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8章

お肉と卵と言えば

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 思いついたご飯の材料を伝えると、レナードさんが早速お城の厨房に伝えに行ってくれた。

「セナはいつあのダンジョンに入るんだ?」
「ん~……まだ決めてないんだよね。深いならまた今度かなぁ……ガルドさん達探したいし」
「ガルド?」
「私を呪淵じゅえんの森で助けてくれた人だよ。アプリークム国にいるらしいんだよね」
「名前がわかってるなら冒険者ギルドに聞けばわかるんじゃないか?」
「!」

 そうか! その手があった! あぁー! 私馬鹿じゃん! いや……今日聞けばガルドさん達の場所を目指していけるじゃん!

「聞いてきてやる」
「ホント!?」
「あぁ。だが、他国の場合詳細は教えてもらえない可能性もある」
「うん! 国内だったらわかるってことでしょ?? 行き当たりばったりよりありがたいよ!」

 ドナルドさんが冒険者ギルドに問い合わせに行ってくれると言うので、ガルドさん達の情報をメモして渡すと、アーノルドさんと同じように窓から飛び立っていった。

『良かったわね。ずっと気にしていたものね』
「うん! これで近付けるかもしれないね!」

 クラオルとグレウスをモフモフしながら話している最中、ジルが何か考えていたことを私は気が付いていなかった。

「セナは何か欲しいものはないのか?」
「うーん。シュグタイルハンはお肉は豊富だけど、野菜とかキノコが少ないよね」
「クククッ。食材か」

 キノコ系はキヒターの教会に行ったときに、キヒターが収穫してくれてたのをもらったからまだあるけど、このままシュグタイルハンで手に入らないのは在庫が心配。

「もしくはお城の書庫で本読みたい」
「ほう。セナは本も読むのか。構わん。許可しよう」
「ありがとう!」
「ただ、オレの国はあまり本を読まないからな……本自体はいっぱいあるが、古い物が多いぞ。オレも何があるのかわかってないからな」
「それは問題ないから大丈夫」

 全言語理解があるから、たぶん古代文字みたいなので書かれていても読めると思う。
 キアーロ国で読んだみたいな食べ物系の本があったら嬉しいな。


 アーロンさんとリシクさんと話していると、レナードさんが戻ってきた。

「セナ様、一口ひとくちコンロと鍋はこちらでもよろしいでしょうか?」
「うん! ありがとうございます」
「いえいえ。陛下がワガママを言って申し訳ございません」
「大丈夫だよ。無理だったらちゃんと拒否るから」

 レナードさんと話しながら確認してから、他の食材を見に行くことにした。
 


 お城の厨房に着くと、グレンがおなかいっぱいまで食べても余りそうな量の食材に少し顔が引きつってしまった。

「足りますでしょうか?」
「私達の分だけなら余裕だと思う」
「料理人にも手伝うように言ってありますので、指示をお願い致します。セナ様はこちらの踏み台をお使いください」
「はーい。ありがとう」

 この山のような食材を切るのは一苦労なので、遠慮なく手伝ってもらっちゃおう!
 料理人の人達には鍋用の野菜のカットをお願いして、私はジルに手伝ってもらって今回のかなめのタレ作り。
 料理人さん達は日頃から慣れているのか、ものすごい速さで野菜をカットしてくれていた。
 お肉は風魔法を使ってカットしていくけど、あまりの量に気が遠くなりそう。猛烈に業務用のお肉スライサーが欲しくなった。こういう時のために精霊の子達にお願いしちゃおうかな。

 準備が終わる頃にはアーノルドさん達も戻ってきて、今か今かとアーロンさんが厨房を覗いている。
 食堂だと注目を集めそうだから執務室で食べたかったけど、料理人さん達に手伝ってもらったため「どんな料理か見たい」と言う料理人さん達のお願いを断れなかった。

 料理人さん達が見守る中、セッティングを終えたテーブルの前で、今回の料理の説明を始める。

「今回はすき焼きだよ。自分の前に置いてある鍋で自分用のを作ってもらいます」
「ほう。面白いな」
「コンロに火をつけて下さい。そしたらこの黄色い脂の塊を溶かしてお肉焼いてね」

 アーロンさん達の様子を見ながら説明を続け、割り下を投入すると食堂全体にすき焼きの香りが広がっていく。

「好きな具合に煮えたらお皿に入れてある卵につけて食べてね。味が濃いめだからパンも進むと思うよ。卵が足りなかったら真ん中のボウルから使う分だけ取って、お肉の追加は焼けないからそのまま煮てね」

 アーロンさんが食べ始めたのを確認してから、私も席に着いてすき焼きを作り始める。
 今回は私が食べ慣れている関東風。そのうち関西風も食べてみたい。
 豆腐がないから関西風ではお馴染みらしい白菜を多く入れ、しらたきの代わりに細切りにした緑色のコンニャク。糸こんにゃくほど細くは切れなかったけど、その辺はご愛嬌ってことで。
 煮込んでいると、これはすき焼きモドキだなと思った。見た目があんまり美味しそうじゃないんだもん。豆腐の白って大事ね。
 まぁ、多分みんな食べたことないだろうから大丈夫だと思う。割り下には醤油使うしね。
 見守っていた料理人さん達が味見をしたいらしく、鍋三つ分くらいの割り下を分けてあげた。厨房に戻って作ってみるらしい。
 後ろから兵士さん達からの視線を感じるけど、今回使ったショユの実は私の持ち物から出したから兵士さん達の分まで作ってない。

〈熱いが美味い! これはまた食べたいな!〉
「これはご飯が合うんだけど、グレンとジルはご飯で食べる?」
〈食べる!〉

 二人にご飯を出して、アーロンさん達に何か言われないかと様子を窺うと、私達なんて気にも止めずすき焼きをがっついていた。お皿に乗ったお肉も野菜もどんどん減っていて、料理人の人が追加のお皿を運んできていた。
 自分用の鍋だから自分のペースで食べられるのはいいね。グレンはいつも通りだけど、ジルはいつもより食べやすいらしく一定のペースで食べている。

『ちょっと甘さもあるのね』
『はい。でも、卵でまろやかになってちょうどいいです』

 クラオルとグレウスも気に入ってくれたらしく、一安心。
 私は久しぶりのすき焼きを味わって食べていく。豆腐や春菊がないのが残念だけど、代わりに入れた白菜が物足りなさを緩和してくれていた。
 私が満腹になった後もアーロンさん達は食べ続けていて、その体のどこに入っているのか不思議でしょうがない。

 結局、アーロンさん達が食べ終わった頃には私達が宿に戻る時間を過ぎていたため、また明日会う約束をしてから馬車で宿まで送ってもらった。

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