転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

文字の大きさ
上 下
129 / 541
5章

満腹満足

しおりを挟む



 昨日部屋に戻ってからと今日の午前中、めいっぱいコテージでご飯作りに精を出した。
 ジルベルト君はまだコテージへ一度も招いていないからお留守番だ。馬車の空間には普通に入ってもらうつもりだけど、コテージに関してはパパ達いわく「信頼関係が大事だから見極めるためにしばし待て」だそうだ。許可が下りたら招いてあげようと思う。

 午後一番に冒険者ギルドに向かい、指名依頼にしてくれていた魔道具鑑定の受注と完了報告を済ませた。魔道具の報酬だけでは不足だからとお金も用意されていた。担当してくれたジョルガスさんに「冒険者の報酬に遠慮は無用」と言われたので受け取ることになった。

 お城の部屋に戻るとブラン団長三人揃って訪れてきてくれた。しかも全員手土産を持参で。
 ブラン団長はキウイのスムージー、フレディ副隊長は大量のイチゴ、パブロさんは新しい輸入品のレッドキウイ。
 会った瞬間にパブロさんとフレディ副隊長に抱きしめられて潰れるかと思ったけど、二人共目の下のクマが色濃く主張していて疲れ具合が目に見えて理解できた。
 落ち着いたころに話を聞くとフレディ副隊長は細かな調べ物、パブロさんは尋問と警備の見直しで忙しかったらしい。
 私が作ったチートなリンゴのパンで元気になったけど、忙しさは変わらず結局クマに再訪されてしまったんだそう。
 私が呼んだから午後はお休みになったらしく「久しぶりに休める」と喜んでいた。

 「今日はどうしたの? 団長にセナさんが喜ぶモノを持ってこいって言われたんだけど」

 ブラン団長には昨日「おなか空かせてきてね」って言っておいたから予想は付いていると思うんだけど、何も伝えてなかったらしい。

「あのね、そろそろ旅に出るからその前にお世話になった三人にお礼しようと思ってブラン団長に呼んでもらったの」
「「え!?」」
「いろいろあってだいぶ長居しちゃったけど……もう大丈夫そうだから」
「そうですか……寂しくなりますね」

 フレディ副隊長とパブロさんは肩を落としながらも納得してくれたみたい。
 パブロさんに「寂しいよぉ」とギュウギュウと抱きつかれたり、フレディ副隊長がそのパブロさんを引き剥がしたりとカリダの街のときみたいで安心した。
 なんやかんやでしばらくまともに会っていなかったから、自分でも気付かないうちにちょっと緊張していたらしい。
 私が息を吐くとブラン団長が頭を撫でてくれた。

 和んだところでダイニングのテーブルに作った料理を出していく。
 今回は日本のホームパーティーをモデルにした。前回の精霊の子達のアフタヌーンティーみたいなのとは違い、ちゃんとおなかいっぱいになれるように主食とおかず。
 今回作ったのは、サラダ・コンソメスープ・唐揚げ・フライドポテト・サンドイッチ・一口ひとくちコロッケ。そして三人が大好きなジャムパンと、作ろうと思ったまま作れていなかったピザ。
 みんないっぱい食べるので、全部大盛りだ。テーブルに乗り切らないので、なくなってから追加で出すことにした。

「……美味そうだな」
「えぇ。見たことのない料理が多いですが、とても美味しそうですね」
「すごーい! これ全部セナさんが作ったの!?」

 三人共料理を見た途端に目が輝き出した。
 クラオル達みんなに手伝ってもらって作ったことを教えると、三人はクラオル達のことも褒めてくれた。褒めてもらえてみんな嬉しそうだ。

「いっぱい作ったからいっぱい食べてね!」
「ありがとう! これはなにー?」

 パブロさんから質問が飛んできたので、なんの食材から作ったかを順番に説明した。


「美味しー!!」

 一口ひとくち食べた瞬間にパブロさんのウサ耳がピョッコーンと飛び出しプルプルと震えている。
 相変わらず可愛い。あとでまたウサ耳を触らせてもらえないだろうか……
 私のよこしまな気持ちに気がついたのかクラオルに頬をツンツンされた。「可愛すぎだぁぁぁー!」と叫びたくなるくらい、クラオルはちょこちょことキュンポイントを刺激してくる。

 三人ともちょっとフリーズしたと思ったら夢中で食べ進め、早々におかわりを出すことになった。
 おかわりを出すと少し落ち着いたらしく、和気あいあいとしたご飯に変わった。

「うぅー。セナさんが作ってくれるご飯は全部美味しい! セナさんが食堂開いてくれたら毎日通うのに!」
「そうですね。セナさんの料理は一度食べたら忘れられません」
「……あぁ。毎日食べられたら幸せだな」

 三人が手放しで褒めてくれるからくすぐったい。
 王都にきてからまともな食事は私と一緒に食べたとき以外数回しかなく、ほとんど黒パンと干し肉で乗り切っていたらしい。

 ブラン団長はピザ、フレディ副隊長はコロッケ、パブロさんは唐揚げが特に気に入ったらしい。
 グレンも負けず劣らず食べていて、ジルベルト君は遠慮しているけどグレンに勝手によそわれていた。精霊達は姿を隠しているからか、ブラン団長達が料理に夢中だからかわからないけど、食べていても気づかれていなかった。

 おなかいっぱいになるまで食べて満足したら、ジルベルト君に紅茶を淹れてもらってひと息つく。
 ブラン団長に昨日もらう約束をしていた魔道具を渡してもらうと、鑑定した魔道具の話になった。
 あそこまで魔道具があるとは思っていなかったらしい。

「セナさんがまとめてくれた魔道具一覧表を拝見させていただきましたが、とてもわかりやすかったです」
「……あぁ。セナが書いたものを真似したいんだが、大丈夫か?」
「気にしなくて大丈夫だよ。わかりやすかったなら良かった」

 他の人の鑑定ではそこまで詳しくはわからないらしく、鑑定だけで食べていけそうなくらい私のスキルは優秀らしい。
 スキルの話になってよくよく聞いていると、他の人は普通の鑑定をこなして鑑定レベルを上げるらしいんだけど、なかなか上がらないんだそう。
 私の場合はユニークスキルの看破だから、他の人の鑑定スキルとは比べられないことがわかった。称号も見れちゃうし、細かく見えることは本格的に内緒にしておこうと思う。バレたら面倒そうだ。

 ブラン団長達はいつカリダの街に戻るのか聞いてみると、奴隷商人が王都に運ばれてきて尋問が終わるまでは帰れないんだそう。
 そしてカリダの街の領主を決めるのに難航しているらしい。と言うよりも、上位貴族が相次いで捕まえられたために国政に影響が出ていて、大掛かりな改革に発展しているんだそうだ。
 まぁ、その辺は好き勝手している貴族を放置していた国王が悪いので、自国民のために頑張ってもらいたい。


 久しぶりにたくさん話してたくさん笑った。楽しい時間はあっという間に過ぎていき、もうそろそろお開きの時間。

「あのね、みんながあんまり寝ていないって言ってたから、少しの時間でも眠ったときに疲れが取れるように枕作ったの」
「「「枕?」」」
「うん。良かったら使ってね」

 三人に枕を渡すと驚きながらも嬉しそうに受け取ってもらえた。
 この枕はネライおばあちゃんにアドバイスをもらって作った。材料の買い物も、アドバイスをもらいに行くのもジルベルト君に頼んじゃったんだけど……コテージのミシンで縫ったのは私。
 グレンも欲しがったので、結局自分のも合わせて六つ作った。
 魔物の素材にポラルの糸を使って作ったこの枕の効能はグレンのお墨付き。グレンいわく、私の魔力が心地よいんだそう。ブラン団長達も気に入ってもらえたら嬉しいな。

 最後にしっかりとハグをしてみんなとお別れだ。
 最後だからとイケメンのいい香りを思いっきり吸い込んでやった。


しおりを挟む
感想 1,802

あなたにおすすめの小説

山に捨てられた令嬢! 私のスキルは結界なのに、王都がどうなっても、もう知りません!

甘い秋空
恋愛
婚約を破棄されて、山に捨てられました! 私のスキルは結界なので、私を王都の外に出せば、王都は結界が無くなりますよ? もう、どうなっても知りませんから! え? 助けに来たのは・・・

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。