しがたい臭いが漂い始めていて、他の虫が寄ってきたら困る。
触りたくないし、燃やすのにも火種がないから土に埋めるしかないんだろうけど……
「幼女サイズの今の私には穴掘りなんて厳しくない?」
穴を掘る道具もない。仕方がないからさっきのカマキリのカマを使うかと、近付いて手を伸ばしたら……消えた。
「は?」
目の前にあったカマキリの残骸が全部なくなっている。
なんでだろうと考えたけどわからない。まぁ、夢だし消えたからいいか、とまた歩き始めることにした。
「それにしてもカマキリって……なんで虫? あの黒光りするやつらじゃなくてよかったけどさ。あんなでっかいカマキリが現れたってことは、冒険物の夢なのかな? それなら普通はゴブリンとかスライムじゃないの? いきなりゴブリンと戦うハメになってもいろいろ無理だけどさ。でも、私の妄想を夢に見てるのなら、魔法とか使えるかも?」
ブツブツと独り言を呟きながら、変わらず木に印を付けながら歩いていく。
――――ギャオオォォ!
いきなり獣の咆哮が響き渡った。
「今度は何⁉」
ガサガサ音と獣の鳴き声がどんどん近付いてくる。
いくら夢でもこういうのは怖いって!
近付いてくる鳴き声の主から逃げたいけど、足がすくんで動けない。
こんな恐怖の再現度はいらないよ、自分!
どうする⁉ どうしよう⁉
恐怖で足がガクガクして動けないままでいると、これまた大きな一メートルくらいの野犬みたいなのが四匹と一際大きいのが一匹、フンフンと鼻を鳴らしながら現れた。
グループかいっ! これ、異世界物によくいる〝フォレストウルフ〟とかって名前だったら笑ってやる!
なんて変に冷静に突っ込みを入れる自分と、この場をどう切り抜けようかと焦る気持ちで、考えがぐしゃぐしゃになったまま野犬と対峙する。
「魔法使えなきゃどっちみち逃げきれないだろうし、夢なら……私の妄想力をぶつけてやる!」
覚悟を決めて野犬達を見据え、すぅっと息を吸い込んで思いっきり叫ぶ。
「行けー! ウィンドカッター! 首ちょんぱぁぁぁぁー!」
ブォンっと空気が鳴り、ザシュッ! っと格下っぽい四匹の野犬の首が飛んだ。
「おおぉ!」
これは……イケる! イケるぞー!
まさか本当に魔法が使えるなんて、さすが私の夢!
残った大きなリーダー野犬は一瞬ビックリしたあと、警戒して一歩後退。けれどその目は仲間を殺られて殺気立っている。
うぅ。めっちゃ目が怖い。怒りが込められた視線で殺されそう。おそらく攻撃されたらジ・エンド。いくら夢でも野犬に殺されたくない。
「先手必勝! ウィンドカッター!」
叫びながら先程と同じ魔法を放ったが、ソイツに避けられてしまった。
「嘘でしょ? 避けるの? 夢なんだからイージーモードじゃないの? 接近戦とか怖くて無理だよ……」
リーダー野犬は目で射殺さんばかりに睨みつけてくる。
「うぅー! 怖いんだよー! ウィンドカッター! ウィンドカッター! ウィンドカッター!」
殺るか殺られるかのどちらかだろうと、半ばヤケになりつつ撃ちまくるとモワァっと土埃が舞い、コホコホとむせた。
土埃が落ち着くとリーダー野犬の残骸が、格下野犬の横に。
「うわぁ……さっきよりエグい……」
格下野犬は首を落としただけだけど、リーダー野犬は切り刻まれて見るも無惨な姿になっていて、ものすごく気持ち悪い。
さっきのカマキリのときと同じように、野犬にも手をかざしてみるとスッとまた残骸が消えた。
ホッと一安心。残り四匹、全ての残骸を消していく。
ただ、虫の体液より野犬の血の臭いが濃い。噎せ返るような臭いでリバースしちゃいそう。
むむむっと悩んで、一つ思い付いた。
夢ならできるかもしれない。ダメ元でやってみよう。
地面に散乱した血が蒸発するイメージで……
「浄化? …………おぉ!」
唱えるとさっきの戦いがなかったかのように地面がキレイになった。そして漂っていた臭いもなくなった。
よかった……
まだドキドキは治まらないけど、とりあえずこの場所を離れることにしよう。
しばらく歩いていると、ようやくイヤなドキドキから嬉しさに変わってきた。
「すごい! 魔法使えた! 妄想力ってすごい! 私の好きなRPG系の夢なんてさすが私の夢だわ! そしてすごいしか言葉が出てこない。夢の中でも語彙力ないのね……」
独り言を言いつつ、自分の夢の中だからそのままなのかと納得した。
さっき野犬と対峙しているときは、首ちょんぱできたらすぐ戦闘が終わると思ったけど、血の飛散はいただけない。
臭いもキツいし、何より見た目がエグかった。
うん。精神衛生上よろしくない。
あまり思い出さないようにしないと、いくら夢の中でも平和な日本でグータラのびのび育ってきた自分にはいろいろキツい。
ゲームでモンスターを倒すのは好きだけど、画面越しで見るのと実際目の前で見るのは別だ。あんなにグロいのは見たくない。
あんな衝撃的な場面を見たのに、夢から醒める気がしないのは何故だろう。
考えたら止まらなくなりそうなので考えないようにして、周りを確認しつつ歩き続ける。
今、何時なのかもわからない。まだ夜じゃなさそうだけど疲れた。何がって体ではなく気分が。
手足の小さな幼女からも中身の三十路女からも想像できないくらいの体力。体力はむしろ余裕な気がする。
カマキリと野犬の戦闘で、思っていたよりも精神が疲弊しているらしい。
まだ夢から目が覚めないのなら泊まるしかないので、寝る場所を考える。
さっきみたいに虫や野犬に襲われたくない。それなら木の上で寝ようと、ちょうどいい太さの枝がある木がないかを探しながら歩いていく。
…………しばらく探してやっと見つけた!
見つけたけど、いざ登ろうと思ったら登れない!
あああぁぁぁ! 自分が幼女サイズなこと忘れてたよ!
諦めきれず何回もトライするけど、ちょっと登れてもズルズルと落ちてしまう。手足に細かい傷だけ増えていく。
少し休憩しようと木の根元に腰を下ろした。
今だけお猿さんに変身できたらいいのに……なんてありえないことを考えて自嘲した。
あぁ、おなか減ってきたなぁ。
……ん? オナカヘッタナ……?
(あああぁぁぁ! そうだよ! 食べ物ないじゃん! 飲み物ないじゃん!)
早急に確保しないと! っていうか夢で匂いがしたりおなか減ったりするの⁉ どんな夢だよ!
え? 夢で餓死とかやばくない? どうする? どうしよう⁉
新しく敵に遭遇したとしても、冒険物の小説によくある解体なんてできないからお肉とか無理!
むしろ食べられるのかすらわからない。
やっぱりフルーツとか野菜とかだよね! フライパンとかないから調理は無理だけど、幸いココは森! そのまま食べられる系の物を探そう! あとは川とか湖みたいな水辺で飲み物を確保しないと!
思い立って耳を澄ましても川の音もしない。
落胆しつつ、とりあえずきた道じゃない方に進もうと再び歩き出した。
食べられそうな物が見つからない。
いや。正確にはあったはあった。
ショッキングピンクに白い水玉模様のミカンみたいな物が木になっていた。
意気揚々と取って割ってみたら、ものすごい刺激臭がして咄嗟に投げ捨てて諦めた。
アレは絶対毒だよ! アンモニアみたいだったもん!
仮に毒じゃなくても、色と臭いのキツさでとてもじゃないけど食べられない。
アレの臭いを嗅いで食欲は減退したから、今日は食べなくても大丈夫そう。
食べ物と休むのにちょうどいい木を探してるうちに森はすっかり暗闇に支配されてしまった。
時間的にはまだ夕方過ぎなのかもしれないけど、明かりがないから暗い。
今日はいいけどご飯と寝る場所どうしよう……
獣の声が遠くに聞こえている。
電気がある生活に慣れている現代人に、暗い森とか怖すぎる!
(うぅぅ! 怖すぎるんだよぉぉぉぉ!)
困りに困って、眠れそうな樹上を目指して足に力を入れて思いっきりジャンプした。
――――すとんっ!
枝に届いた。
(ワォ。ラッキー! これって身体強化ってやつなのかい?)
とりあえず、敵が怖いから明るくなるまで木に抱きついてコアラ状態で休もう。
体力は余裕だと思ってたけど、自分の想像以上に疲れていたのか、すぐに眠りに落ちた。
◇ ◆ ◇
目が覚めると目の前には木肌があった。
「……え? ………………あぁ夢の続きか」
低血圧で寝起きにボーっとしながら思考を巡らせる。
えぇっと……森。ココは森。
昨日とりあえずの安全を考えて木の上で寝たんだった。
「一晩寝ても夢から醒めないのかいっ!」
思わず身じろぐと木から手が離れた。
あっ! と思ったときには既に遅く、地面に向かって落ちていく。
――――ドシン!
「うぅ。痛い……」
痛い割にはケガもしてないけど。
「はぁ。よかった。こんなところでケガしなくて」
自分の体を確認して周りを見ると、自分の近くに黄色くキラキラしたリンゴが二つ落ちていた。
「リンゴだ!」
色はちょっとアレだけど、ふんふんと匂いを確認してもリンゴ。しかも甘い蜜でも入っていそうないい香りがする。
「やったー! 食べ物!」
服の内側で磨いてかぶりつく!
「うっまーい! めっちゃジューシー!」
ガジガジと咀嚼してあっという間に一つ食べ終わる。
リンゴは種も芯もなく、丸ごと食べることができた。
「ふぅ。めっちゃ美味しかったぁ。一つでおなかいっぱい」
もう一つはおなかが減ったら食べようと、ワンピースのポケットにしまっておく。
リンゴのおかげで、喉の渇きも満たされて満腹満足。
「このリンゴはラッキーお助けアイテムかなんかなのかな?」
それともネットゲームのように〝ログインボーナスプレゼント〟みたいなモノで、毎朝もらえるのだろうか?
「わからないけど、とりあえず助かった」
明日からもらえないかもしれないから大切に食べないと。そして今日はマジで食べ物と水辺探さないと……明日リンゴがなかったら困る。夢から醒めるのが一番いいんだけど……
おなかも満足したので小さい体に慣れるためにストレッチをしていく。
いっちにーさんしっ!
いっちにーさんしっ!
体がポカポカしてきたので、最後に深呼吸して終わりにした。
「ふぅ。よしっ! とりあえず出発しよう。今日は食べ物と水辺だ!」
今日も拾った石で木に印を付けながら歩く。
この森にいる昨日遭遇した虫や野犬達みたいな獣にバレないように静かに。
気配を遮断することを意識しつつ歩いていく。
(気配遮断。気配遮断。私は、今影が薄いの。バレないの)
自分自身に言い聞かせながら足を進める。
昨日戦ったときはグロかったから、今日は違う魔法で血飛沫出さないようにしないとなぁ。
ウィンドカッターを乱発しまくったときは倒せたからよかったけど、避けられて、あの土埃の中で攻撃されたらイヤだし。
悩みながらも昨日より冷静に周りを見ながら歩いていく。
「あっ! 木の実発見! やったー! 食べ物!」
テンション上がってダッシュで近寄ると、木の実は腐った臭いを放っていた。
「うっ……今日のコレも食べられなさそう……」
途中まで木の実に近付いたが臭いで吐きそうになって諦めた。
「この森は食べ物ないの?」
とぼとぼとまた歩き出す。
周りを気にしながら歩いていたからか、近くで何か嫌な感じの気配がした。
警戒を強めているとガサガサ音と、ドシドシと地響きみたいな音がだんだんと近付いてくる。
そして現れたのは……
「熊?」
すぐに臨戦態勢をとって銃を想像しつつ、昨日の野犬と戦ったあとに思い付いた魔法を放つ。
「ウィンドショット」
圧縮された空気の弾は、眉間を狙ったハズが耳に当たった。
熊は雄叫びを上げながら突進してくる。
(ひぃぃ! ヤバイ!)
気が付くとすぐそこまで迫ってきていたけど、なんとか間一髪で転びながらも避けた。
熊は近くの木に正面衝突したものの戦意は失っておらず、そのまま雄叫びを上げる。
熊の体勢が整う前に、さっきよりちょっと大きめの弾を想像してもう一発お見舞いしよう!
「ウィンドショット!」
今度はばっちり後頭部に命中した!
やってやったぜ!
熊はピクピクと痙攣していたけど、すぐに動かなくなったのでまた手をかざして消した。
「昨日みたいに悲惨な感じにならなくてよかったー」
(この消えたモノはどこいくんだろ?)
まぁいいか、とまた歩き始めた。
そのあとも野犬、狸、鹿、ハエ、サソリ……などいろいろな生き物と遭遇しつつ、食べ物と水辺を探したけど、結局見つからなかった。そうしている内にまた夕方になったのでお手頃な木にジャンプで登って休む。
思っていたより敵との戦いに苦労してないなぁ。
RPGとかだと最初は結構大変だったりするけど、風魔法使えてるからか、ケガらしいケガもしていない。私の夢だから自分にとってはイージーモードなのかな? 倒したときのグロさと臭いがなければもっといいんだけど。その辺はリアルなのかな? VRMMOみたい。っていうか、確か日本じゃVRMMO自体、発売されていなかったよね? ラノベの世界の話で、現実にはなかったけど。映像のみの仮想体験のVRがギリギリだったような……ゲームをするにはコントローラーが必要で、臭いなんかはわからなかったハズ。
「いつ目が覚めるのかなぁ? とりあえず眠くなってきたし、リンゴ食べて寝よ」
つらつらと考えることをやめて、ポケットに残していたリンゴでおなかと喉の渇きを満たした。
とりあえず今全部食べるのは止めておこうと、明日の朝用に半分残しておく。
このリンゴのおかげなのか体のせいなのかはわからないけど、喉も全然渇かないし、腹持ちもよくて助かった。
なんて考えつつ、またコアラ状態になるとすぐに眠気に襲われた。
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