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11章

村の大改革

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 坑道の調査には私も参加。
 何十年も毎日採掘されていただけあって、坑道の中は超巨大迷路。私はプルトンが呼んだ闇の子達が調べていてくれた坑道の地図と、マップで迷子にならなくて済んだけど……兵士さんの何人かは迷子になって村人に捜索されていた。

 村長は「誰のおかげで生活できていたと思っている!」と騒いでいたため、兵士さんの馬車に隔離して、グレンの威圧で眠ってもらっている。
 グレンはいい練習になると、村長が意識を取り戻す度に威圧していた。
 ちょっと可哀想かなと思ったんだけど……ルシールさんやシューネさんからの話を聞いた村人が怒っていたため、そのままにしておいた。
 村人はグリーン玉以外が使えない物だと知らなかったみたい。

 結局、坑道の調査や村人への聴き取りなどで、丸一日村の現状の確認で終わってしまった。

────────────────────

 翌日、村人全員が集められ、グリーン玉以外も買い取るという話が発表された。
 昨日とは違う内容に村人は困惑気味。

「昨日お話した通り、今まではグリーン玉以外はほとんど価値がありませんでした。しかし! ここにおられるセナ様が用途を考案して下さったのです! そのおかげでグリーン玉以外の匂い鉱石も相応の金額で買い取ることになりました」
「!」

 想定外に村人からの注目を一身に浴びることになってしまった。
 説明するから近くにいて欲しいと言われたけど、まさかこのためだったなんて!

「今までは採った鉱石は全て村長が管理していましたが、これからは個人となります。街から定期的に行商人が巡回に参りますので、その行商人に売りたい物を売って、買いたい物を買って下さい。必要な物があれば、そのときに伝えて下さい。次回運んで来ます」
「今まで通り匂い鉱石を採掘してもよし! 薬草採取や狩りをしてもよし! 工芸品を作ってもいいよ!」
「村長を捕らえたので、村を管理する人材を派遣します。村についての要望はそちらへ」

 シューネさん、クエバさん、ルシールさんが順に説明していく。
 私が知らない間に、大まかな方針が決められていたらしい。
 村人が薬草採取も狩りもしたことがないと言うので、急遽レクチャーすることになった。

 狩り組、薬草採取組とグループに分かれてもらう。ガルドさん達は狩り組、私達は薬草採取組を担当。各グループ、迷子防止のため、数人の兵士さんが付いた。
 私達のグループにはツィンク君兄弟の他に、三人ほど子供が一緒。

 森に入り、見つけやすい薬草を中心に採取方法や効能を解説する。

「新鮮な方が高く買い取ってもらえるから、行商人が来る前日に採取するのがいいと思う」

 ツィンク君兄弟は前にも教えたけど、真剣に聞いていてエラい。一方、あまり人の話を聞いていない子もいた。

「そうやって雑に採取すると、買い取り金額は安くなっちゃうよ?」
「なんだよ! この草採ればいいんだろ?」
「そうだね……例えばさ、こういう花を採らなきゃいけない場合、こうやって花を摘めば、花はキレイなままだよね? でもキミのやり方だと、こう採取したのと変わらない。この二つの花、もらって嬉しいのはどっちかな?」

 ちょうどいいところに咲いていた花を例えに、実際にやって見せると、少年はくちを噤んだ。
 私の隣りでジルが「セナ様は優しすぎます」ってちょっと怒ってるけど、一度はちゃんと教えてあげないとダメだと思うんだよね。そこから気をつけるかどうかは少年次第。

「セナ様! これはいかがですか!?」
「僕のも確認お願いします!」

 なぜか、一緒に来ている兵士さんまで薬草採取をして、私に見せに来る。見せられた薬草をチェックして、気を付けた方がいいところを教えてあげる。
 褒めるところは褒めていたからか、村人もせっせと摘んでは私に確かめに来る。
 ツィンク君兄弟は一番採取が上手く、頭を撫でて褒めちぎると、「えへへ」と照れていた。大変可愛らしい。
 ツィンク君兄弟に対抗心を燃やしたのか、先程の少年が新しく採取した薬草を持って来た。

「おおー! さっきより全然上手い! 次に採るときは、ここよりもう少し下を切るといいよ」

 大げさに褒め、注意事項を教えてあげるとちょっとやる気をあげたっぽい。三回目には普通に買い取ってもらえそうなくらいになっていた。採取が上手くなった少年の頭を撫でてあげると、満足そうな笑顔を向けてくる。撫でられたかったらしい。



 お昼ご飯に合わせて村に戻ると、狩り組は既に戻って来ていた。
 ガルドさんいわく、遭遇したのは小さなボアだったんだけど、村人がビビりすぎて狩りの練習にもならなかったらしい……
 いろんな匂い鉱石の香りが村全体に漂っているからか、村は一度も魔物に襲われたことがないんだそう。
 ガルドさん達は狩ってきたボアを解体して見せている。

 私達のグループは採取した薬草をシューネさんとクエバさんにチェックしてもらう。
 これからは行商人とのやり取りもしなきゃいけない。実際に体験しておいた方がいいと思ったので、二人にお願いした。

「これは強く握りすぎだ。葉っぱが萎れちまってる。あんたが集めて来たのは全部で銅貨三枚ってところだね」
「ふむふむ。こちらは状態がいいですが、こっちはあまりよくありませんね。状態がいい方は二本で銅貨一枚、それが三セット。残りはまとめて銅貨三枚。全部で銅貨六枚になります」

 大人組はツルハシで坑道に入り浸っていたからか……タコだらけの手で、あまり繊細な作業は慣れていないみたい。
 子供達の方が「へぇー! やるじゃないか!」と褒められていた。買い取り金額も他の大人達より高い。
 兵士さん達は……私と行動した記念に、お守りとして持っておくんだそうです……これはドライフラワーみたいに乾燥してあげた。

 物の相場がわからない村人達に〝銅貨一枚では何を買えるのか〟を実際に見てもらう。
 シューネさんが広げた野菜や雑貨に村人達は目が釘付け。
 薬草を数本採ってきただけで、じゃが芋や人参になることに驚きを隠せていない。頑張れば頑張っただけ自分達の実になることを見て理解した村人達は、瞳に生気が宿った。

 銅貨一枚を理解したところで、次は売買について。
 薬草採取組の子供達は早速換金してもらい、そのお金で買い物を実体験。
 家族のために野菜を買う子、自分のためにクッキーを買う子、それぞれ好きな物を買っていた。
 ツィンク君はカブ、セブダル君は塩を私にプレゼントしてくれた。なんていい子達!

 狩り組に参加していた人達や、村に残っていた人達は疑似体験。
 これで、物価、換金、買い物と全員が理解できたと思う。

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