転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

文字の大きさ
上 下
217 / 541
9章

ストーリーは突然に

しおりを挟む


 戸惑っている人にコツを教えていると、ドナルドさんが倉庫に飛び込んできた。

「どうしたの?」
「探していた黒煙のパーティがこの国に入ったらしい」
「え!? ホント!?」
「お嬢に似た少女のことを聴き込んでいたらしい。ただ、名前を知らないと言っていて冒険者ギルドが怪しんだため報告が遅れた」
「記憶喪失だったから私の名前知らないんだよね……ねぇ、どこの街?」
「西のベヌグだ。隣国との境界が近い街だ。ただ……リーダーだけで、パーティとしての依頼は受けていないらしい」
「どういうこと?」
「それはわからん……検討したあと念のための報告とのことだ」
「とりあえずありがとう! すぐ出る! リシータさん! あとお願いします!」
「はっ、はい!」

 ドナルドさんがアーロンさんとイペラーさんへ街を出ることを伝えてくれるらしいので、そのままバタバタと街の門を飛び出した。



 ガルドさん達には街から移動しないでもらいたいけど、行動を制限するのは良くない気がして言えなかった。
 ガルドさんだけっていうのはケンカでもしたのかな?
 何かあったなんて悪い方向には考えたくない。

 馬車の中でマップを確認していると、クラオルから話しかけられた。

『ねぇ、主様。大丈夫?』
「大丈夫だよ。どのみちそろそろ王都を出ようと思ってたしね。場所がわかったから急ぎめで行きたいけど、ニヴェス達の疲れもあるから無理は言わないよ」
『ならいいけど……』
〈買い物は良かったのか?〉
「うん。ダンジョンの前にタルゴー商会でいっぱいもらったからね」
〈そうか! ならご飯だな! われはちゃんと洗ってやったぞ!〉

 言われてからお昼をすぎていることに気がついた。
 みんなにリクエストを聞くと、珍しく和食を希望された。
 珍しいなと思いながら、肉じゃがにお味噌汁に焼き魚と和定食風のご飯を作った。魚の骨も気にしないらしいのでニヴェスも同じご飯。

「できたよー! みんながどんぶりじゃない和食食べたいって珍しいね」
『このご飯なら主様も落ち着くでしょ?』
「私?」
『焦ってるの、ワタシ達にはお見通しよ!』

 テーブルの上でビシッと私を指さしたクラオルを撫でる。
 ソワソワしてたのがバレバレだったらしい。みんな揃って心配そうな顔をしていて、そんな表情をさせてしまったんだと思った。

「ごめんね。心配してくれてありがとう」

 気を取り直してお昼ご飯を済ませたら、私はコテージの作業部屋へ。

『主様、今日は何作るの?』
「今日はシュティー達のお守りとスニーカーだよ」
『スニーカーってなーに?』
「靴だよ。こういうブーツとはちょっと違って走りやすいの」
『あら、またその板使うのね』
「うん。これ便利だよね」

 中敷きと同じようにクッション性のあるスニーカーが欲しい。
 靴底はこの板を使えばいいけど、表面の布に悩む。紐はポラルとミスリルカイーコの糸を編み込んで作ればいいけど、魔物の皮を使うと革靴やブーツみたいに糸みたいになっちゃう気がする。

「あ! そういえばダチョウの毛皮ってアルパカみたいだから紡いだら糸みたいになるかな? もしできたらカピバラの毛皮も使えるかもだね」

 糸車が作れないかと書庫でそれらしい記述が載った本を探したけど見つからない。
 プルトンとエルミスに作り方を知らないか聞いてみると、精霊の国にあるから私用に作ってくれることになった。なんなら糸紡ぎまでやってもらえるらしいのでプルトンに頼んでアルパカとカピバラの糸紡ぎもお願いしてしまった。

 スニーカーは糸待ちになっちゃったのでシュティー達のお守りを作り始めた。

「デザインはキヒターと同じでクラオルマークでいいかな?」
『そういえば前に作ってたわね』
「うん。可愛いでしょ? あ! ニコイチってことでクラオルとグレウスにしようかな?」
『ボクもですか? 嬉しいですっ!』

 良かった。嫌がられたらショック受けるところだった。
 スリスリと擦り寄ってくるグレウスが可愛くて、気分良く神銀ミスリルを捏ねていく。
 キヒターは首輪がないからネックレスにしたけど、シュティー達は首輪のカウベルがあるんだよね……

『主様? どうしたの?』
「シュティー達、従魔の首輪あるからどうしようかなって」
『守る結界ならネックレスの方がいいわよ』
「そうなの?」

 クラオルの説明では、魔道具のネックレスを中心に結界が張られるため、指環とかよりはネックレスのほうががないらしい。
 ピアスでもいいらしいけど、シュティー達に丸いメダル状のピアスは牧場の牛の耳に着いているタグを思い出しちゃうからやめておこう。
 ピアスがアリなら鼻輪でも大丈夫そうだとちょびっとだけ思っちゃったのは内緒。

「できた! 思ってたよりも時間経っちゃったね。夜ご飯作らなきゃ」
『調べてたものね』

 ニヴェスに野営地を探してもらって、私はご飯作り。
 夜ご飯はもんじゃ焼きにしよう! グレンとジルはいっぱい食べるだろうからお好み焼きも作ればいいよね! 特にグレンはもんじゃ焼きを食べた気がしないって言いそうだし。
 エルミスとプルトンにも手伝ってもらってザクザクとキャベツを刻んでいく。

「よし! できた! キヒターの教会に飛ぼう!」
『え?』
《馬車はどうするんだ?》
「置いてくよ。プルトン結界お願いしてもいい?」
《はーい!》

 馬車から降りてグレンとジルに飛ぶことを伝えると、二人にも驚かれた。
 ニヴェスは一度影に戻ってもらう。人数が増えると不安だからね。
 まだ夕方だけど、辺りに人の気配がないことを確認してプルトンに厳重に結界を張ってもらったら出発!
 教会目指して飛んで飛んで飛ぶ。

「やっぱ教会に直接は難しいんだね……今度からクラオルの実家経由にしようかな……クラオルの実家なら一発で行けるから」
『主様、大丈夫?』
「うん。プルトンに馬車の結界頼んどいて良かった」

 魔物と戦うよりも転移の方が魔力消費が激しい。この先呪淵じゅえんの森からさらに離れたら、教会に来るのにも一苦労だ。

 私達が教会に着くと、キヒターがパタパタと出てきてくれた。

《女神様! どうしたんですか?》
「みんなでご飯食べようと思って。シュティー達も呼んできてもらえる?」
《わぁー! かしこまりました!》

 キッチンにあるテーブルは私達が全員席に着くには小さいので、パパ達の像の前に私の持っているテーブルセットを出した。

『お嬢様と一緒にご飯なんて嬉しいわ!』
『こんなに幸せでいいのかしら?』
「ふふっ。いいんだよ」

 先に焼いておいたお好み焼きを配って、つまみながらホットプレートでもんじゃ焼きを焼いていく。
 暑くてエルミスに周りを冷やしてもらうように頼んだ。エコなクーラー扱いだけど、快く冷やしてくれた。

〈グチャグチャだぞ? 本当に食べ物なのか?〉
「美味しいんだって。このヘラでこうやって取って食べるの。熱いからヤケドしないように気を付けてね」

 クラオルとグレウスはホットプレートから取りにくいので、お皿に確保してあげる。ポラルはいつも通り器用に糸を使って食べていた。
 シュティーもカプリコも『はふはふ』と熱さに四苦八苦しながらも『美味しいわ!』と食べていく。
 キヒターはやっぱり魔力水の方が好きらしく、グレンはもんじゃ焼きよりもお好み焼きの方が好きらしい。食べた気がしないんだそう。予想通りの反応だった。

 ご飯を食べ終わってからシュティー達にネックレスを渡すと泣かれてしまった。
 『やっぱりお嬢様は他の人族とは違うわ』なんて言っていて、今まで会った人はどんだけひどかったのか……同じ人間として申し訳ない。

「首輪があるけど、お守りだからネックレスにしちゃったんだ」
『本当に……嬉しいわ』
『うんうん。しかも可愛い……』
「気に入ってくれて良かった。身に着けててね」
『『一生の宝物にするわ!』』

 大げさな気がするけど、嬉しそうに握りしめてるからいいかな?
 お礼を言うシュティー達から搾乳したミルクをもらって馬車に戻った。
 帰りはクラオルの実家の経由をしたら行きよりも転移の回数が少なくてすんだんだけど、行きが実家経由じゃなかったからか一発とはいかなかった。

しおりを挟む
感想 1,800

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。

もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです! そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、 精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です! 更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります! 主人公の種族が変わったもしります。 他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。 面白さや文章の良さに等について気になる方は 第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。

山に捨てられた令嬢! 私のスキルは結界なのに、王都がどうなっても、もう知りません!

甘い秋空
恋愛
婚約を破棄されて、山に捨てられました! 私のスキルは結界なので、私を王都の外に出せば、王都は結界が無くなりますよ? もう、どうなっても知りませんから! え? 助けに来たのは・・・

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。