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9章

衝撃と混乱の

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 ニヴェスに急ぎめで走ってもらって王都を出発して一週間をすぎた。ようやくベヌグまであと半分ほど。

 街には寄ってアーロンさんやブラン団長達とは手紙のやり取りをしているけど、村はスルーさせてもらっている。
 ドナルドさんの情報によると、ガルドさんはベヌグの街の冒険者ギルドで簡単な依頼を受けているらしい。
 アーロンさんや私の名前を出して留まってもらうかという話にもなったんだけど、助けてくれたのに勝手にいなくなった私に会いたくないかもしれないからやめておいた。
 なんて聞こえはいいけど、本当は自分がショックを受けることを言葉にされたくなくて先送りにしたいだけ。
 ちゃんと会えたら嬉しいけど、ダメそうだったら無事を確認してそっとしておこうと思う。
 ただ、私のことをギルドに聞いたことを考えると、ガルドさん達も会いたいと思ってくれてるんじゃないのかな? なんていい方向に想像をしてしまう。

 ネラース達に周りの魔物を狩ってもらっているため、道中で魔物と遭遇はしていない。グレンも〈体が鈍る〉とたまに狩りに出かけていた。
 おかげで魔物のお肉は大量に在庫が増えている。

 私は連日コテージに籠って料理と実験に精を出していた。
 精霊の子に糸車を作ってもらえたのでスニーカーもできたし、炭も大量に作ってもらった。
 もし、ガルドさん達と対面できたときに渡そうとお守りのネックレスも作った。



 お昼ご飯を食べたあと、コテージのキッチンで作業をしているとクラオルに改まって話しかけられた。

『ねぇ、主様。あの人達に会ったとき、ステータス見せるの?』
「ん?」
『前に確認のとき見せたでしょ? 本当に記憶を取り戻したって証明するために見せるのかと思ったんだけど……』

 クラオルに言われるまでステータスのことはスッポリ頭から抜けていた。指摘されて思わずキッチンで野菜を洗っていた手が止まる。

「そう言われるとそうだね」

 私のステータスには見せられないものも多い。鑑定されるならパパ達が隠蔽してくれている情報が表示されるだろうけど、自分で見せるとなったら話は別だ。見せるところを選択しなきゃ混乱させちゃう。
 特に称号の“異世界転生者”なんて見せちゃいけないモノの代表だと思う。

「しばらくステータス見てないし、見せても大丈夫なものとダメなものの確認しないとだね」
『それがいいと思うわ』

 魔物も倒してたからレベルも上がってそう。前に一度確認したときもレベルが高かった。どうなっているんだろうか……

 リビングのソファに座って、深呼吸した後ステータスを開いてみる。

┏【ステータス】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 
【名前】 セナ・エスリル・ルテーナ
【種族】神人(*隠蔽中)
【年齢】5歳
【職業】Cランク冒険者・行商人
【レベル】208(*隠蔽中)
【状態】健康
【ユニークスキル】(*隠蔽中)
 看破
 無限収納インベントリEX
 全言語理解
 特殊隠蔽
 音楽再生
【スキル】(*隠蔽中)
 ・水魔法500・風魔法500・氷魔法488・雷魔法474・光魔法412・闇魔法318・無魔法356・空間魔法452・火魔法250・土魔法250・草魔法250
 ・付与422・鍛冶361・木工491・採掘102・解体250・家事462・直感389・察知354・索敵428・探査322・隠密399・結界427・魔力精密制御439・夜目287・薬学360・錬金術426・身体強化407・意思疎通368・使用魔力減少319・メモリー401・念話408・歌唱398・演奏321・武器術293・武闘術262・自然回復306
【耐性】(*隠蔽中)
状態異常耐性500・精神耐性500・物理攻撃耐性500・魔法攻撃耐性500
【従魔】・ヴァインタミア→クラオル
    ・エキュルスタミア→グレウス
    ・スピーアスパイダー→ポラル
    ・古代龍エンシェントドラゴン(赤龍)→グレン
    ・ザラムパルドゥス→ネラース
    ・グレッチャジャマド→アクラン
    ・不死鳥フェニックス→ルフス
    ・フェーリスウールヴ→ニヴェス
    ・ミノタウローナ→シュティー
    ・サテュロナ→カプリコ
【契約精霊・妖精】・元精霊王→エルミス
         ・元精霊王→プルトン
         ・精霊帝せいれいてい→ウェヌス
         ・ブラウニー→キヒター
【称号】(*隠蔽中)
 ・異世界転生者
 ・パナーテルの愛を受け取りし者
 ・神を土下座させた者
 ・アクエスの愛娘
 ・エアリルの愛娘
 ・イグニスの愛し子
 ・ガイアの愛し子
 ・ヴァインタミア族の英雄ヒーロー
 ・神達に愛されし者
 ・精霊に愛されし者
 ・癒しのマスコット
 ・ラブハンド
 ・天災級魔獣の討伐者
 ・キアーロ国の救世主
 ・女神と呼ばれし者
 ・家族を愛し家族に愛される者
 ・弱き者の味方
 ・魔物大量発生スタンピードダンジョン踏襲者
 ・稀代きだいの発明家
 ・食の伝導者
 ・○☆$!#*?&
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

「な……」
『な?』
「ななななんじゃこりゃあぁぁぁぁ!!!!」

 コテージに私の絶叫が響き渡った。
 まず長い! 称号多すぎ! 最後の文字化けって何なの!? ツッコミどころありすぎでしょ!

《セナちゃん!?》
あるじ!》
〔ゴシュジンサマ〕

 私の叫び声を聞いて各々おのおのコテージ内で過ごしていた精霊達とポラルが駆けつけてくれた。

《大丈夫!?》
《何があった?》
〔ゴシュジンサマ?〕
『問題ないわ』
「ごめん。久しぶりにステータス見たら驚いちゃっただけ」

 私が謝ると、三人とも安心したのか戻っていった。お騒がせして申し訳ない。
 今度は叫ばないように気を引き締めつつ、ちょっとでも落ち着くようにとグレウスをモフモフしながら見てみる。

「ねぇ、クラオル。このステータスおかしいよ?」
『何がおかしいの?』
「まずレベル高すぎ」
『何言ってるのよ。いくつかは知らないけど、主様が倒してきた魔物と魔獣の数と種類考えてみなさい』

 倒した魔物と魔獣……何倒したっけ?
 前回ステータスを見たのはカリダの街で保護されてすぐ。それ以降に倒したのを思い出さなければ。

(まず、ピンクオークでしょ? 次がデカ蜘蛛と子分蜘蛛……あ! ウツボか! あれレイドボスっぽかったもんね。あとはダンジョンか……スライムと……この前の魔物大量発生スタンピードでオークもそうだしボスも特殊っぽかったもんね……)

「あぁ……ちょっと納得したかも」
『主様、すぐ無理して一人で戦おうとするんだから! ワタシ達を頼って欲しいわ!』
「めっちゃ頼ってるし、クラオルとグレウスは私の癒しだよ?」

 今現在ネラース達に狩ってもらってるし、普段私がやってることと言ったらみんなのご飯を作るくらい。
 あれ? むしろみんなに甘えすぎじゃない?

『主様? なにか変なこと考えてない?』
「え? イヤダナー。考えてないよー。さ、他のもちゃんとチェックしないとね」

 ジト目で見てくるクラオルから視線を外して話題を変えさせてもらった。

「ユニークスキルは変わってないし、スキルは……って、えぇ!?」
『今度はなぁに?』
「なんか火魔法と土魔法と草魔法が載ってるんだけど!」
『あぁ、それは神達が主様に加護付けたからよ。やっぱり気付いてなかったのね』
「知らなかったよ……いつの間に……言ってくれればいいのに……」
『ビックリさせたかったみたいよ。そういう意味では成功したわね』
「驚いたなんてもんじゃないよ」

 自分でできるならみんなに頼まなくても自分でできたじゃんか……

『みんな主様の役に立ちたいんだから、全部一人でやっちゃったらワタシ達泣いちゃうわ』
「え!?」
あるじはもうボクいらないですか?』
「そんなワケないでしょ? クラオルもグレウスも離れたら寂しいよ。二人が望むなら……いや。多分っていうか絶対耐えられないからバイバイなんかヤダ」
『ふふっ。嬉しいわ』
『ボクも離れたくないですっ』

 おなかにグリグリと体をこすりつけてくる可愛い二人をモフモフしまくって堪能させてもらう。

 満喫させてもらってからステータスの続きを見ていく。
 スキルはスキルレベルが上がってるくらいっぽい。前の数値を覚えてないから比較できないのが大きい。
(スキルは変なのなさそうだよね。従魔も精霊も。ネラース達の種族名初めて知ったけど、ルフス不死鳥フェニックスだったのか……まぁ、この辺は今さらすぎるから気にしなくてもいいかな? ルフスが不死鳥フェニックスだとすると、ネラース達の種族も特殊っぽくて知るのが怖い……)

「問題は……称号だよね……パパ達の加護が“愛娘”になってるし、イグねぇとガイにぃは“愛し子”だし……可愛がってくれてるのはありがたいしわかるけど、“神達に愛されし者”って内容ダブってない?」
『それだけ神達に気に入られているってことだと思うわ』

 私の何がそんなに気に入ったのかがわからないんだよね。パパ達のスキルのおかげで楽に生活してるし、かなり自己中に動き回ってるのに……あ! 料理かな? 食べたことないもの私が作るから。

「私もパパ達好きだから嬉しいんだけどね。私もいつかちゃんとパパ達の役に立てたらいいな。それまでは料理頑張らないとね!」
『(また主様ったら勘違いして……)』
「って言うか、ラブハンドと癒しのマスコットって何? マスコットってマスコット人形? 愛の手って意味わかんない」
『神達が癒されるって言ってたからじゃない? 手は、主様に撫でられるの気持ちいいからワタシ好きよ?』

 そういえばブラン団長とかも言ってた気がする。お疲れな気分の問題かと思ってたけど、ちゃんと効能があったのか!
 手も……グレンが撫でられるの気に入ったのってこれのせいじゃない?

「女神と呼ばれし者って絶対キヒターのせいじゃんか……発明家とか食の伝導者とか……もうつっこむ気も起きないよ。でも、最後の文字化けが謎すぎる!」
『なにそれ?』
「見る?」
『いいの?』
「もちろん! クラオルとグレウスだからね」

 二人にステータスを全部開示すると、二人とも首を傾げた。
 前のハテナ一色とは違ってこの文字化けは何か意図があるのかな?
 クラオルがガイにぃに聞いてくれたんだけど、「私もわからないけど、そのうちわかるだろうから気にしなくて大丈夫」って言われたらしい。
 そんなんでいいの!? 変なのじゃないよね!?

「とりあえず、他の人に見せるときは名前と年齢だけにしておく……」
『そうね。職業も人によってはランクに触れてきそうだから、それがいいと思うわ』

 野菜を洗っていたことも忘れて、グレンから〈今日のご飯はなんだ!?〉と念話が飛んでくるまで、ソファでクラオルとグレウスをモフモフしていた。

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