上 下
128 / 537
5章

満腹満足

しおりを挟む



 昨日部屋に戻ってからと今日の午前中、めいっぱいコテージでご飯作りに精を出した。
 ジルベルト君はまだコテージへ一度も招いていないからお留守番だ。馬車の空間には普通に入ってもらうつもりだけど、コテージに関してはパパ達いわく「信頼関係が大事だから見極めるためにしばし待て」だそうだ。許可が下りたら招いてあげようと思う。

 午後一番に冒険者ギルドに向かい、指名依頼にしてくれていた魔道具鑑定の受注と完了報告を済ませた。魔道具の報酬だけでは不足だからとお金も用意されていた。担当してくれたジョルガスさんに「冒険者の報酬に遠慮は無用」と言われたので受け取ることになった。

 お城の部屋に戻るとブラン団長三人揃って訪れてきてくれた。しかも全員手土産を持参で。
 ブラン団長はキウイのスムージー、フレディ副隊長は大量のイチゴ、パブロさんは新しい輸入品のレッドキウイ。
 会った瞬間にパブロさんとフレディ副隊長に抱きしめられて潰れるかと思ったけど、二人共目の下のクマが色濃く主張していて疲れ具合が目に見えて理解できた。
 落ち着いたころに話を聞くとフレディ副隊長は細かな調べ物、パブロさんは尋問と警備の見直しで忙しかったらしい。
 私が作ったチートなリンゴのパンで元気になったけど、忙しさは変わらず結局クマに再訪されてしまったんだそう。
 私が呼んだから午後はお休みになったらしく「久しぶりに休める」と喜んでいた。

 「今日はどうしたの? 団長にセナさんが喜ぶモノを持ってこいって言われたんだけど」

 ブラン団長には昨日「おなか空かせてきてね」って言っておいたから予想は付いていると思うんだけど、何も伝えてなかったらしい。

「あのね、そろそろ旅に出るからその前にお世話になった三人にお礼しようと思ってブラン団長に呼んでもらったの」
「「え!?」」
「いろいろあってだいぶ長居しちゃったけど……もう大丈夫そうだから」
「そうですか……寂しくなりますね」

 フレディ副隊長とパブロさんは肩を落としながらも納得してくれたみたい。
 パブロさんに「寂しいよぉ」とギュウギュウと抱きつかれたり、フレディ副隊長がそのパブロさんを引き剥がしたりとカリダの街のときみたいで安心した。
 なんやかんやでしばらくまともに会っていなかったから、自分でも気付かないうちにちょっと緊張していたらしい。
 私が息を吐くとブラン団長が頭を撫でてくれた。

 和んだところでダイニングのテーブルに作った料理を出していく。
 今回は日本のホームパーティーをモデルにした。前回の精霊の子達のアフタヌーンティーみたいなのとは違い、ちゃんとおなかいっぱいになれるように主食とおかず。
 今回作ったのは、サラダ・コンソメスープ・唐揚げ・フライドポテト・サンドイッチ・一口ひとくちコロッケ。そして三人が大好きなジャムパンと、作ろうと思ったまま作れていなかったピザ。
 みんないっぱい食べるので、全部大盛りだ。テーブルに乗り切らないので、なくなってから追加で出すことにした。

「……美味そうだな」
「えぇ。見たことのない料理が多いですが、とても美味しそうですね」
「すごーい! これ全部セナさんが作ったの!?」

 三人共料理を見た途端に目が輝き出した。
 クラオル達みんなに手伝ってもらって作ったことを教えると、三人はクラオル達のことも褒めてくれた。褒めてもらえてみんな嬉しそうだ。

「いっぱい作ったからいっぱい食べてね!」
「ありがとう! これはなにー?」

 パブロさんから質問が飛んできたので、なんの食材から作ったかを順番に説明した。


「美味しー!!」

 一口ひとくち食べた瞬間にパブロさんのウサ耳がピョッコーンと飛び出しプルプルと震えている。
 相変わらず可愛い。あとでまたウサ耳を触らせてもらえないだろうか……
 私のよこしまな気持ちに気がついたのかクラオルに頬をツンツンされた。「可愛すぎだぁぁぁー!」と叫びたくなるくらい、クラオルはちょこちょことキュンポイントを刺激してくる。

 三人ともちょっとフリーズしたと思ったら夢中で食べ進め、早々におかわりを出すことになった。
 おかわりを出すと少し落ち着いたらしく、和気あいあいとしたご飯に変わった。

「うぅー。セナさんが作ってくれるご飯は全部美味しい! セナさんが食堂開いてくれたら毎日通うのに!」
「そうですね。セナさんの料理は一度食べたら忘れられません」
「……あぁ。毎日食べられたら幸せだな」

 三人が手放しで褒めてくれるからくすぐったい。
 王都にきてからまともな食事は私と一緒に食べたとき以外数回しかなく、ほとんど黒パンと干し肉で乗り切っていたらしい。

 ブラン団長はピザ、フレディ副隊長はコロッケ、パブロさんは唐揚げが特に気に入ったらしい。
 グレンも負けず劣らず食べていて、ジルベルト君は遠慮しているけどグレンに勝手によそわれていた。精霊達は姿を隠しているからか、ブラン団長達が料理に夢中だからかわからないけど、食べていても気づかれていなかった。

 おなかいっぱいになるまで食べて満足したら、ジルベルト君に紅茶を淹れてもらってひと息つく。
 ブラン団長に昨日もらう約束をしていた魔道具を渡してもらうと、鑑定した魔道具の話になった。
 あそこまで魔道具があるとは思っていなかったらしい。

「セナさんがまとめてくれた魔道具一覧表を拝見させていただきましたが、とてもわかりやすかったです」
「……あぁ。セナが書いたものを真似したいんだが、大丈夫か?」
「気にしなくて大丈夫だよ。わかりやすかったなら良かった」

 他の人の鑑定ではそこまで詳しくはわからないらしく、鑑定だけで食べていけそうなくらい私のスキルは優秀らしい。
 スキルの話になってよくよく聞いていると、他の人は普通の鑑定をこなして鑑定レベルを上げるらしいんだけど、なかなか上がらないんだそう。
 私の場合はユニークスキルの看破だから、他の人の鑑定スキルとは比べられないことがわかった。称号も見れちゃうし、細かく見えることは本格的に内緒にしておこうと思う。バレたら面倒そうだ。

 ブラン団長達はいつカリダの街に戻るのか聞いてみると、奴隷商人が王都に運ばれてきて尋問が終わるまでは帰れないんだそう。
 そしてカリダの街の領主を決めるのに難航しているらしい。と言うよりも、上位貴族が相次いで捕まえられたために国政に影響が出ていて、大掛かりな改革に発展しているんだそうだ。
 まぁ、その辺は好き勝手している貴族を放置していた国王が悪いので、自国民のために頑張ってもらいたい。


 久しぶりにたくさん話してたくさん笑った。楽しい時間はあっという間に過ぎていき、もうそろそろお開きの時間。

「あのね、みんながあんまり寝ていないって言ってたから、少しの時間でも眠ったときに疲れが取れるように枕作ったの」
「「「枕?」」」
「うん。良かったら使ってね」

 三人に枕を渡すと驚きながらも嬉しそうに受け取ってもらえた。
 この枕はネライおばあちゃんにアドバイスをもらって作った。材料の買い物も、アドバイスをもらいに行くのもジルベルト君に頼んじゃったんだけど……コテージのミシンで縫ったのは私。
 グレンも欲しがったので、結局自分のも合わせて六つ作った。
 魔物の素材にポラルの糸を使って作ったこの枕の効能はグレンのお墨付き。グレンいわく、私の魔力が心地よいんだそう。ブラン団長達も気に入ってもらえたら嬉しいな。

 最後にしっかりとハグをしてみんなとお別れだ。
 最後だからとイケメンのいい香りを思いっきり吸い込んでやった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

転生幼児は夢いっぱい

meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、 ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい?? らしいというのも……前世を思い出したのは 転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。 これは秘匿された出自を知らないまま、 チートしつつ異世界を楽しむ男の話である! ☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。 誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。 ☆ファンタジーカップありがとうございました!!(*^^*) 今後ともよろしくお願い致します🍀

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

転生幼女の愛され公爵令嬢

meimei
恋愛
地球日本国2005年生まれの女子高生だったはずの咲良(サクラ)は目が覚めたら3歳幼女だった。どうやら昨日転んで頭をぶつけて一気に 前世を思い出したらしい…。 愛されチートと加護、神獣 逆ハーレムと願望をすべて詰め込んだ作品に… (*ノω・*)テヘ なにぶん初めての素人作品なのでゆるーく読んで頂けたらありがたいです! 幼女からスタートなので逆ハーレムは先がながいです… 一応R15指定にしました(;・∀・) 注意: これは作者の妄想により書かれた すべてフィクションのお話です! 物や人、動物、植物、全てが妄想による産物なので宜しくお願いしますm(_ _)m また誤字脱字もゆるく流して頂けるとありがたいですm(_ _)m エール&いいね♡ありがとうございます!! とても嬉しく励みになります!! 投票ありがとうございました!!(*^^*)

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。