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9章
召喚【1】
しおりを挟む「セナ!」
「パパ!」
「あぁ……無事でよかった!」
私の呼び声に応えて、アクエスパパがきてくれた。
私をギュッと抱きしめ、頬ずりしているアクエスパパを見て、アルヴィンさんは目を見張った。
「まさか生きているうちに神にお目見えできるとは……」
「いや、死んでるだろ」
アルヴィンさんの呟きにアクエスパパがつっこむと、アルヴィンさんは「そういえばそうだった」と一人頷いた。
「ねぇパパ。ここから元の場所に戻りたいんだけど、戻れる?」
「当たり前だ。セナの気配がおかしくなって心配していたんだぞ。いつもセナは一人で抱え込むからな……呼んでくれてよかった」
心底安心したように、私のおでこに自分のおでこをくっつけて言われた。
「でも、今回パパ達は手出しできないって……」
「原因がわかれば助けられるとクラオルから聞いただろ? セナは一人で背負いすぎなんだ。今回グレンが倒れたのはセナのせいじゃない。自分で自分を追いつめて傷つけるな」
「だって……」
「〝だって〟も〝でも〟もない。無理して転移しまくって……ヒヤヒヤしっぱなしだったんだぞ」
「ポーション飲んでたもん」
「セーナー?」
「ごめんなさい。心配してくれてありがとう」
私が口だけでも謝ると「セナがあいつらを心配しているより、俺達はセナを心配しているんだぞ」と諭すように言われてしまった。
でもはダメだと言われたけど、今回は私が動かなかったら、女神についての伝承についてもわからなかったと思うんだけど……
「クラオルから俺達が調べるから待てって言われなかったか?」
「聞いてないよ。ガイ兄に聞いてもらったら、忙しいから会えないけど調べておくって言われたって」
「ガイアか。後で説教だな」
私とパパが話していると、エアリルパパとイグ姐が私の名前を呼びながら現れた。
「セナさん!」
「セナ! 心配していたんじゃぞ」
エアリルパパがアクエスパパに抱っこされている私に勢いよく寄ってきたと思ったら、横からイグ姐の腕が伸びてきた。
一瞬にして私はイグ姐の腕の中へ。
イグ姐はチュッチュと私の頭やおでこにキスを落としながら「妾の癒し」と呟いている。
そんなイグ姐の横でエアリルパパが「僕のセナさんです!」と声を張り上げていた。
「二人も忙しいのに来てくれてありがとう」
「セナのピンチに駆けつけぬワケがなかろう?」
「当然ですっ!」
収拾がつかない状況を何とかしようと二人に声をかけると、ニッコリと笑いかけてくれた。
ガイ兄のことを聞いてみると、抜けられない仕事をしていて超特急で終わらせ次第来てくれるらしい。
「セナのピンチに駆け付けられぬと嘆いておった」
「忙しいのにごめんね」
「よいよい。セナが呼んでくれなければ、ここにいるとわかるまで時間がかかったからのぅ」
「セナさんが呼んでくれたので僕達がすぐに来れたんですよ」
私のパパ発言は召喚発言だったことが判明した。ただ、時と場合と場所によるらしい。
「さて、どういうことか説明してもらおうかの?」
ずっと黙っていたアルヴィンさんにイグ姐が圧のある笑顔で問うと、アルヴィンさんはキョトンとした。
「んとね、私が最初から説明するよ」
クラオルからの報告がどういってるのかがわからないので、シュグタイルハンの王都でドナルドさんにもらった情報のところから話した。
「なるほどのぅ。ガイアがどれくらい報告を受けてるのかはわからぬが、妾が知らぬこともあったんじゃな」
「うぅ……セナさん大変だったんですね」
「ゔっ!」
「あっ! おい! バカ! セナの骨が折れるだろうが!」
エアリルパパにギュウギュウと抱きしめられて、一瞬天に召すかと思った。
「しかし、その神の使いなんぞ聞いたことがないのぅ」
「あの方のことだから忘れてるか、報告することでもないと思ったんじゃないのか?」
「ありえるのぅ……」
アクエスパパの発言に、イグ姐が首を振りながら呆れたように答えた。
「その神の使いについては調べなければわかりませんね」
「もう調べたよ」
エアリルパパの言葉に返したのは遅れて現れたガイ兄だった。
ガイ兄は「待たせてごめんね」と私の頭を慈しむように撫でてくれた。
「今回は、セナさんが調べてくれていた女神の呪いと関係がほとんどなかったんだよ。事の発端は人間だったんだ」
「人間?」
私の呟きに「そうだよ」と再び頭を撫でてから説明を続けてくれた。
――とある人物が、実験で作った毒薬を泉に捨てた。
神の使いは泉の水が汚染されていることに気が付き、浄化しようとした。
しかし、自然のものではない毒薬は、人と関係を持っていない神の使いからすれば未知の物。何とかあまり影響のないようにすることが精一杯だった。
力を使い果たした神の使いは、眠りについた――
「あぁ……なるほど。頑張って抵抗したから、鑑定で〝抵抗〟って出たのね」
「そういうこと」
「その人物は誰なの?」
「それがわからないんだよ。過去のことだし、さすがにこの世界中から探すのは困難でね。ごめんね」
「ううん! 忙しいのに調べてくれてありがとう!!」
ガイ兄に謝られてしまい、私はブンブンと首を振って否定した。
はた迷惑な人間もいたもんだ。会ったら一発くらい殴ってやりたい。
「グレン達を起こすにはどうしたらいいの?」
「泉を浄化して、神の使いを起こしたら自然に目が覚めると思うよ」
「泉では試してないけど、村の井戸を浄化したときはダメだったよ?」
「セナさんはいいモノを持ってるよね? それを使った後、セナさんが浄化すれば大丈夫だよ」
いいモノ? なんか持ってたっけ?
首を傾げている私に「ダンジョンで手に入れたよね?」と、ガイ兄がヒントを出してくれた。
「んー……あぁ! 水をキレイにする玉!」
「正解。使った後はまたセナさんが持ってて大丈夫だからね」
「わかった!」
元気よく返事をした私をガイ兄が撫でていると、アクエスパパが「よく調べたな」と感心した。
クラオルから私が責任を感じてると連絡が入り、急いで調べてくれたらしい。
「セナさんが集めてくれた情報のおかげで、わからなかったところが繋がったんだよ」
「よかった。私が動いてたのは無駄じゃなかったんだね……」
「そうだね。でも、一人で抱え込むのはよろしくないよ。クラオルが〝主様が自分の命と交換って言い出しそうで怖い〟って言ってたからね」
クラオル鋭い! 頑張ってダメだったら言おうと思ってたけど、その話はクラオルにはしてなかったのに……
ガイ兄の発言でパパ達からピリピリしたオーラが発せられて、私は笑って誤魔化すしかなかった。
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