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11章

カエルの肉は鶏肉似

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 コルトさんが怖い話のように淡々と報告した昨夜、ガルドさん達は大盛り上がりだった。
 特にアンチョビ自慢をしているとき、コルトさんは無表情なドヤ顔を披露。そんなコルトさんに、ジュードさんが矢継ぎ早に質問攻めして、そこからやいのやいのとフィーバー。
 私達は先に休ませてもらった。

 夜更かししていたからまだまだ起きて来なさそう。
 起こすのもアレかなぁと、朝食には起こさなかった。

 私はコテージのキッチンで色々と仕込む。塩辛もキムチも作っておけばすぐに食べられるからね!
 ついでに作り置きのスープや揚げ物、みんなのおやつと色々と作った。

 ガルドさん達は夕方まで爆睡。バタバタとコテージの二階から急いで降りてきたガルドさん達に開口一番に謝られた。
 私達はもちろん気にしちゃいない。

 起きてきたガルドさん達に作った塩辛を試食してもらい、アンケート取る。
 イカ・タコ・ホタテ・ホヤ・カニと食べた結果、意外にもホヤが一番人気だった。次いで王道のイカ。今後大量生産はこの二つに決定。
 タコはやっぱりタコワサがいいのかも。ワサビが手に入ったらまたトライしてみたい!

 その日の夜もグレンのリクエストでお酒を出すことに。アンチョビとキムチがお酒のアテにピッタリだと気に入ったらしい。
 お酒のおつまみをおかずに白米を何回もおかわりした面々は、今日は早々にベッドに入っていった。

────────────────────

 休息とお酒で癒されたみんなと一緒にバロータ村まで戻って来た。
 本当は腐呪ふじゅの森を突っ切って北の国に行きたかったんだけど、においに耐えられなかったから断念。
 ぬかるみ地帯は【スライム砂】を撒いて、行きより日数はかからなかった。

 出戻りの私達に村人は驚いていたけど、歓迎してくれた。
 巨大ムカデを倒したことと、腐呪ふじゅの森までの道ができたことに村人は大喜びだった。

「ブーブーフロッグは出たかい? 出たならうちのブフュルミルクと交換してくれないか?」

 ブーブーフロッグは沼地で飛び出してきたカエル。ブフュルは大人しい水牛みたいな魔物だったハズ。
 私達は戦闘回避のためにスライム砂で討伐していたから、カエルは干からびた干物状態。これが役に立つとは思えない。

「出てきたんだけど……これでよければあげるよ?」

 おじさんに干物カエルを見せると「おおおお!!」と目を輝かせた。
 しかも「手間が省ける!」と喜んでいる。
 聞いてみると、捕まえたカエルを干物にして、何かの液体に漬けてから食べるらしい。
 その液体を見せてくれると言うので、おじさん宅にお邪魔した。

 おじさんが見せてくれたのはツボに入れられた薄茶色の液体と、透き通った薄緑色の液体。

「これに三日間漬けて泥抜きしたのを、コッチに漬けるんだ」

 おじさんの指さし説明だと、薄茶色の液体で泥抜きして、薄緑色の液体で味を染み込ませるらしい。
 これに漬けておくと保存がきくそう。
 私は遠慮したけど、試食をしたグレンの話だと食感は鶏肉に似ているとのこと。
 日本にいたとき芸人が食べているのをテレビで見たけど……この世界でも同じ感想が出てくるとは……

〈しかし不思議な味だな〉
「ハッハッハ! これがクセになるんだよ! この村の特産みたいなもんだ!」

 グレンがまた食べたいと言うならこの液体を分けてもらおうかと思ったけど、いつものご飯の方がいいらしい。
 一度食べたから満足した感じかな?

 グレンもジルもいらないならと、私達が回収していたカエルの一部はおじさんのブフュルミルクと交換した。
 おじさんが他の村人に声をかけ、残りのカエルも野菜や果物、卵と交換してもらえて私はありがたい。

 ハゼはいらないのか聞いてみると、干からびていなかったら泥抜きすれば食べられるらしい。
 ちなみにハゼは乾燥させると泥抜きができないそう。だから街でも売れるかはわからないと言われてしまった。残念。

 その間ガルドさん達は村のおじいさん達に捕まっていて、ムカデ討伐の話をしていたみたい。

 また数日村にお邪魔して、ちょうど街に買い出しに行くという村の男性四人と一緒に村を出る。
 街は本来は普通の馬車で二日ほどなんだけど……村人の馬車を引くのは馬じゃなかった。見た目は牙を生やした巨大イノシシ。

 普通のボアとは違っていて、見たことのない魔物。鑑定してみると【マモーブタ】という珍しい魔獣だった。
 村人いわく、赤ちゃんを拾い「大きな肉になったら食べよう」と育てていたら懐かれたらしい……
 村人は「言うこと聞くから、殺すのも忍びなくてなー」と笑っていて、そんな主人にマモーブタは『ブヒ!』と反応していた。
 くだんの村人には伝えなかったけど、食肉には向かず、どんな調理法でも美味しくならないらしい。しかもおなかを壊すオマケ付き。
 グレンが「食わなくて正解だな」と呟いていた。

 私達は村人が乗る馬車に並走しているんだけど……マモーブタはすごかった。
 見た目ゆえか猪突猛進。
 魔馬と張る……いや、それより速いかもしれない。
 とりあえず、予想以上のスピードで走り、私達は驚いた。
 ただ、乗っている村人に対しての配慮はなく……馬車は段差や石などで激しく揺れ、跳ねている。並走する私達から見ても、四人は振り落とされないように必死で馬車にしがみついているのが見てとれる。
 女性がいない理由がわかった瞬間だった。

 お昼休憩と野営時にはジュードさんの美味しい野菜たっぷりスープを飲んで、村人は「いつも行きはツラいが、今回はこのご褒美で余裕で耐えられそうだ」と喜んでいた。

 イノシシの速さで翌日の朝には街に到着。
 村人と一緒だったからか、私達は大したチェックもされずに街に入れた。

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