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第二部 10章

マースールー迷宮たる所以【7】

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 翌朝、四十二階層に降りると、砂漠エリアの広場タイプだった。ダンジョンの中なのにジリジリと太陽に照らされる感覚に襲われる。
 壁があるハズなのに見えない。

「暑いな……ってなんで平気そうなんだよ……」
「服に自動温度調節付いてるから?」
「オレっちの服も一応付いてるハズなんだけど暑いよー」

 私とプルトンが闇魔法で日陰を作っているし、エルミスが水と氷魔法で紛らわせてくれてるんだけど、暑いもんは暑いらしい。
 クラオルとグレウスは私の服の中に避難して、首元から顔だけ出している。
 アクランは暑さにバテてしまい、影の中に入ってもらった。

「ねぇ、ガルドさん。これ地面、砂しかないけど、階段ってどうやって見つけるの?」
「俺達もダンジョンの砂漠は初めてだ」
〈通常は階段のところだけ砂がないんだが……〉

 ガルドさん達もわからないとのことで、グレンに顔を向けると教えてくれた。けど……
 
「何その含みがある言い方……」
〈落とし穴のように下層に落ちる場合もある〉
「え!? マジ!?」
〈マジだ〉

 グレンは大真面目に頷いた。
 多分、砂時計みたいに滑り落ちる感じだよね?

「それって……みんなバラバラになる可能性出てこない?」
〈うむ。なるべく離れない方がいいな〉
「「マジか……」」

 私とガルドさんの声がハモった。
 一つ上の階のボスがアレだったから、嫌な予感がしてたんだけど……現れた魔物は予想通り、ポージングを取った。

「サソリまでブーメランパンツ穿いてキメるのね……」

 砂の中から出てきたサソリはポーズをキメた瞬間、アルヴィンによって狩られた。ドロップ品はまたプロテイン。効果が(微)から(弱)に変わっていた。

 ガルドさん達もネラース達も砂漠の暑さで元気がない。
 砂のせいで歩きにくくて体力も奪われていく。
 ネラース達に影に入るか聞いたけど嫌がられ、バテ気味のネラース達の代わりにアルヴィンとウェヌスが魔物を担当してくれた。
 階段が見つからなくてウロウロすること二時間……ようやく階段を見つけて下層に降りられた。

「また砂漠……これ、今までの感じだと砂漠続くのかな?」
「ありえるな……」
「さすがにこう暑いとキツいですね……」

 モルトさんの疲労が滲む声を聞いて見上げると、モルトさんだけじゃなくてみんな汗を大量にかいていた。唯一平気そうなのはグレンだけ。
 私も氷魔法で冷やそうとしたら、「この先のことを考えてやめておけ」とガルドさんに言われてしまった。
 それならと以前作った保冷剤を配るとガルドさん達は大喜び。ジュードさんが保冷剤に頬擦りしてプルトンに引かれていた。

 そのまま砂漠エリアが続き、四十四階層でオアシスを発見。
 オアシスの周りはセーフティーエリアらしく、魔物は出てこない。
 ネラース達もガルドさん達もオアシスの泉で水浴びして、スッキリとしたところで遅いお昼ご飯。
 ダンジョンの砂漠はどこからか風が吹いてきて砂が舞い、ゆっくりと休憩できる場所がなかった。

「あぁー……生き返ったぜ」
「このパラソル? というものは便利ですね」
「……この保冷剤もすごい」
「さっき食べたシャベーットがいいよ!」

 モルトさん、コルトさん、ジュードさんが褒めてくれた。でもジュードさん、〝シャベーット〟じゃなくて〝シャーベット〟だよ。
 そんな三人にグレンが〈セナが作ったやつだからな!〉とドヤ顔を披露している。

 私達は私のマップのおかげで、このだだっ広い砂漠でも迷子になっていないけど、マップがなかったら彷徨うことになっていたと思う。マップを付けてくれたパパ達に感謝しないと。
 私達をずっと冷やしていてくれたエルミスに魔力は大丈夫なのか聞くと、今くらいの消費量なら夜までは大丈夫らしい。これ以上だとつらいみたい。プルトンは日陰を作っているだけだから大丈夫なんだそう。
 一応エルミスとプルトンにはマジックポーションを飲んでもらった。

 充分に休憩したところで気合いを入れて出発。熱中症にならないように水分と塩分補給もしながら砂漠を歩いていく。
 時間がかかりながらも階段を見つけて下層へ。

 四十六階層のボスは二メートルほどのゴーレムが五体だった。
 ゴーレムは言わば石の人形。アニメやゲームに出てくるあの感じまんま。
 ただ、気になるのは何故か石のボディがテカっていること。
 そしてそのゴーレムもマッスルポーズでキメていて、いい加減しつこいダンジョンのアピール具合に私達は辟易へきえき

 ゴーレムは、体内のどこかにある核と呼ばれている部分を破壊しないと再生し続ける。
 そう。スライムと

「ちょっと面白そう」
〈セナ?〉
「おい、何で笑ってる? 変なこと考えてるんじゃねぇだろうな?」
「ふふふ」
「また笑って誤魔化しやがって……」

 ガルドさんに怪訝けげんそうに見られたけど、気にしない。
 今回は五体いるから私も参戦させてもらおう。
 地面は砂だから気をつけないとね。
 私は刀と短剣を両手に握り、みんなとタイミングを合わせてゴーレムに突撃。

「おぉ! さすがイグねぇの刀!」

 動きが遅いゴーレムの腕が抵抗感もなくスパッと切れて私はニンマリ。
 クラオルとポラルがゴーレムの攻撃の邪魔をしてくれたおかげだ。
 切り落とした腕はそのままで、ボディの方から腕がズズズズズと再生されていく。

「なるほど。核が再生を担うってことは、落とした腕に核はないのね」

 クラオルとポラルに声をかけ、クラオル達が動きを阻害してくれた瞬間を狙って手足を切り落としていく。
 再生力に限りがあるのか、だんだんと再生するスピードが落ちてきた。

――――グゴオオオオオオオ!!

 感情があるのか、はたまた暴走か……ゴーレムはを赤く光らせ、先ほどとは打って変わって攻撃してくるスピードが上がった。

『くっ! 主様、チカラも強くなってるわ。早く決着つけて』
「わかった! グレウス! ゴーレム転ばせて!」
『はいっ!』

 私がお願いすると、グレウスは地面をボコッと盛り上げてゴーレムのバランスを崩してくれた。
 すかさず足を切り落とし、予想を付けていたゴーレムの下っ腹を刀ので殴り付ける。ヒビが入ったボディからチラりと色の異なるものが見えた。

「ビンゴ!」

 横たわったゴーレムのお腹のヒビを広げるようにガンガンとを振り下ろし、核をゲット!
 手の平に乗せた核がプルプルと小刻みに震え始め、核の周りには砂が集まってきてしまった。周りの砂でゴーレムを形作っていたらしい。
 これはまずいと咄嗟に核に魔力を流すと、色が変わって振動が止まった。
 核ではなくボディがあった場所にダンジョンボスの宝箱が出現していた。

「ふぅ。三人ともありがとうー! 無事手に入ったよ!」
『んもう! またおかしなことして!』

 クラオルにペシペシと抗議されながら、みんなの戦闘は終わったかなと振り向くと、みんなから注目を浴びていた。
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