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第三部 12章
閑話:欲にまみれた女
しおりを挟むジャレッドがメイド長の部屋からいなくなった後、集められたメイド達は安堵の息を吐く。
「選ばれなくてよかったわ……」
「いくら賃金がよくても死にに行くようなものだものね」
「いいんじゃない? あの子貧乏だし。あたしは無理だけど」
「無駄口叩いていないで仕事に戻りなさい」
勝手に喋りだしたメイド達にメイド長がピシャリと言い放ち、メイド達はそれぞれ仕事に戻って行った。
他のメイドがいなくなると、豹族の女は盛大に舌打ちした。
「ウーヴィ様、人に聞かれたらどうするのですか?」
「今は誰もいないじゃない。あの女が選ばれるなんて! もっと推してくれればよかったのに!」
「あの流血王ですよ? 下手なことをすれば殺されます」
「じゃあどうするのよ? せっかくあの流血王に近付くチャンスだったのに」
「あの少女のせいで計画が狂いました。策を練り直さねばなりません」
「あの子供は何なの?」
「昨日どこからかお連れになりました。どこの誰かなど詳細はわかりません。ただ、あの流血王と普通に接していることから、関係者だと思われますが……アリシアの報告では言葉が通じないそうです」
「言葉が通じないなんてどんな辺境よ?」
「情報がないので私にはわかりかねます」
「流血王が気に入ってるならあの子供を利用したいわね……」
「そうですね……それが一番手っ取り早いかと思われます」
「とりあえず、パパに頼んであの子供の情報探ってもらうわ」
「私も情報を集め次第、旦那様にご報告いたします」
「そうしてちょうだい。あぁ……今日もやりたくもないメイドやらなきゃいけないのね……」
ウーヴィはため息を付きつつ部屋から出て行った。
ウーヴィがいなくなり、メイド長はこれからのことにため息を吐きたくなった。
洗濯を担当していたアリシアが引き抜かれ、この王宮エリアを担うメイドがまた足りなくなってしまった。ただでさえ、恐ろしい人物に仕えたいという奇特な人は少ない。
人数が少ない故にまとめるのは楽だといっても、手に余るほどの仕事量なのだ。
早々に人材を雇わなければ仕事がまわらない。
「旦那様の意向でこうしてずっと働いているとはいえ、私はいつ解放されるのでしょうか……永遠に解放などされないのかもしれませんね……」
ウーヴィの父親である侯爵に目を付けられ、利用されている自身を呪いながらメイド長も仕事に戻る。
――その様子が流血王に筒抜けであることは当の本人達は知る由もない。
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