上 下
269 / 538
第二部 10章

馬車に響く絶叫

しおりを挟む


 今回の馬車はマンション付きの馬車の方。理由はアクエスパパに「コテージに案内する前に耐性を付けておいた方がいい」と言われたから。
 ガルドさん達は前回と違う小さめな馬車を見て「馬車何台持ってんだよ……」って苦笑いしてたけど、特に追求されることはなかった。
 運転をニヴェスに任せて、普段御者席にいるジルも中に入ってもらっている。ダンジョンから離れてちょっと落ち着いた頃を見計らって、ガルドさん達をマンションの玄関に招き入れた。
 マンションは私が作ったときよりも広くなっていて、ガルドさん達のことを考えてパパ達がいじってくれたっぽい。

「な、なんだここは……」
「うわぁ~」
「すごいですね……」
「……広い」

 四人の驚き具合にクスクスと笑っていると、ガルドさんに上からガシッと頭を捕まれた。バレーボールみたいに……
 ちょっとズレたらアイアンクローになっちゃうよ! ジワジワちから込めないで!

「どういうことだ? しっかり説明してくれるんだろうな?」
「んとね、馬車の中が狭いからってパパ達が作ってくれたの」
「んなっ!? ……まぁ、あの神達ならありえるか……」

 〝パパ達〟発言でガルドさんは納得してくれたらしい。
 ジュードさんは大爆笑、モルトさんは納得、コルトさんはガルドさんに掴まれていた頭を撫でながらヒールをかけてくれた。
 三人はマンション内を見てくるとワクワクした様子で中に上がっていった。

「ってことはこの馬車も……」
「うん。ガイにぃとイグねぇが作ってくれたから頑丈だよ!  よくわかんないけど、細工してあるって言ってた。あの大きい方の馬車もガイにぃ達だし、ニヴェス達のハーネスはアクエスパパとエアリルパパが作ってくれたんだよ」

 私が教えてあげるとガルドさんはピクピクと口元を引き攣らせた。

「あぁぁぁぁ! セナっちー!?」

 ガルドさんと話していると、ジュードさんの叫び声が聞こえた。
 急いで向かうと、ジュードさんがいたのはキッチン。キッチンの充実さに驚いたらしい。

「すごい! すごい! 面白い! セナっち! これは何!?」
「ふふっ。それはピーラーだよ。簡単に野菜の皮を剥く道具」
「コレはー!?」
「それはし器」
「ムシキ?」
「食べ物を水蒸気です道具だよ」

 どうやって使うのかを説明するためにしパンを作って見せると、ジュードさんは顔を真っ赤にテンションが急上昇。

「お、おい。少し落ち着け」
「落ち着けるワケないでしょー!? セナっちコレは!? これも便利道具!?」

 ジュードさんは瞳をギラつかせて、おろし器を片手に迫ってくる。
 正直ちょっと怖い。
 ジュードさんの気迫にジリジリと後退するとガルドさんの足に当たってしまった。
 じわじわと近付いてくるジュードさんに、ガルドさんが腕を伸ばしてデコピンを三連発。

「いっ!」
「落ち着け! ったく……怖がらせるな」
「はっ! セナっち、ごめーん」
「う、うん。大丈夫……焦らなくてもこれからジュードさんも使えるよ」

 私がガルドさんの足に抱きつきながら言うと、ジュードさんは「そっかー。そうだよねー! 毎日楽しみにしてればいいんだねー!」と満面の笑みで頷いていた。
 これからご飯作りの度に質問攻めされそうな気がする……

〈セナ。美味しそうな匂いがする〉
「蒸しパン作ったから、みんなで食べよ?」
〈おぉ! レーズン入りか!?〉
「ちゃんと入ってるよ」

 ジュードさんの声で後ろに集まっていたみんなをリビングに促し、全員に蒸しパンを配る。
 ガルドさん達は普通のパンとの違いに驚いていた。



 説明がてらガルドさん達と一緒にマンション内を見て回ると、玄関同様にお風呂場も広くなり、ベッドの数も増えていた。あげくにベッドエリアとの仕切りも置いてあって、マンションというよりもホテルみたいに進化していた。
 特に四人共、トイレへの食いつきがヤバかった。
 水洗自体が初めて見るモノで「構造は?」「なんでこんなのを知ってる?」「流れた水はどこへ行く?」と矢継ぎ早に説明を求められた。
 前世である日本のことをハッキリ言えない私は……「あんまり覚えてないんだけど、私の故郷にあったやつだって。パパ達が作ってくれたから構造とかよくわかんない。水はキレイになるって言ってたよ」と、全部マルっとパパ達のせいにしちゃった。パパ達ごめんね!
 パパ達を出したからか、ガルドさん達はそれ以上追求してこなかった。ただ「どんだけ気に入られてんだよ……」って疲れたようなガルドさんの呟きが聞こえた。
 うん。それは私も思ってるよ? なんでこんなに優しくしてくれるのかな? って。



 マンションの見学が終わった私達はリビングのソファでくつろいでいる。
 帰り際におばあちゃんに「ステータスを見てみぃ」と言われたのを思い出し、ガルドさん達にも伝えると、全員でチェックすることになった。
 ドキドキしながらステータスを開く。

┏【ステータス】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 
【名前】 セナ・エスリル・ルテーナ
【種族】神人(*隠蔽中)
【年齢】5歳
【職業】Cランク冒険者・行商人
【レベル】261(*隠蔽中)
【状態】健康
【ユニークスキル】(*隠蔽中)
 看破
 無限収納インベントリEX
 全言語理解
 特殊隠蔽
 音楽再生
【スキル】(*隠蔽中)
 ・水魔法500・風魔法500・氷魔法500・雷魔法476・光魔法499・闇魔法353・無魔法386・空間魔法473・火魔法250・土魔法268・草魔法250
 ・付与490・鍛冶361・木工500・採掘102・解体250・家事498・直感412・察知364・索敵500・探査376・隠密413・結界483・魔力精密制御468・夜目287・薬学394・錬金術473・身体強化459・意思疎通388・使用魔力減少339・メモリー416・念話439・歌唱398・演奏321・武器術367・武闘術286・自然回復333
【耐性】(*隠蔽中)
状態異常耐性500・精神耐性500・物理攻撃耐性500・魔法攻撃耐性500
【従魔】・ヴァインタミア→クラオル
    ・エキュルスタミア→グレウス
    ・スピーアスパイダー→ポラル
    ・古代龍エンシェントドラゴン(赤龍)→グレン
    ・ザラムパルドゥス→ネラース
    ・グレッチャジャマド→アクラン
    ・不死鳥フェニックス→ルフス
    ・フェーリスウールヴ→ニヴェス
    ・ミノタウローナ→シュティー
    ・サテュロナ→カプリコ
【契約精霊・妖精】・元精霊王→エルミス
         ・元精霊王→プルトン
         ・精霊帝せいれいてい→ウェヌス
         ・ブラウニー→キヒター
【称号】(*隠蔽中)
 ・異世界転生者
 ・パナーテルの愛を受け取りし者
 ・神を土下座させた者
 ・アクエスの愛娘
 ・エアリルの愛娘
 ・イグニスの愛し子
 ・ガイアの愛し子
 ・創世の女神ヴィエルディーオの孫娘
 ・ヴァインタミア族の英雄ヒーロー
 ・カイザーコングの盟友
 ・神達に愛されし者
 ・精霊に愛されし者
 ・癒しのマスコット
 ・ラブハンド
 ・天災級魔獣の討伐者
 ・キアーロ国の救世主
 ・女神と呼ばれし者
 ・家族を愛し家族に愛される者
 ・弱き者の味方
 ・魔物大量発生スタンピードダンジョン踏襲者
 ・特異ダンジョン踏襲者
 ・稀代きだいの発明家
 ・食の伝導者
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


(うわぁ……あんまり戦ってないのにレベルの上がり方がえげつない……文字化けはなくなったけど……これ、順番入れ替わるのか……)

「「「え゛ぇぇぇぇえ!?」」」

 ガルドさん達の叫び声にステータスボードから顔を上げると、ガルドさん達は零れ落ちそうなほど目を見開いて、顎が外れそうなくらいくちを開いていた。コルトさんだけは驚いているみたいだけどくちを真一文字に結んでいる。

「おかしいだろ……」
〈なるほど。あのダンジョンはレベルが上がりやすいんだな……もう少し狩った方がよかったか?〉

 ガルドさんは天を仰ぎながら呟き、グレンはニヤリと笑っている。
 ジルは……なんかすごく嬉しそうなんだけど……


しおりを挟む
感想 1,797

あなたにおすすめの小説

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。