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第二部 10章

マースールー迷宮たる所以【6】

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 戦闘が終わり、戦っていたガルドさん達はお疲れモード。
 手伝えなくて申し訳ない……

〈セナ、これはなんだ? 魔道具らしいがどうやって使う?〉

 グレンがボスの宝箱から持ってきたのは、まさかの筋トレグッズだった。

「これ、腹筋ローラーだよ。おなかの筋肉鍛えるの。魔道具なんだね……」

 口頭こうとうでやり方を説明すると、グレンは興味を失ったみたい。まぁ、グレンはナイスボディだから必要ないと思う。

 エルミスに抱っこされたままみんなのところへ行くと、ガルドさん達も腹筋ローラーを持っていた。なんと十八個も入っていたらしい。ここにいる全員、一人一台もらえる数だった。

 アーロンさんへのお土産の魔道具を回収して私達は続き部屋へ。
 私はまだ気持ち悪いし、ガルドさん達もお疲れなので今日はここまで。昨日よりも進めていない。

「ご飯作らないと……」
「セナっちは休んでなよー。顔色悪いよー?」
「でも……」
「……ダメ」

 ジュードさんが大変になっちゃうと反論しようとすると、コルトさんに却下されてしまった。
 私は大きくなったアクランの膝の上に座らされて、周りをネラース達が固めた。モフモフのアニマルセラピー。

 ジュードさんが作ってくれたご飯を食べて落ち着いた頃、私は熱を出した。
 みんなに浄化の結界を常時張っていたことによる魔力消費と、イモムシが嫌いすぎて体が拒否反応を起こしたらしい。
 「セナ様、セナ様」と甲斐甲斐しくお世話してくれるジルにガルドさんは苦笑い。

 結局、熱が下がるまで二日もかかってしまった。
 その間、基本的にみんなは私から離れず、お世話になりっぱなしだった。


 復活した日の朝、私が朝食を作っていると起きたジュードさんに怒られてしまった。もう大丈夫だと説明したのに「病み上がりなんだから休んでなきゃダメでしょー!」とコンロ前から追い払われた。
 肩を落とした私をモルトさんとコルトさんが慰めてくれる。

「……ジュードさん、心配してる」
「もう元気だよ?」
「グレンに聞きましたが、以前も無理して倒れたんですよね? 高熱でうなされていたと」

 それは多分、魔力拡張のときだな……あれは普通に倒れたとはちょっと違うと思うんだけど、どう説明すればいいのか……

「……結界、魔力消費激しい」
「マジックポーションあるよ?」
「……無理はよくない」
「ええ。自分達も心配していますから、休めるときは休んで下さい」

 むむむ……過保護に拍車がかかってる気がするぞ! グレンさん何言ってくれてるの!
 大丈夫だと言ってもみんな聞いてくれなくて、私はそんなに信用がないのかとショックを受けた。まぁ、確かにダンジョンで熱を出すとかダメだと思うし、心配してくれているのもわかるんだけどさ……

 そのままジュードさんが仕上げてくれた朝ご飯を食べて出発することになった。
 エルミスに強制的に抱っこされて、三十二階層に降りる。
 降りた先はまたガラリと変わり、草原エリアだった。所々に木は生えているものの、広場タイプでものすごくだだっ広い草っ原。

「ニワトリ?」
〈ほう! ドゥードゥーか! 久しぶりに見たな。セナ! アレの卵は美味しいぞ!〉

 一回り大きいニワトリだと思ったら、魔物だったらしい。
 グレンの〝美味しい〟発言で、ネラース達のやる気はうなぎ登りに。ジュードさんまで「いっぱい狩ろう!」とテンションが上がってしまった。

 テンション高く狩りに行ってしまったネラース達を見て、ジュードさんがソワソワ。ジュードさんも美味しい食材に目がないみたい。
 ドロップ品が卵とは限らないって思ったけど、卵だったみたいでグレンがネラース達に〈たくさん狩って来い〉と言っている声が聞こえた。

「じゃあ、俺達も狩ってくる。セナは階段を探してくれ」
「はーい」

 苦笑いのガルドさんに言われて、私と精霊達は階段探し。
 散らばった方が早いと思うのにエルミスが降ろしてくれないため、私はエルミスの腕の中でキョロキョロしているだけ。お荷物感がハンパない。

「あ! あったよー」

 私が声をかけてもみんな狩りに夢中。念話を飛ばしてようやく気が付いてもらえた。
 ニヴェスがガルドさん達を案内してくれ、全員集合。みんなはもうちょっと狩りたかったらしい。
 そんなみんなの気持ちに応えるかのように、草原とニワトリのセットの階層が続いて、卵の在庫は大量になった。

 三十六階層のボスは日本のニワトリサイズの七面鳥がたくさん。ターキーが大量に手に入って私のテンションが上がった。

 三十七階層から四十階層も草原エリア。ここは一回り大きい軍鶏と烏骨鶏の二種類出てきた。
 グレンいわく、ニワトリもそうだけどこの二種類も狩られまくって、今じゃ見かけることがほとんどないらしい。
 ここでは軍鶏肉と烏骨鶏の卵が大量に手に入って私もジュードさんも大満足。

 四十一階層のボスはここへきてまさかのマッチョシリーズ。五メートルはありそうな巨大な鳩がポーズをキメていた。
 胸を膨らませ、羽を広げ、私達をチラ見して静止。反応しない私達に次のポーズを取ってまたチラ見。

「またこのパターン? くさい虫とかイモムシよりは全然いいけどさ……」
〈さっさと終わらせるぞ。セナは待ってろ〉
「えぇー! …………わかった」

 抗議の声を上げたらグレンに目で訴えられて、私は渋々承諾。
 ニワトリもそこそこの耐久力があったけど、みんなにかかれば余裕。それでも三十分ほどかかっていた。
 このメンバーでこれだけの時間がかかるとしたら、昔このダンジョンに入った人はどれだけ強かったのか……そんなにプロテインパワーはすごいのか……謎だ。

 ドロップ品はお肉だったんだけど……日本では鳩を食べる習慣がなかったから、ちょっと微妙。中国では食べられているのもフランス料理で使われるのも、一応知ってはいるんだけどね。

 卵狩りに時間をかけたせいで今日はこの続き部屋で休むことに。
 朝ご飯と同じく私はネラース達に囲まれ、ジュードさんが夜ご飯を作ってくれた。
 何もしなさすぎて申し訳ない。


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