上 下
279 / 538
11章

フィメィ村

しおりを挟む


 全員が入るといっぱいいっぱいのため、私達は家の前にコンロを出した。
 兄弟はワクワクした様子で、モルトさんとコルトさんの隣りに座っている。
 ジュードさんとご飯を作りながら考えるのは、この村の人々のこと。

 普通、自分の子供じゃなくても、迷子になっていた知り合いが戻って来たら、大騒ぎになりそうなもんなのに……この村の人達は遠目に見て、ヒソヒソ話しているだけ。プルトンとエルミスに頼んで内容を聞いてもらったら、「なんで冒険者が……」と、私達についてだった。
 親を呼びに行くこともなく、ただ喋っている村人にモヤモヤが募る。
 子供もチラホラ見えるけど……私達に警戒しているのか、近付いて来ない。

「(ねぇ、セナっち。この村のことどう思うー?)」
「(やっぱり、ジュードさんもおかしいと思う?)」
「(普通もっと喜ぶよねー? オレっち達に近付いて来ないってことは、昔、冒険者と何かあったのかもしれない。何か言われること、覚悟しておいた方がいいと思うー)」

 ジュードさんと小声で会話して、そういう可能性もあるのかと納得した。
 お昼ご飯を食べても両親は戻って来ず、私とジルは地面に木の棒で文字を書いて、ツィンク君兄弟に算数を教えてあげている。
 話せるけど文字が書けないため、数字から。若いからか、私達が正解する度に褒めちぎるからか……一時間もすると、指を使って数えれば、簡単な計算までできるようになっていた。
 次のステップとして硬貨を出すと、見たことがないと大興奮。そんな二人に、買い物と仮定した計算のやり方を教えていく。



 結局、両親が戻って来たのは夕方だった。
 両親も村の老人達と変わらず、痩せていて、着ているのはボロボロの服。しかも土まみれだった。
 両親はツィンク君達を見た瞬間、走り寄ってきて二人を抱きしめた。
 心配はしていたんだとホッとする。
 「探した」という両親に、ツィンク君が私達に助けられたと説明。それを聞いた両親は「ありがとうございます」とペコペコと私達に頭を下げた。

「ケガ、セナちゃん、ポーションくれた!」
「スープおいしかったの!」
「まぁ! ポーションに食事まで……本当にすみません……あの……申し訳ないのですが、うちにはそれを買えるだけのお金がありません……」
「あはは! それは大丈夫だよー。オレっち達、冒険者だからねー。よかったなー?」

 ジュードさんがツィンク君とセブダル君をワシャワシャと撫でると、二人は嬉しそうに笑った。

 両親から話しを聞くと、この村の大人は朝から夕方まで坑道で匂い鉱石を採掘しているらしい。
 それは村全体の生活がかかっていて、子供が行方不明になったとしても免れない。そのため、子供には一人では村を出ないように言い聞かせているそう。
 ちょっといろいろ言いたくなったけど……私の気持ちを察したのか、ガルドさんに頭を撫でられた。

 父親と共に、村長に私達の滞在許可をもらいに行くと、投げやりに「構わん。勝手にしろ」という一言で済まされた。
 一切世話はしないから、全て自分達でなんとかしろってことみたい。

 両親にも夜ご飯を食べさせ、私は家の横に馬車を出した。急に現れた馬車を前に、両親は腰を抜かし、ツィンク君兄弟は「すごい! すごい!!」と大興奮。中を見学かするか聞いてみると、高級そうなモノには気後れするらしく、勢いよく拒否られた。

 ツィンク君達は夜遅くなっても私達から離れたがらず、むしろ働いてきた両親の方が船を漕いでいる。
 ツィンク君とセブダル君を言いくるめて家の中に入ってもらい、私達はようやく馬車に入った。

────────────────────

 翌朝、ご飯を食べて両親を見送ったら、ツィンク君兄弟と一緒に森へ向かう。
 昨日「坑道によそもんは入れられない」って言われたから、それなら森でゲットしちゃおうってなったんだよね。

 森の中をを鑑定しながら進み、ついでに薬草の豆知識をツィンク君達に教えていく。
 ぶっちゃけ私は、採取のやり方をしっかりとすれば、匂い鉱石より薬草の方が高額で買い取ってもらえると思う。
 森があるのに採取は最低限、畜産も農業もやっていない。なんでそこまで匂い鉱石にこだわるのかがわからない。

 ツィンク君達は私達と行動を共にしていたせいか、将来は冒険者になりたいらしい。
 彼らは年下の私をバカにするワケでもなく、屈託なく「セナちゃん、すごい!」と褒めてくれる素直な子達だ。セブダル君なんかは「おねぇちゃんみたい」なんて、可愛いことを言ってくれている。

「あ! この辺かな?」

 鑑定に引っかかった場所をスコップで掘る。すると、直径二、三センチほどの赤っぽい鉱石が出てきた。

「それはレッド玉だよ」
「レッド玉?」
「父ちゃん達、そう呼んでる」
「なるほど」

(こんなに簡単に採掘できるとは……)
 鑑定してみても〝熱すると香りを放つ鉱石〟としか書かれていない。
 レッド玉が出た、すぐ近くを掘ってみると……今度は緑色の鉱石が出てきた。

「グリーン玉だ! それ、珍しい!」
「マジか!」

 日本の鉱石みたいに同じ鉱石が集合しているワケではなく、すぐ近くに違う色の鉱石が出てきたことにもビックリだよ。

 途中、お昼ご飯で休憩を取り、一日中みんなでスコップ片手に森の地面を掘りまくった。
 トータルでそこそこの量をゲット。赤と緑以外にも茶色、黄土色、薄茶色、紫色、ピンク色と、十種類以上のの鉱石。
 ツィンク君も全てのを把握しているわけではないらしい。「坑道、入れない。わからなくてごめんなさい」と謝られてしまった。

 鉱石は村の住民にバレると「買い取れ!」と言われるかもしれないとのことで、全て私が無限収納インベントリに収納。買い取ってもよかったんだけど、ツィンク君達が嫌がった。

 村に戻って、ご飯を食べた後、私は馬車の中からコテージへ。
 ガルドさん達はツィンク君達と遊んであげている。
しおりを挟む
感想 1,797

あなたにおすすめの小説

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。