転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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7章

突撃ダンジョン【4】

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 散々走り回ったからか、みんな疲れて爆睡。
 起き上がった目線の先に階段があってちょっと萎えた。
 いや、いいんだよ。ただ、今日は走り回りたくない。私達でこんなに苦労したなら、他の冒険者は厳しいんじゃないかな? 精霊二人とドラゴンがいる時点でだいぶチートだと思うもん。
 まぁ、今回はかなり特殊なパターンで魔物大量発生スタンピードのせいってことが、クラオルがガイにぃに聞いてくれて判明したから大丈夫だとは思うけど。
 私達がこのダンジョンを制覇したら、出てくる魔物も、ボスも、マップも、全部変わるというか元に戻るらしい。



 十七階層は洞窟型ダンジョンに戻った。
 出てくる敵はオークと三十センチほどのアルマジロ。グレンが言っていた通常のアルマジロがこれらしい。
 ネラース達はボスとの戦いでわかったのか、転がってくるアルマジロの前に魔法で壁を作って勢いを止めて狩っていく。
 オークにいたっては面倒になったのか、現れたらすぐに魔法で切り刻まれていた。

「岩山型より洞窟の方が楽でいいね」
「そうですね。岩が転がってこないので気が楽です。あの……セナ様……」
「ん? どうしたの?」

 ジルベルト君の方へ顔を向けると、モジモジと発言しようとくちを開いては閉じてを繰り返している。
 そんなに言いにくいことなんだろうか。

「…………あのっ、その……」
「ゆっくりで大丈夫だよ?」
「あ、ありがとうございます。……あの、また……ジルと呼んでいただけますか?」
「へ?」

 何を言われるんだろうかとドキドキしていたのに、予想外のことを言われて間抜けな声が出てしまった。

「申し訳ございません! セナ様がお嫌でしたらいいのです!」
「いや、違う違う! ごめん、ごめん。ダンジョンを攻略したら離れたいとか、人任せにしないで働けって言われるのかと思ったの」
「僕がセナ様から離れたいなんて有り得ません! それにセナ様は一番働いておられるではありませんか」

 いや、御者もジルベルト君に任せっぱなしだし、今現在ネラース達に狩りを丸投げ状態なんだけど……
 「セナ様にジルと呼んでいただけたのが嬉しかったのです……」と、頬をピンク色に染めてハニカミながら言う姿は、ショタ好きにはたまらない可愛さだった。可愛いの爆発だよ!
 世の中のショタ推しの気持ちが少しわかった気がする。

「そっかー。じゃあ、今度からジルって呼んでもいいの?」
「はいっ! もちろんですっ!」

 パァァっと花が咲きほころぶような笑顔を浮かべて喜ぶジルベルト君に、私も笑顔がこぼれる。
 “笑顔が満開”なんて頭の中で造語を作ってしまうくらい、ジルベルト君……ジルは本当に嬉しそう。
 脳内ではすでに頻繁に呼んでいたから、もう少し早く呼んであげればよかったな~と思った。



 岩山型ダンジョンでは時間がかかったけど、洞窟ダンジョンはさくさくと進んでいく。
 ネラース達が見つけてくれる宝箱もちゃんと回収。

 二十一階層はまたもやボス部屋だった。

「次は変なのじゃないといいねー」
『そうねぇ……』
〈少しは骨があるやつだといいな!〉

 骨がありすぎると大変だよ?と思いながら扉を開けると、そこにいたのは運動会の大玉転がしのようなたずさえた……巨大なフンコロガシだった。

「またー!? もう玉は嫌ー!」

 昨日のアルマジロ同様にまたも走って避ける。
 アルマジロとは違い、フンコロガシは器用にフンを転がしている途中で方向転換をしてくる。
 アルマジロは当たれば弾き飛ばされる……言わば物理攻撃だけど、フンコロガシはさらにフンまみれになるかもしれない。そんな精神攻撃はごめんこうむりたい。
 アルマジロほどスピードはないので、当たらないように避けて避けて避ける。

 ネラースが風魔法を放つと、フンが削られて舞った。
 エルミスに助けを求めて抱っこしてもらい、上から氷のつららで動きを制限していく。
 〈われに任せろ〉とグレンが巨大な火の玉を上からフンコロガシに向かって投げつけると、当たった瞬間に大爆発!
 フンが飛んでくる! と、身を固くしてエルミスにしがみついていると、プルトンが咄嗟に結界を全員に張ってくれてフンまみれにならずに済んだ。

 フンコロガシの宝箱の中身は五センチ大のフンが箱いっぱいに入っていた。
 プルトンが言うには、このフンを砕いて畑に撒くと成長がよくなるのと、燃やすと魔物避けになるんだそう。

 みんなに【クリーン】を何回もかけてから、二十二階層へ降りた。

 二十二階層もボス部屋。
 もうマジで追いかけ回される系はご勘弁願いたいと思いながら扉を開けると、ここへきてオークの大群だった。
 結果は、圧勝。蹂躙と言っても過言ではないくらいだった。

 二十三階層も二十四階層もボス部屋。
 この二つのボス部屋は、オークソルジャーとオークコマンダ。
 ソルジャー部隊をコマンダが指揮していた。

 二十五階層もボス部屋だった。
 扉を開けるとまたオークの大群。

「また? これいつまで続くの?」
『いい加減飽きてくるわね』
〈オークアドミラルがいるな。だんだん強くはなっているが……〉

 会話をしながらも魔法で攻撃していく。ネラース達は巨大サイズになって、魔法を使いながら物理攻撃を繰り出していた。
 走り回るのも嫌だけど、こうオークばっかなのも嫌。ワガママかもしれないけど、もっとダンジョンを楽しみたい。
 狩り終わり、続き部屋に入ると階段があってため息がこぼれてしまった。

 二十六階層も案の定ボス部屋。
 今回は今まで出てきたオークにプラスして、オークジェネラルや黒・青・赤と色違いのオークも混じっていた。
 最早オーク軍隊。おそらく数は200を超えていると思う。
 ジェネラルが大きく一際目立っているけど、高みの見物のように動かない。大将の名は伊達ではないらしい。

「ねぇ、クラオル。実験してもいいかな?」
『え?』
「飽きてきちゃったから、今まで作った毒薬試してもいい?」
『ハァ……んもう、主様ったら……いいわ。思う存分やっちゃって』

 呆れているような表情と声だけど、クラオルから許可が下りた!
 これにはグレウスの協力が必要。ニヴェスでも大丈夫なんだけど、ニヴェスはバシバシとオークを吹き飛ばしている。
 グレウスに足止めを頼んで、エルミスにオークの上まで運んでもらうと、どこからか闇魔法が飛んできた。
 魔法を使えるオークがいたらしい。

 グレウスと念話でタイミングを合わせて、転んだオーク達に作った劇薬を振りかける。ちゃんとみんなに被害が出ないように風魔法で調節しながら、麻痺毒・糜爛びらん毒・猛毒・幻惑毒と、かけたところでエルミスに止められた。
 オークを見てみると、統率が取れなくなっていて混乱状態。
 うん。やりすぎたっぽい。私は決してマッドサイエンティストではない。

「うわー……やっぱ封印だね」
《うむ。だが、必要になるときもあるかもしれん。持っていて損はないと思うぞ。とりあえず、こやつらの声が耳障りだ。片付けてしまおう》

 念話を飛ばして、みんなで一斉に魔法を叩きつける。何回か繰り返し、さほど時間をかけずに終わらせた。

 念のためにみんなを鑑定して、毒とケガの有無を確認。
 みんなにドン引きされてたらどうしようかと思ってたけど、ネラース達は『なんでも作れちゃうご主人様はすごい!』となんとも都合のいい解釈をしてくれて、他のみんなはむしろ私が毒に侵されていないか心配してくれた。
 引かれてなくてよかった……

 オークジェネラルの宝箱は、ジェネラルの肉・身体強化の指輪・闇魔法強化、水魔法強化、火魔法強化のブレスレット・大量の黒真珠ブラックパールだった。

 続き部屋へ入ると、階段がない!
 やっとクリアできたらしい!

「やったー! 終わったー!」
『ここ、なにか変ですなの』

 私がバンザイをする勢いで喜んでいると、アクランが壁をカリカリしていた。

《こっちにもなにかあるわよ~》

 プルトンが反対側の壁に何かを発見した。
 他にもあるんじゃないかと調べてみると、東西南北の四ヶ所に小さな魔石のようなものが埋まっていた。
 ダンジョンコアではないらしい。
 試しに四ヶ所同時に魔力を込めてみると、中央に階段が現れた。

「え!? まさかまだ下があるの!?」
「いえ、通常の階段ではないようです」

 階段の先は真っ暗で何も見えない。
 【ライト】を付けて恐る恐る階段を降りていくと、床は石畳になっていた。
 全員が階段を降りきると、ボボボボッと通路脇にあった燭台に勝手に火がついていく。

「な、なに?」
「神殿のようですね……」

 燭台に火がついて全体的に明るくなり、周りが見えるようになった。
 石畳の地面に、石の壁。道の先は開けていて、ど真ん中に宝箱が鎮座していた。
 ビクビクしながら進み、宝箱に罠がないかを確認して開けてみると、十センチ大の白く艷めく玉と、五センチ大の十六面ダイスのような形の透き通った水色の石にチェーンが付いたものが入っていた。
 チェーンは輪になっておらず、ネックレスではないっぽい。

〈ほう! 珍しいな〉
《セナちゃんすごいわ!》

 鑑定してみると……【浄化玉】と【水源見っけ】。
 【浄化玉】は、どんな泥水や汚染された水でも浄化してキレイな水に変える玉。
 【水源見っけ】は魔道具で、魔力を流すと振り子のように動いて近くの水源を見つけられるらしい。一種のダウジングみたい。
 使う日がくるかはわからないけど、いただいておこう。

 私達が全員階段を登りきると、隠し階段は消えてしまった。
 ダンジョンをクリアしたので、転移魔法陣を起動してダンジョンの入り口まで戻る。
 外に出ると、既に日が暮れていた。

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