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5章
馬車【2】
しおりを挟むマジックバッグと馬車と従魔を繋ぐハーネスを受け取ったら、最後の仕上げに空間魔法をかける。
「以前の別荘を作った時と同じじゃ。馬車の中を想像して魔力を捏ねれば良いからの」
「はーい!」
イグ姐に言われた通りに想像して魔力をコネコネする。
イメージは、みんながゆっくりできるようにワンルームアパート。
イグ姐のストップがかかったところでコネコネを止めた。
「ククッ。相変わらずセナさんは面白いね」
「へ?」
「中を見てみるといいよ」
ガイ兄に言われて馬車のドアを開けてみる。
「えぇ!?」
何これ!? 広すぎない!? これアパートじゃなくてマンションじゃん!
ビックリしすぎて呆然としてしまう。
『主様? どうしたの?って何この広さ!』
《えぇ~。なになに!?……わぁー! さすがセナちゃんね!》
《この広さはすごいですね……》
みんなが反応してくれるけど、ちょっとショック。広い分にはいいんだろうけど、なんでこういう空間魔法だけ上手くいかないんだろうか。私的には程々がいいのに……
家族みんながゆっくり休むには広い方が休めるからと自分を言い聞かせた。
「中に入ってみましょうか」
「そうじゃの! 妾も入ってみたい!」
エアリルパパとイグ姐に言われて馬車の中に入ってみる。
ドアのところはちゃんと馬車と同じく玄関仕様になっていたのでブーツを脱いで上がった。
中はひっろーいワンルームマンション。トイレとお風呂もあり、ベッドやソファなどの家具と魔道具化された家電付きだった。ベッドはちゃんと三つ並んでいたけど、真ん中の一つがなぜか天蓋付きだった。
「うわぁ……なんで一つだけ天蓋付きベッドなの?」
『主様はあの布に隠れるのが好きなの?』
「いんや。全くもって好みじゃない。こういうお姫様タイプじゃなくてリゾート風なのは可愛いと思うけど」
「だそうだよ。エアリル」
「!」
クラオルとの会話を聞いたガイア兄がエアリルパパに話を振ると、エアリルパパがショックを受けてしまった
「セナさん! こういうのは嫌いなんですか!?」
「えっと……うん。好きではないかな……」
「そうなんですね……」
「だからセナさんに聞いてからにすれば良かったのに」
「うぅ……」
ガイ兄が追い打ちをかけると、ガックリと肩を落としてしまった。
「そもそもコテージのベッドには付いてないのに、なんで天蓋付けたのか聞いてもいい?」
「地球の神に聞いたんです……虫除けになると……コレを付けるだけでセナさんを囲いこもうとしたり、色目を使ってくる悪い虫が寄ってこないなら、セナさんが嫌な思いをしなくて済むと思ったんです……」
「あぁー、なるほど……」
エアリルパパの勘違いから付けたことが判明した。
「えっとね、天蓋の虫除けって蚊とかハエとかの虫除けなの。主な機能は寝室がなかった時の空間を区別するためと、ホコリ除けと風が直接当たらないようにするためのモノだったと思うから、人間には効果はないかな」
「!」
私が説明すると、さらにガックリと落ち込んでしまった。
「私が幼女だから利用しようとしてくるやつはいると思うけど、色目を使ってくる人はいないと思うよ?」
「そんなことはありません!」
食い気味にエアリルパパに否定されるとみんなに頷かれてしまった。
私と同じ意見は一人もいないらしい。
幼女趣味ならわかるけど……普通の人に色目使われたら趣味疑うよ。私の場合、色目というよりは保護者化してる気はするけど。
「残念じゃの。セナがあの中で寝てたら可愛いと思うたが……」
「そうだね。でもセナさんが嫌なら替えた方がいいんじゃないかな?」
「わかりました……」
私の好みじゃないから違うベッドに変えてくれるらしく、神様同士で相談が始まってしまった。
ただ、リゾート風の天蓋付きベッドのことを聞かれたので、雰囲気が変わるだけで天蓋付きになりそうな気がする。
2、3日で違うベッドに替えてくれるらしい。
「ねぇ、中を調べられても大丈夫なように中も隠蔽するって言ってたよね?」
「うん。隠蔽した時は……セナさんが王都に来るときに乗った馬車よりちょっとだけ広いくらいかな?」
「どうやってそのオンオフするの?」
「セナさんの意識次第でできるんだけど、何かあっても困るだろうから……そうだね。ドアを作ろうか」
ん? ドア? ドアってどういうこと?
首を傾げていると、馬車から降りるように促された。
私達が馬車を降りると、神達四人が魔法を使ったらしく馬車が光り始めた。
光が収まると、完成したと言われた。
再度馬車の中を見てみると、確かに王都に来たときの魔馬車より少し広いだけの馬車になっていた。ソファもあるが、三人並んで雑魚寝もできそうだ。ただ、後ろにドアが付いていて、このドアからさっきのワンルームマンションに行けるらしい。感覚的には続き部屋に行く感じだろうか。
私のコテージの空間魔法と違って、馬車に付与されているから魔力は必要ないらしい。
そしてこのドアは私が許した者じゃなければ見えないんだとか。とってもチートな馬車になってしまった。
まだジルベルト君はコテージに呼ばない方がいいだろうけど、この馬車は大丈夫だと言われた。その違いはなんなんだろうと思ったけど、パパ達的になにか条件があるんだろう。
「そろそろグレンが戻ってきそうだから部屋に戻った方が良さそうだね」
ガイ兄に言われて、我に返った。
パパ達にギュッと抱きついてお礼を言って、新しい子達には影に入ってもらった。
パパ達に見送られて、お城の部屋に戻る。
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