165 / 538
7章
八つ当たり討伐
しおりを挟むいつものようにクラオル達に起こしてもらって起き上がると、グレンとジルベルト君が左右で寝ていた。
昨日の夜ピリピリしていた二人に挟まれて眠ったんだけど、二人共他のベッドに移動しなかったらしい。
ま、ベッド広いからいいんだけどね!
◇
グレンが街の外に出たいと言うので、ついでに依頼を受けようと冒険者ギルドの掲示板を見にきた。
「うーん。ダンジョン系が多いねぇ……」
〈これはどうだ?〉
「バガンタールの間引き討伐?」
「バガンタールは土中に穴を掘って巣を作っている魔物です。放っておくと穴だらけになるため、定期的な間引きが推奨されています。食肉で、毛皮は良質です」
さすがジルベルト君! わかりやすい説明に大助かりだよ! そしてこの依頼をグレンが選んだ理由もわかったよー!
「ランクも大丈夫だね。ジルベルト君もこれでいい?」
「はい。大丈夫です」
受け付けで依頼を受けて、教えてもらった生息地へ向かう。
◇
着いた先は、地面を見て歩かないと足が穴に落ちそうなくらい穴だらけだった。馬車で通ったらガタガタなんてもんじゃなく、ガッタンガタンで運が悪ければ脱輪、もしくは車輪が破損しちゃいそう。
「それらしき生き物は見当たらないけど、気配はいっぱいだねぇー」
〈セナの料理が楽しみだ!〉
「ふふっ。食べる気満々だね」
ジルベルト君もいつになくやる気を出していて、ジルベルト君まで肉食になったのかな?と、少し心配になる。健康のために野菜も食べてもらいたい。
土の中のバガンタールをどうやって狩ろうかと考えていると、クラオルが『ネラース達を呼べばいい』と教えてくれたので影から出てきてもらった。
「今日はバガンタールを狩って欲しいんだけど、毛皮と肉を確保したいからあんまり傷付けないで欲しいの。お願いできるかな?」
『『『『はいっ!』』』』
しっぽをブンブン振りながら、元気よく返事をしてくれる姿は可愛すぎる!
『おびき出すっち!』とルフスが言うなりドドン!と火柱を地面に撃ち込むと、そこらじゅうからピー! ピー!とホイッスルのような笛の音が聞こえてきた。この笛の音がバガンタールの鳴き声らしい。
慌てた様子で穴から出てきたバガンタールをネラース達は小さいサイズのまま狩っていく。
グレンとジルベルト君も負けじと狩り始め、私はあぶれたバガンタールを狩るだけ。
バガンタールはマーモットに似ている魔物で、茶色い毛皮はうさぎのようにふわふわしていた。
ルフスがおびき出し、みんなで狩るを繰り返して、ここらへん一帯のバガンタールを狩り尽くすと、バガンタールは300匹以上にも上った。
穴ぼこだらけは危険なので、グレウスに頼んで直してもらう。
ネラース達は手加減をちゃんと覚えたらしく打撃攻撃で仕留めてくれていて、毛皮にも傷は見当たらなかった。
「お昼ご飯にしたいけど、むき出しの地面だと土埃がすごいね」
《結界張れば大丈夫!》
ピクニック気分でサンドイッチを食べて休憩していると、グレンからシャーベットのリクエストがきた。
『主様、ワタシも欲しいわ』
「あれ? クラオルとグレウスも暑い?」
《草があまり生えてないのと、日陰もあまりないからな。主よ、儂も所望する》
私はパパ達が作ってくれた服を着ているから温度変化がわからなかったらしい。
春の季節の大陸とはいえ、熱中症になったら大変!
とりあえず闇魔法で日陰を作り、ネラース達にもシャーベットを出してあげると『美味しい! 美味しい!』と一心不乱に食べていた。
大きなパラソルでも作ってあげよう。
グレンもジルベルト君もまだ戦いたいらしいので、魔物を探してうろちょろ。
ルフスが空から見つけてきてくれたのは、さっきのマーモット……バガンタールよりも大きく、日本の豚サイズの灰色のマーモットだった。
「あれはドリルバガンタールですね。先程のバガンタールの上位種と言われており、額の角で攻撃してきます。食肉、毛皮、角が素材のはずです」
いつもわかりやすい説明ありがとう!
私も図鑑を見て覚えているはずなんだけど、記憶を探る前に教えてもらえるのはとても助かる。
気配を探った感じでは、数はそこまでいない。
先程と同じく、ルフスがおびき出したのを狩っていく。
〈おぉ! そのデカさは食べ応えがありそうだな! ジルベルト! 目を潰せ!〉
「ハッ!」
ボスらしき二倍ほどの体格のドリルバガンタールが現れてグレンが喜んでいる。
ジルベルト君が弓でそのボスの目を射ると同時にグレンが突っ込んでいき、殴り飛ばした。
〈ふぅ。ようやく少しスッキリしたな〉
「そうですね。昨日のことは忘れられませんが、少しだけ溜飲が下がりました」
なんと昨日の女の子への怒りで狩っていたらしい。
えぇ……完全に八つ当たりじゃん……
回収したドリルバガンタールは20匹ほどだった。
ネラースに乗せてもらい、街に近付くまでトテトテと歩くネラースのモフモフを堪能させてもらった。
ネラース達には影に入ってもらい、冒険者ギルドに入るとギルマスに迎えられて、昨日と違う倉庫に案内してもらう。
ギルマスの話しでは、肉と毛皮以外にも爪や魔石なども買い取ってくれるらしい。
狩ってきたバガンタールを倉庫に出すと量に驚かれ、間引き討伐で数量分の報酬を払うと全部の買い取りは難しいと言われてしまった。
お肉全部と毛皮半分は確保しておきたいから、それ以外を買い取ってもらえないかと交渉してみると、むしろ助かると返された。
ドリルバガンタールの方は、一匹分だけ買い取ってくれるらしい。
明日のお昼までに解体しておくから、また明日来てもらいたいと告げられた。
無限収納で解体したら楽なんだけど、一瞬にして解体しちゃったら怪しまれるから大人しく明日取りにこよう。
昨日渡した素材の代金を受け取り宿に戻ると、ラゴーネさんが知らない人と話し込んでいた。
「申し訳ございません。おかえりなさいませ」
「ただいま! どうしたの?」
「いえいえ! ご心配おかけして申し訳ございません」
ラゴーネさんは言いたくないみたいなので、ひとまず鍵を受け取って部屋に戻り、プルトンに様子を探ってきてもらうように頼んだ。
お風呂に順番に入ってスッキリした頃、プルトンが戻ってきて何があったのか教えてくれた。
「そっかぁ。ラゴーネさんは優しいね」
〈やるのか?〉
「そうだね。それくらいなら手伝ってあげようよ。たぶんギルドに張り出されてると思うし」
〈仕方ないな〉
宿の案内の紙に描かれていた街の地図を見ながら、相談していると夜ご飯が運ばれてきたので中断してご飯を食べる。
今日は炒めものとサイコロステーキだったんだけど、ステーキの横に付いているジャーマンポテトみたいなものがすごく美味しかった!
654
お気に入りに追加
24,648
あなたにおすすめの小説
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。