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7章

砦の街ミカニア

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 門番さん達に見送ってもらい、国境の門から見えていたミカニアの街に向かうと、要塞と言えばいいのか砦と言えばいいのか……ゴツくて頑丈一辺倒な雰囲気の街だった。街と言うよりもひとつの建物みたい。

「なんか、物々しい感じだね。威圧感をヒシヒシと感じるんだけど……」
〈ここは国境が近いからな。今はもう戦争が終わって久しいが、昔国が落ちないようにと、こんな作りにしたんだろ〉
「なるほど。シュグタイルハンは各街こんな感じなの?」
われも詳しくは知らん〉

 グレンが行ったことのある街はどこなんだろ? いつか行けたらグレンも嬉しいかな?

 街に入るための列に並んでいると「シュグタイルハン国は騎士団のこと兵士と呼んでいるんだよ」と近くにいたおじさんが教えてくれた。
 街の門で再びギルドカードを見せると、またもや警備の人達に敬礼されてしまい、宿の手配までやってくれた。

 街の中は思っていたよりもゴツくなくて、上にはちゃんと空が見えた。城壁のように囲われていただけらしい。
 ただ、街の中心には外から見た壁と同じ材質だと思われるどデカい塔が立っていて、そこは街の避難所なんじゃないかと思う。戦争があったときなら籠城できる場所ってところだろう。
 一番の問題は道が入り組んでいて迷子になりそうなことだった。

 手配してもらった宿にマップを見ながら辿り着くと、街の中では高級な部類に入る宿だった。
 私の好みを知っているのか、ザ・お金持ちが泊まる宿ではなく、中流階級の中でも品の良さそうな宿。
 出迎えてくれたのは所作のキレイな品のいい優しそうなおじさんだった。
 宿の名前は“宿り木亭”。おじさんは支配人でラゴーネという名前らしい。

「ようこそおいで下さいました。皆様のお部屋はこちらでございます」
「わぁ~! ひろーい!」
「こちらリビングルームです。右側に見えます扉はベッドルームとなっており、ベッドルームからはお風呂へ入れます。朝食と夕食はお部屋へお持ちいたしますが何かご用がございましたら、このベルでお呼び下さいませ」
「はーい! ありがとうございます!」

 私がお礼を言うと、微笑みながらもしっかりとお辞儀をしておじさんは戻って行った。
 部屋はキアーロ国の王都の宿屋“渡り鳥”よりも広く、使われている家具も高級だけど落ち着く雰囲気だった。

《セナちゃーん! 魔法の痕跡もないから安心よ!》

 いつの間にかプルトンが部屋を調べていてくれたらしい。

「セナ様、マッサージもあるようです。お疲れでしたら、お受けになられますか?」

 ジルベルト君がリビングのテーブルの上にあった紙を見ながら教えてくれた。
 ジルベルト君の隣りに座って紙を覗き込むと、ルームサービス、マッサージ、買い物代行、武器屋・防具屋・商会への紹介までやってもらえるらしい。ちなみに紹介料は無料。日本の旅館やホテルよりもサービスがいい気がする。

「すごいサービスだね……私は疲れてないからマッサージはいらないけど、ジルベルト君はずっと御者してくれてたからマッサージ受ける? グレンは……ってあれ?」
〈セナ! 宿にしては風呂が広いぞ!〉

 どこに行ったかと思っていたら部屋を見て回っていたらしいグレンが、テンション高めにリビングに戻ってきた。

「グレンはマッサージ受けてみる?」
〈ん? マッサージか……面白そうだ!〉
「ジルベルト君も受けてみない?」
「いえ、僕は〈そうだな! いい機会だ!〉」

 断りそうな雰囲気をかもし出していたジルベルト君に、グレンがかぶせ、強制的に参加することに決まった。
 嫌だったら可哀想だから念の為聞いてみると、嫌なワケではなく私が受けないと言ったから遠慮しただけらしい。それならぜひ癒されてきて欲しい。


 冒険者ギルドが夕方の報告で混む前に、シュグタイルハン国の王様であるアーロンさん手紙を出しに行くことになった。
 冒険者ギルドでギルドカードを提示するとギルマスが現れ、すぐに応接室に案内されてしまった。
 お手紙出しに来ただけなんだけど……

「ようこそおいで下さいました。シュグタイルハン国はセナ様を歓迎致します」
「どうも……」
「本日はアーロン様へのお手紙だと伺っておりますが……もしムレナバイパーサーペントの素材が余っておりましたら、ぜひ売っていただきたいのです」
「あぁー、なるほど。いいですよ」

 あのウツボの素材は隣の国でも求められるのか。余ってるから全然いいんだけどね!
 なんでも、この街の近くに中ランクのダンジョンがあるらしく、武器と防具の素材が常に足りない状態なんだそう。
 さすがダンジョンの国! 今回は私が惹かれる素材はないらしいので、入らないけど。
 手紙を送ってもらい、前回のピリクの街同様に素材をひと通り出して欲しい素材を教えて欲しいと伝えると、ギルマスの目がキラリと光った気がした。

「商業ギルドも呼んでも構いませんでしょうか?」
「大丈夫ですよ。そしたらマザーデススパイダーの素材も出しましょうか?」
「なんですって!? ぜひともお願い致します!」

 鼻息荒く返されて、ビクッと体が反応してしまった。
 アーロンさんからウツボの連絡はきていたけど、クモについては通達されていなかったらしい。
 クモの素材も出すと、紅茶を淹れてくれた中学生くらいの女の子まで「キャー! すごい!」と飛び上がって喜んでいた。

「素晴らしい素材の数々です! 明日の午後以降の都合のいいお日にちで構いませんので、お越しいただいてもよろしいでしょうか? あ! 時間停止機能の付いたマジックバッグに保管致しますので、劣化の心配は無用です!!」
「ええっと……はい。わかりました」

 早口でまくし立てるギルマスに圧され、勢いのまま了承してしまった。
 テンションの高い二人に見送られて冒険者ギルドを出ると、街はおなかが空く匂いで溢れていた。
 ちょうど夕飯の時間らしく、ご飯どころはどこも賑わっていた。


 宿に戻るとすぐにラゴーネさんが夜ご飯を運んでくれ、待つことなく夜ご飯にありつけた。
 夜ご飯は、縁日の屋台で売っているフランクフルトみたいなどデカいソーセージのスープ、ウィンナーの炒め物、みんなで分けて食べるであろう山盛りの麦パンだった。

「美味しー! ちょっと味が濃いめだけど、美味しいね!」
〈なかなかいけるな〉
「美味しいです」

 スープに入っていたソーセージはハーブが入っていて香りがいいし、ウィンナーの炒め物はスパイスが効いていた。
 大満足でご飯を食べ終え、ジルベルト君とグレンはマッサージを受けに行った。
 マッサージは部屋でもできるらしいんだけど、リラクゼーションルームみたいな専用部屋があるらしく、どうせならとそっちで受けることにしたらしい。
 マッサージを受けない私は部屋付きのお風呂でゆっくり過ごした。

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