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11章
フィメィ村
しおりを挟む全員が入るといっぱいいっぱいのため、私達は家の前にコンロを出した。
兄弟はワクワクした様子で、モルトさんとコルトさんの隣りに座っている。
ジュードさんとご飯を作りながら考えるのは、この村の人々のこと。
普通、自分の子供じゃなくても、迷子になっていた知り合いが戻って来たら、大騒ぎになりそうなもんなのに……この村の人達は遠目に見て、ヒソヒソ話しているだけ。プルトンとエルミスに頼んで内容を聞いてもらったら、「なんで冒険者が……」と、私達についてだった。
親を呼びに行くこともなく、ただ喋っている村人にモヤモヤが募る。
子供もチラホラ見えるけど……私達に警戒しているのか、近付いて来ない。
「(ねぇ、セナっち。この村のことどう思うー?)」
「(やっぱり、ジュードさんもおかしいと思う?)」
「(普通もっと喜ぶよねー? オレっち達に近付いて来ないってことは、昔、冒険者と何かあったのかもしれない。何か言われること、覚悟しておいた方がいいと思うー)」
ジュードさんと小声で会話して、そういう可能性もあるのかと納得した。
お昼ご飯を食べても両親は戻って来ず、私とジルは地面に木の棒で文字を書いて、ツィンク君兄弟に算数を教えてあげている。
話せるけど文字が書けないため、数字から。若いからか、私達が正解する度に褒めちぎるからか……一時間もすると、指を使って数えれば、簡単な計算までできるようになっていた。
次のステップとして硬貨を出すと、見たことがないと大興奮。そんな二人に、買い物と仮定した計算のやり方を教えていく。
◇
結局、両親が戻って来たのは夕方だった。
両親も村の老人達と変わらず、痩せていて、着ているのはボロボロの服。しかも土まみれだった。
両親はツィンク君達を見た瞬間、走り寄ってきて二人を抱きしめた。
心配はしていたんだとホッとする。
「探した」という両親に、ツィンク君が私達に助けられたと説明。それを聞いた両親は「ありがとうございます」とペコペコと私達に頭を下げた。
「ケガ、セナちゃん、ポーションくれた!」
「スープおいしかったの!」
「まぁ! ポーションに食事まで……本当にすみません……あの……申し訳ないのですが、うちにはそれを買えるだけのお金がありません……」
「あはは! それは大丈夫だよー。オレっち達、冒険者だからねー。よかったなー?」
ジュードさんがツィンク君とセブダル君をワシャワシャと撫でると、二人は嬉しそうに笑った。
両親から話しを聞くと、この村の大人は朝から夕方まで坑道で匂い鉱石を採掘しているらしい。
それは村全体の生活がかかっていて、子供が行方不明になったとしても免れない。そのため、子供には一人では村を出ないように言い聞かせているそう。
ちょっといろいろ言いたくなったけど……私の気持ちを察したのか、ガルドさんに頭を撫でられた。
父親と共に、村長に私達の滞在許可をもらいに行くと、投げやりに「構わん。勝手にしろ」という一言で済まされた。
一切世話はしないから、全て自分達でなんとかしろってことみたい。
両親にも夜ご飯を食べさせ、私は家の横に馬車を出した。急に現れた馬車を前に、両親は腰を抜かし、ツィンク君兄弟は「すごい! すごい!!」と大興奮。中を見学かするか聞いてみると、高級そうなモノには気後れするらしく、勢いよく拒否られた。
ツィンク君達は夜遅くなっても私達から離れたがらず、むしろ働いてきた両親の方が船を漕いでいる。
ツィンク君とセブダル君を言いくるめて家の中に入ってもらい、私達はようやく馬車に入った。
────────────────────
翌朝、ご飯を食べて両親を見送ったら、ツィンク君兄弟と一緒に森へ向かう。
昨日「坑道によそもんは入れられない」って言われたから、それなら森でゲットしちゃおうってなったんだよね。
森の中をを鑑定しながら進み、ついでに薬草の豆知識をツィンク君達に教えていく。
ぶっちゃけ私は、採取のやり方をしっかりとすれば、匂い鉱石より薬草の方が高額で買い取ってもらえると思う。
森があるのに採取は最低限、畜産も農業もやっていない。なんでそこまで匂い鉱石にこだわるのかがわからない。
ツィンク君達は私達と行動を共にしていたせいか、将来は冒険者になりたいらしい。
彼らは年下の私をバカにするワケでもなく、屈託なく「セナちゃん、すごい!」と褒めてくれる素直な子達だ。セブダル君なんかは「おねぇちゃんみたい」なんて、可愛いことを言ってくれている。
「あ! この辺かな?」
鑑定に引っかかった場所をスコップで掘る。すると、直径二、三センチほどの赤っぽい鉱石が出てきた。
「それはレッド玉だよ」
「レッド玉?」
「父ちゃん達、そう呼んでる」
「なるほど」
(こんなに簡単に採掘できるとは……)
鑑定してみても〝熱すると香りを放つ鉱石〟としか書かれていない。
レッド玉が出た、すぐ近くを掘ってみると……今度は緑色の鉱石が出てきた。
「グリーン玉だ! それ、珍しい!」
「マジか!」
日本の鉱石みたいに同じ鉱石が集合しているワケではなく、すぐ近くに違う色の鉱石が出てきたことにもビックリだよ。
途中、お昼ご飯で休憩を取り、一日中みんなでスコップ片手に森の地面を掘りまくった。
トータルでそこそこの量をゲット。赤と緑以外にも茶色、黄土色、薄茶色、紫色、ピンク色と、十種類以上の色の鉱石。
ツィンク君も全ての色を把握しているわけではないらしい。「坑道、入れない。わからなくてごめんなさい」と謝られてしまった。
鉱石は村の住民にバレると「買い取れ!」と言われるかもしれないとのことで、全て私が無限収納に収納。買い取ってもよかったんだけど、ツィンク君達が嫌がった。
村に戻って、ご飯を食べた後、私は馬車の中からコテージへ。
ガルドさん達はツィンク君達と遊んであげている。
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