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8章

モフモフ天国の危機【1】

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 一日コテージでまったり休んで、次の日は街で食材を大量購入。あのオジサンに果実水をたるで頼んだら大喜びされた。

 今日は丸一日パン作りに精を出して、山盛りの在庫を作った。
 パン作りが終わった夕方、グレンが上機嫌で宿に戻ってきた。

〈セナ! 見ろ! やっとできたぞ!〉
「ん? できたって何か作ったの?」

 グレンが見せてきたのは目の細かいし器だった。

〈セナが前に欲しがってただろ? だから街の工房で作らせた! あとこれも作らせたぞ!〉
「おぉー! ありがとー! これは何??」
〈これはソーセージを作るやつだ! 前に自分好みのが作りたいと言ってただろ?〉
「わぁー!! ありがとう!」

 グレンの足に抱きついてお礼を言うと、抱っこされた。

〈嬉しいか?〉
「うん! めっちゃ嬉しい!」

 抱っこされたまま聞かれたので、腕を伸ばしてグレンの頭を撫でてあげると満足そうな笑顔になった。

「高かった??」
〈いや、払ってない〉
「えぇ!? 作ってもらったのに払ってないの!?」
〈うむ。われが持っていた素材を渡したらいらんと言われた。むしろ希望があれば他にも作ると言われたぞ〉

 脅したのかとちょっと思っちゃったじゃん……平和的で良かった……

「ちなみに何渡したのか聞いてもいい??」
〈ん? グランドウルフのキバだ。この辺じゃ見当たらないらしくてな。珍しいらしい〉
「グランドウルフはAランクの魔物ですね。高ランクなこともあり、あまり市場には出回っていないと思います」
「そうなんだ」
われがいた山にはそこらへんにいたからな。まさかカケラで驚かれると思わなかった〉

 お金もあるから払っても良かったんだけど、工房の店主に「俺を認めさせたらなんでも作ってやる!」と言われて持っている素材を見せたらしい。
 やたらキバのカケラに食いつかれたらしく、〈それやるから道具を作れ〉と言ったら喜んで作ってくれることになったんだそう。
 グレン……お願いしてる立場なのに偉そう……

〈ソーセージの機械はすぐできたんだが、ザルの細さができなくてな。店主と工房で試行錯誤したんだ〉
「じゃあグレンも作るのに協力したんだね。大切に使うよ! ありがとー!」

 ソーセージの皮はお肉屋さんに売ってるところがあったから、今度買いに行かなくちゃ!
 ちなみに、グレンが店主さんに教えてもらった情報によると、オークの腸を使ったソーセージは美味しいらしい。

◇ ◆ ◇

 朝ご飯のときにイペラーさんに今日は戻らないことを伝えて、街を出た。
 街から離れたところからクラオルの実家目指して転移で飛ぶ。ここからだとキアーロ国に寄るより直接目指した方が近い。

『キキッ!?』
「あれ? やっほー! 久しぶりー!」
『キキーー!!』

 何回か飛ばなきゃいけないと思ってたけど、予想に反して一発で成功した。ガイにぃが私のマップにを付けてくれたおかげかもしれない。

「みんなに私の新しい家族を紹介するね! みんな出てきてくれる?」

 ネラース達も呼んで、集まってくれたクラオルファミリーにみんなを紹介すると、ファミリー達はみんなに元気よく挨拶してくれた。

「今日もお土産があるよ~! 前回と同じくパンにしちゃったけど、大丈夫かな?」
『『『キキーキキキィ!!!』』』
「クラオルさん通訳お願いします」
『嬉しいって喜んでるわ』
「良かった! いっぱい食べてねー!」

 前日に作ったパンを山にして出すと、クラオルファミリーがパンの山に突っ込んで行った。

「セ、セナ様……ヴァインタミアがたくさんいるように見えるのですが……」
「あ、うん。ここ、クラオルファミリーが住んでるところなの。他の人には内緒ね? 捕えられたりとか、ここが荒らされるのはヤダから」
「も、もちろんです! 珍しいヴァインタミアがこんなに生息しているなんて……圧巻ですね」

 木の根元にジルと一緒に座ってファミリー達を眺めていると、グレウスもちゃんと仲良く喋っていて安心した。
 まだちょっとモジモジはしているけど、前みたいな遠慮は見られない。私達と一緒にいて、少し自信がついたのかもしれない。

 ネラース達はちっちゃいサイズでファミリー達とじゃれあっていて、グレンは怖くないことがわかったのかアトラクションみたいにファミリー達によじ登られていた。
 邪険にしたりせず、遊んであげていて微笑ましい。

「ふふっ。可愛い」
「あの、セナ様。これはどうすれば……」

 呼ばれて隣りに座っているジルを見てみると、ファミリーの数匹がフルーツと木の実を持ってきてくれていた。

「ジルにプレゼントだって。ファミリー達が持ってきてくれるのは美味しいから食べてあげて」
「で、では、いただきます…………美味しいですね。ありがとうございます」

 持ってきてくれたファミリー達の一人一人に律儀にお礼を言って、ジルは微笑みながら木の実をつまんでいる。

「私にもくれるの? ありがとう!」

 私がお礼を言うと、次々にファミリー達が私にもフルーツと木の実を持ってきてくれた。
 あっちもコッチもモフモフがいっぱい。
 寄ってきてくれた子のモフモフを堪能させてもらい癒される。
(あぁ~、幸せ)

『ねぇ、主様? ちょっと、主様ったら!』
「ん? クラオルどうしたの?」

 いつの間にか肩に登ってきたクラオルに頬をテシテシと優しく叩かれて我に返った。ボーッとひたすら膝の上の子を撫でていたらしい。

『怪我した子がいるんだけど治してあげて欲しいの』
「もちろん! その子はどこ?」
『こっちよ』

 私が撫でていたからか膝の上で眠っていた子をジルにお願いして、クラオルに案内してもらう。
 怪我をした子は樹上に登れないため、草のツルで編まれた揺りかごのようなものに三人ほど寝かされていた。
 薬草で手当てはされているけど、小さな体に付けられた傷跡が痛々しい。

「辛かったね……もう大丈夫だよ」
『キ……』

 私が頭を撫でてあげると弱々しいものの反応してくれた。
 ヒールをかけてあげると、怪我が治ったからか安心して眠ってしまった。

「この子達を怪我させた魔物はどこにいるの?」
『それがね、なんか森の魔物が強くなってるらしいのよ』
「なにそれ! 詳しく!」

 クラオルがファミリー達から聞いたのは、今までは見かけなかった魔物がファミリー達のところにも現われ始めたということだった。ファミリー達の内容を総合的にみて、全体的に魔物が増えてるんじゃないかとクラオルは考えたらしい。

「よし! それならみんなに手伝ってもらおう! 私だけ行ってもいいけど、それだとグレン辺りに怒られちゃいそうだからね。こんなに可愛いクラオルの家族に怪我させた魔物は許せるワケがないもん」
『休みに来たのにいいの? ワタシだけ行こうかと思ってたんだけど』
「何言ってるの! ファミリーの一大事だよ? 私の癒しを傷つける魔物はやっつけるに限るでしょ」
『主様……ありがとう!』

 早速みんなに集まってもらい説明すると、狩る気満々にうずうずし始めた。
 落ち着かないみんなをなだめ、お昼ご飯を食べてから出発。

 ネラースとニヴェスにマジックバッグを装着して、倒した魔物は近くにいる誰かのマジックバッグに入れてきてねと頼んだ。
 ジルは迷子になったら困るので私と一緒。ポラルは罠を作るらしい。グレンは嬉嬉として飛んで行った。

「さて、私達も行こうか」
「はい」

 魔物の気配を探りながら、ネラース達とは反対方向に歩き出した。

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