転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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7章

生命の源

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 朝早く、冒険者でごった返す前に冒険者ギルドの掲示板の前へ。
 うん、やっぱりあった。井戸掃除。そしてこの黄ばみ具合を見ると、しばらく受けられてないこともわかる。

「常設依頼だけど、一応声かけてこうか」

 私達がカウンターに近付くと、ちょうど二階からギルマスが下りてきた。
 私が井戸掃除をすると言うと、ギルマスに「セナ様にそんなことさせられません!」って言われたけど、誰も受けてないから依頼書がこんなに黄ばんでるんだと思うの。
 街の井戸の数の多さと報酬の少なさが原因かな? 井戸ひとつにつき銀貨一枚ってありえないでしょ。キレイな井戸ならいざ知らず、汚くても値段が変わらないんじゃ、そりゃあ受けたくないよね!



 昨日ポラルに協力してもらって、グレンとジルベルト君と私の防水のオーバーオール風パンツ作って準備はバッチリ!
 靴も一体化仕様だから「レインブーツの中に水がー!」なんてことにはならないぜ! まぁ、パパ作のブーツは別として、そもそもレインブーツを持ってないんだけどね。

 一番最初はやっぱり私達が泊まっている宿の井戸だよね!
 私達が部屋で着替えて下に降りると、ラゴーネさんに驚かれた。優しい人には優しさを返したくなるから頑張るよ。
 井戸に案内してもらって井戸の中に降りると細い川が流れていて、降りた場所は広いけど、川沿いに洞窟のようになっていた。街の井戸が全部繋がっているらしい。

「なんだぁ。地図で井戸の場所調べてたけど、繋がってたんだねー。しかも地上はカラッカラなのに水量そこそこあるし」
《本流から支流を作ったようだな》
「なるほど」

 本流はたぶん領主のところだろうなー。

「それにしても汚いねー。水自体はキレイなのに、水の中も土っていうかヘドロこびり付いてるし」
「セナ様、本流の方から掃除した方がよろしいかと思います」
「そうだね。ここ掃除しても本流から汚れが流れてきちゃうかもしれないもんね」

 エルミスに水の流れを見てもらい、本流への近道を教えてもらう。エルミスが言うには支流に支流で、ただ上流に向かうのじゃ大回りになるらしい。

《着いた》
「うわぁ……きったねぇ……あげくに超くせぇ」

 思わずくちが悪くなってしまうくらい、壁も地面もヘドロがこびり付いて悪臭を放っている。
 宿の井戸のところが一番マシだったことを考えると、ラゴーネさんが定期的に掃除をしていたんだと思う。それでも汚かったけど……

〈鼻がバカになりそうだ……〉
「これはキツいですね……」

 グレンもジルベルト君も鼻をつまんでいるのににおいで顔色が悪い。
 悪臭が取れるように辺り一帯【クリーン】をかけると、少しマシになった。普通の【クリーン】では汚れは落ち切らないらしい。
 においを遮断するようにと願いを込めて結界を張ると、普通に呼吸ができるくらいのにおいに落ち着いて、全員が息を吐いた。

〈はぁ……助かった〉
「ありがとうございます」
「廃教会直すときもクリーンでキレイになったのに、汚れ落ちないとかヤバすぎでしょ」

 ギルマスとラゴーネさんに貸してもらった掃除道具で汚れを落としていく。川には流せないためアイテムバッグにバケツ入れて、バケツ取り出すを繰り返すハメになった。
 付き合わせちゃってるグレンとジルベルト君に申し訳なさすぎる!

 この重労働で銀貨一枚とか絶対ナメてる。今日の夜ご飯のあとは思いっきりデザート堪能してやる!

『ねぇ、主様。主様の【浄化】でキレイにならないのかしら?』
「その手があった!」
『主様! あの聖泉みたいにしちゃダメよ!』
「へ?」
『あんなにキレイになったら目立っちゃうでしょ? (本当は効能的にマズイんだけど)』
「そっか、そうだね。ココがキレイになるくらいだね」

 んー……ヘドロが落ちて、川底に溜まってる土が全部流れていく感じ!

「〈『『』』〉」

 みんなの声が聞こえて閉じていた目を開けると、先程までのヘドロがキレイになくなっていた。川底の泥も流れたのかなくなっていて、なにより。

「おぉ! これなら楽チンだね! ちゃっちゃとやっちゃおう!」

 井戸の中を歩き回って【浄化】をかけまくり、宿の井戸まで戻ってきた。
 ここは今までのにプラスして、汚れが付きにくくなったらいいなーと、【浄化】をかけて依頼は完了だ。

「ふぅ。お疲れ様ー! みんな付き合ってくれてありがとう!」

 みんなにお礼を言って井戸を登ると、ラゴーネさんが待っていてくれた。

「申し訳ございません」
「なんでラゴーネさんが謝るの?」
「セナ様を利用するつもりはなかったのです……」
「なんのこと? 私はギルドで依頼を受けただけだよ」
「セナ様…………ありがとうございます」
「ふふっ。変なラゴーネさん」

 ラゴーネさんが気にしているのは昨日男性と話し込んでいた内容だろう。

 プルトン情報では、来ていた男性は領主の使用人。私がキアーロ国を救ったと聞いたその男性が、“街の水質改善をするようにラゴーネさんから私に口添くちぞえをしろ”って内容を言いに来ていたんだけど……ラゴーネさんは「お客様にそのようなことは言えません」と、かたくなに断っていた。――ここで重要なのは、この男性は領主からの命令を受けていたワケではない。つまり、使用人の暴走。

 水質改善ということは井戸だろうなと、ギルドで依頼を受けたんだよね。
 水は生きるのに必要不可欠だから、優しいラゴーネさんが困ったら嫌だなって思って受けたんだけど……ラゴーネさんは断っていてくれたし、すっとぼけるに限る!

 宿を出て、ギルドに報告に行こうと歩き出すと、ジルベルト君に腕を引かれた。

「セナ様、顔色があまり良くありませんが、具合が悪いのですか?」
「ん? なんともないから大丈夫だよ?」

 実際なんともないのにグレンに抱っこされて冒険者ギルドに着くと、ギルマスに出迎えられそのまま応接室に案内された。
 謝り通しのギルマスにソファに座ってもらい、井戸の清掃が完了したことを伝える。

「ただ、今のままだと受けてもらえないと思います」
「はい……」
「純粋に報酬を上げるとか……街のみんなが使うものなんだから、月に一度とかでも全員参加の清掃の日を設けるとか……冒険者ギルドのペナルティとして、従事させるとか……色々方法はあると思うんです」
「なるほど……領主様にその内容を進言してもよろしいでしょうか?」
「ギルマスが進言するのなら構いません」

 むしろ、自分の領地なんだからしっかりしなさい!って怒ってもいいと思うんだよね。水は生命いのちの源だと思うの。

 ギルマスは報酬を上乗せしてくれようとしたんだけど、依頼書に明記されているのを了承して受けたからと遠慮しておいた。
 昨日頼んでおいた解体した肉と毛皮、報酬を受け取ってソファから立ち上がると、立ちくらみのように一瞬フラッとしてしまい、ただでさえ心配してくれていたみんなに余計に心配されてしまった。

 グレンに抱っこされて宿まで戻る途中、温もりと心地よい振動でウトウトしてきてしまう。
 おなかは減っているのに睡魔には勝てず、そのまま眠ってしまった。

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