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6章

図鑑

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 クラオルに起こしてもらうとモフモフに包まれていた。
 そうだ。昨日ネラースに枕になってもらったんだった。

「うふふ。気持ちいい~。朝からモフモフなんて贅沢」

 寝起きにモフモフを堪能して癒された。ちょっとヤキモチを妬いてるクラオルとグレウスもモフモフさせてもらって寝起きの気分は最高! 今ならドラゴンにも余裕で勝てる気がする。

〈ヴッ〉
「グレン、どうしたの?」
〈いや……ちょっと寒気がしただけだ〉
「風邪?」
〈多分違うから大丈夫だ〉

 グレンは大丈夫だと言っているけど、心配だから朝ごはんは温まるものにしよう!
 たっぷり生姜の鶏団子スープとグレンのリクエストの串焼きを作り、スープを煮込んでいる間に日課のストレッチを済ませた。私達に合わせネラース達も一生懸命にストレッチしている姿はたまらなく可愛い!

 朝ごはんを食べ、みんなに馬車で移動するか聞いてみると今日も騎乗スタイルがいいらしい。「ネラースばっかりズルい」とのことで今日は私はアクランに乗せてもらうことになった。

 森に向かって今日も走ってもらう。騎乗していても隣りを走るグレンとジルベルト君と話せることがわかり、休憩時間になるまでずっと話していた。

「あんまり魔物っていないんだねぇ」
『そうねぇ、主様にとってはそうかもしれないわね』

 休憩時間に紅茶を飲みながら誰にともなく呟くと、クラオルが拾ってくれた。
 街の外に出たら二、三時間に一回は遭遇するもんだと思っていた。カリダの街から王都に移動したときはパパ達が守ってくれていたから例外だろう。

「そうですね……ここまで遭遇しないのも珍しいですが、王都周辺は冒険者がよく通るので狩られていてあまり強い魔物はいないと思います。この辺りは開けているので魔物がいれば目立つでしょう」
「そっかぁ……目立つところにいたら魔物も狩られちゃうから出てこないんだね」
「セナ様は戦うことがお好きなのですか?」
「違う、違う!」

 ジルベルト君に戦闘狂だと勘違いされそうになったので即刻否定した。
 感覚は取り戻したいけど、戦闘狂だと思われるのは心外だ。
 グレンやネラース達のストレス発散のためだと説明するとなぜか目をキラキラとさせていた。

「ジルベルト君はストレス発散って今までどうしてたの?」
「僕はセナ様とお会いするまでストレスというものをよくわかっておりませんでしたが、心を落ち着かせるためによく温室に通っておりました」
「温室かぁー。お花に癒されてたんだねぇ」

 傷口をえぐっちゃったかと思ったけど大丈夫そうで良かった。
 言葉には気を付けないといけないと思っていたけど、ジルベルト君を癒していたのは毒に使うための花だったらしく顔が引きつってしまった。
 その温室自体がブラン団長達により処分されたらしい。毒として使われなくなったのはいいことだろうけど、癒された花が全て処分されてしまったジルベルト君にとっては複雑かもしれない。

「ふふっ。お気になさらず。あの植物は世に出してはいけないものですので、アレを使われる人がいなくなったのは喜ばしいことだと思います」

 そもそもジルベルト君が温室に通っていたのはあまり人が訪れないからだそうだ。その温室の空気にも毒素が含まれていて、管理する人がたまに訪れる程度だったらしい。ジルベルト君は幼いころから毒を飲まされて耐性が付いているらしく、毒は効かないんだそう。

(それにしても幼いジルベルト君に毒飲ませるなんてあの老害酷すぎる! 今までの行動を振り返るだけじゃなくて、被害者の追体験でもすればいいのに!)

「ふふっ。あの時はツラかったですが、セナ様に出会うためだと思うと後悔はありません」

 あまーい! そして洗脳が解けてない! その微笑みは世の中のお姉様の萌え刺激しちゃうから!
 また拗れて土下座されたり、拝まれたりはされたくないのでスルーすることに決めた。代わりにジルベルト君の頭を撫でてあげると、くすぐったそうに照れていた。

 休憩を終え、またアクランに乗せてもらう。魔物を探してはいるけどヒマだ。
 お昼ご飯はどうしようか? きっとまた魔物がいたらグレンが飛んでくよね。ルフスも倒してくれるのはありがたいけど、ネラース達も戦いたいだろうから注意した方がいいかな? このヒマな時間を有効活用はできないかな? 夜もリバーシじゃなくて何か違う遊び道具があったら良さそうだよね。でもジルベルト君の目の前でコテージには行けないからなぁ……
 時間を持て余すと考えがあちこちに飛んでしまう。
 結局お昼休憩まで考えがまとまることはなかった。

 お昼休憩は甘いものが食べたいとプルトンからのリクエストで食後にマドレーヌを出した。
 おなかが落ち着いたら出発だ。

 しばらくすると魔物の気配がした。

『ご主人様! あっちにスケイルヤーシリがいたっち!』

 ルフスが降りてきて魔物の名前を教えてくれた。
 スケイルヤーシリ……たしか図鑑ではウロコのあるトカゲだった気がする。ウロコがあるならウロコが素材になりそう。
 ルフスには見守りをお願いして、グレンに「素材が痛まないように倒してきて」と頼んだら嬉嬉として飛んでいった。
 私達が追いかけて着く頃には戦闘はもちろん終わっていて、あのセーラー服の芸人が追いかけっこをしたコモドドラゴンくらいの大きさのトカゲが四匹転がっていた。
 ジルベルト君に聞いてみるとウロコとおなかの中にある火袋と呼ばれる内臓の一部が素材らしい。火袋はその名の通り火の袋で、言わば火種を収納しておく場所。火種の一部を取り出し、息で空気を送り込み火を吐くんだそうだ。火耐性が付いていて武器や防具の素材に使われるらしい。ウロコも同じく火耐性が付くため、全体的にいいお値段で買い取ってもらえるらしい。
 ジルベルト君の素材知識はとってもありがたい! 私の中ではジルベルト図鑑として定着しそうだわ。

 トカゲを回収して野営にいい場所がないかを上空から探して欲しいとルフスにお願いすると、もう少し先に大きな岩があるらしい。ルフスに案内を頼んで進むと、確かに大きな岩があった。
 全長五メートルくらいの大きな岩だ。岩が欠けたのか回りには小さめな岩が転がっていた。

 作り置きしていた牛丼を食べ終わると、ルフスに攻撃しない方がいいのか聞かれてしまった。トカゲのときにお留守番をお願いしたから引っかかっていたらしい。
 素材が痛むと買い取り価格が安くなることや、肉が痛むと料理をするときに困ると説明したら納得してもらえて一安心。今度は攻撃方法を変えてくれるらしい。

 みんながリバーシに夢中になっている間に、アクランを枕に夜でもできる遊びを考えていた。
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