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5章

満腹満足

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 昨日部屋に戻ってからと今日の午前中、めいっぱいコテージでご飯作りに精を出した。
 ジルベルト君はまだコテージへ一度も招いていないからお留守番だ。馬車の空間には普通に入ってもらうつもりだけど、コテージに関してはパパ達いわく「信頼関係が大事だから見極めるためにしばし待て」だそうだ。許可が下りたら招いてあげようと思う。

 午後一番に冒険者ギルドに向かい、指名依頼にしてくれていた魔道具鑑定の受注と完了報告を済ませた。魔道具の報酬だけでは不足だからとお金も用意されていた。担当してくれたジョルガスさんに「冒険者の報酬に遠慮は無用」と言われたので受け取ることになった。

 お城の部屋に戻るとブラン団長三人揃って訪れてきてくれた。しかも全員手土産を持参で。
 ブラン団長はキウイのスムージー、フレディ副隊長は大量のイチゴ、パブロさんは新しい輸入品のレッドキウイ。
 会った瞬間にパブロさんとフレディ副隊長に抱きしめられて潰れるかと思ったけど、二人共目の下のクマが色濃く主張していて疲れ具合が目に見えて理解できた。
 落ち着いたころに話を聞くとフレディ副隊長は細かな調べ物、パブロさんは尋問と警備の見直しで忙しかったらしい。
 私が作ったチートなリンゴのパンで元気になったけど、忙しさは変わらず結局クマに再訪されてしまったんだそう。
 私が呼んだから午後はお休みになったらしく「久しぶりに休める」と喜んでいた。

 「今日はどうしたの? 団長にセナさんが喜ぶモノを持ってこいって言われたんだけど」

 ブラン団長には昨日「おなか空かせてきてね」って言っておいたから予想は付いていると思うんだけど、何も伝えてなかったらしい。

「あのね、そろそろ旅に出るからその前にお世話になった三人にお礼しようと思ってブラン団長に呼んでもらったの」
「「え!?」」
「いろいろあってだいぶ長居しちゃったけど……もう大丈夫そうだから」
「そうですか……寂しくなりますね」

 フレディ副隊長とパブロさんは肩を落としながらも納得してくれたみたい。
 パブロさんに「寂しいよぉ」とギュウギュウと抱きつかれたり、フレディ副隊長がそのパブロさんを引き剥がしたりとカリダの街のときみたいで安心した。
 なんやかんやでしばらくまともに会っていなかったから、自分でも気付かないうちにちょっと緊張していたらしい。
 私が息を吐くとブラン団長が頭を撫でてくれた。

 和んだところでダイニングのテーブルに作った料理を出していく。
 今回は日本のホームパーティーをモデルにした。前回の精霊の子達のアフタヌーンティーみたいなのとは違い、ちゃんとおなかいっぱいになれるように主食とおかず。
 今回作ったのは、サラダ・コンソメスープ・唐揚げ・フライドポテト・サンドイッチ・一口ひとくちコロッケ。そして三人が大好きなジャムパンと、作ろうと思ったまま作れていなかったピザ。
 みんないっぱい食べるので、全部大盛りだ。テーブルに乗り切らないので、なくなってから追加で出すことにした。

「……美味そうだな」
「えぇ。見たことのない料理が多いですが、とても美味しそうですね」
「すごーい! これ全部セナさんが作ったの!?」

 三人共料理を見た途端に目が輝き出した。
 クラオル達みんなに手伝ってもらって作ったことを教えると、三人はクラオル達のことも褒めてくれた。褒めてもらえてみんな嬉しそうだ。

「いっぱい作ったからいっぱい食べてね!」
「ありがとう! これはなにー?」

 パブロさんから質問が飛んできたので、なんの食材から作ったかを順番に説明した。


「美味しー!!」

 一口ひとくち食べた瞬間にパブロさんのウサ耳がピョッコーンと飛び出しプルプルと震えている。
 相変わらず可愛い。あとでまたウサ耳を触らせてもらえないだろうか……
 私のよこしまな気持ちに気がついたのかクラオルに頬をツンツンされた。「可愛すぎだぁぁぁー!」と叫びたくなるくらい、クラオルはちょこちょことキュンポイントを刺激してくる。

 三人ともちょっとフリーズしたと思ったら夢中で食べ進め、早々におかわりを出すことになった。
 おかわりを出すと少し落ち着いたらしく、和気あいあいとしたご飯に変わった。

「うぅー。セナさんが作ってくれるご飯は全部美味しい! セナさんが食堂開いてくれたら毎日通うのに!」
「そうですね。セナさんの料理は一度食べたら忘れられません」
「……あぁ。毎日食べられたら幸せだな」

 三人が手放しで褒めてくれるからくすぐったい。
 王都にきてからまともな食事は私と一緒に食べたとき以外数回しかなく、ほとんど黒パンと干し肉で乗り切っていたらしい。

 ブラン団長はピザ、フレディ副隊長はコロッケ、パブロさんは唐揚げが特に気に入ったらしい。
 グレンも負けず劣らず食べていて、ジルベルト君は遠慮しているけどグレンに勝手によそわれていた。精霊達は姿を隠しているからか、ブラン団長達が料理に夢中だからかわからないけど、食べていても気づかれていなかった。

 おなかいっぱいになるまで食べて満足したら、ジルベルト君に紅茶を淹れてもらってひと息つく。
 ブラン団長に昨日もらう約束をしていた魔道具を渡してもらうと、鑑定した魔道具の話になった。
 あそこまで魔道具があるとは思っていなかったらしい。

「セナさんがまとめてくれた魔道具一覧表を拝見させていただきましたが、とてもわかりやすかったです」
「……あぁ。セナが書いたものを真似したいんだが、大丈夫か?」
「気にしなくて大丈夫だよ。わかりやすかったなら良かった」

 他の人の鑑定ではそこまで詳しくはわからないらしく、鑑定だけで食べていけそうなくらい私のスキルは優秀らしい。
 スキルの話になってよくよく聞いていると、他の人は普通の鑑定をこなして鑑定レベルを上げるらしいんだけど、なかなか上がらないんだそう。
 私の場合はユニークスキルの看破だから、他の人の鑑定スキルとは比べられないことがわかった。称号も見れちゃうし、細かく見えることは本格的に内緒にしておこうと思う。バレたら面倒そうだ。

 ブラン団長達はいつカリダの街に戻るのか聞いてみると、奴隷商人が王都に運ばれてきて尋問が終わるまでは帰れないんだそう。
 そしてカリダの街の領主を決めるのに難航しているらしい。と言うよりも、上位貴族が相次いで捕まえられたために国政に影響が出ていて、大掛かりな改革に発展しているんだそうだ。
 まぁ、その辺は好き勝手している貴族を放置していた国王が悪いので、自国民のために頑張ってもらいたい。


 久しぶりにたくさん話してたくさん笑った。楽しい時間はあっという間に過ぎていき、もうそろそろお開きの時間。

「あのね、みんながあんまり寝ていないって言ってたから、少しの時間でも眠ったときに疲れが取れるように枕作ったの」
「「「枕?」」」
「うん。良かったら使ってね」

 三人に枕を渡すと驚きながらも嬉しそうに受け取ってもらえた。
 この枕はネライおばあちゃんにアドバイスをもらって作った。材料の買い物も、アドバイスをもらいに行くのもジルベルト君に頼んじゃったんだけど……コテージのミシンで縫ったのは私。
 グレンも欲しがったので、結局自分のも合わせて六つ作った。
 魔物の素材にポラルの糸を使って作ったこの枕の効能はグレンのお墨付き。グレンいわく、私の魔力が心地よいんだそう。ブラン団長達も気に入ってもらえたら嬉しいな。

 最後にしっかりとハグをしてみんなとお別れだ。
 最後だからとイケメンのいい香りを思いっきり吸い込んでやった。


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