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5章
増える“木”
しおりを挟む放置すると余計なことをしでかしそうなので、グレンにシヤモさんの首根っこを掴んでもらって移動した。
トゥリーさんに頼んでいた魔道具分別部屋に移動して、プルトンが見つけた拘束の魔道具をシヤモさんに発動させた。
この魔道具は“使い方はあなた次第♪”って書いてあり、あのマッサージの魔道具と同一人物が作ったと思われる。
発動すると、黒いロープみたいなものがシヤモさんに巻きついた。
うん……何も言うまい。
それでも部屋に置いてある魔道具をガン見しながら、イモムシのようにモゾモゾと魔道具のほうに寄っていく姿を見て、プルトンが《気持ち悪っ!》と結界を張っていた。
シヤモさんは本当に魔道具が好きなんだろうけど、その情熱が対人に向かないことを願いながら鳥肌が立った腕をさすった。
トゥリーさんにシヤモさんをお願いして私は再び鑑定作業に戻った。
その後の私達は平和だったけど、たまにトゥリーさんの怒ってる声が聞こえてた。苦労が偲ばれるね。
ずっと思い出せなかったけど、トゥリーさんが誰に似ているのかも判明した。
似ているのも当然で、なんと! ポイズンスライムのときにアイテムボックスのことを教えてくれたフォスターさんのお兄さんだった。
トゥリーさんとフォスターさんの間にウッディと言う名前の男の子がいて三人兄弟らしい。木・林・森からもじってるように感じる。この世界ではそんなことないんだけど。四人目が生まれたらなんて名前になるんだろうか。また木が増えて、林林でリンリンとかだったら面白いと思う。
フォスターさんもトゥリーさんも、二人ともツッコミ属性の苦労人。
いやー。思い出せてスッキリでございます!
フォスターさんが言っていた通り、トゥリーさんは魔法省で魔法の研究をしているらしい。伝説の魔法ではなく、魔力の流れや密度によって何が変わるのかってことを研究しているらしい。そういえばフォスターさんにそれらしいことを言われた気がする。
トゥリーさんとは数日かけて魔道具の鑑定を終わらせる過程で仲良くなれた。
途中、ネライおばあちゃんに頼んだジルベルト君の服が出来上がったと連絡がきたので本人に受け取りに行ってもらった。
結局毎日のようにシヤモさんが突撃してきて、ブラン団長に注意してもらったけど懲りず……王命だからと説明してようやく諦めてくれ、最後の日だけは平和だった。ものすごい未練タラタラだったけど。
鑑定が終わってゆっくりできるかと思ったら次の日国王に呼ばれてしまった。
ブラン団長と執務室に着くと、国王と王太子に迎えられた。今回はアーロンさんはいないみたい。
「この度は魔道具の鑑定をしていただきありがとうございます。助かりました」
「はーい。でも、何の研究をしてるかは把握しておいた方がいいと思うよ。結構危ない魔道具もあったから」
「そうですね。自由にさせすぎたことを後悔しています……」
王太子が言うには、出入口もそうだけど地下室やら隠し通路やら報告がきていないことが多すぎて建て替えすることに決まったらしい。
本部を建て替えたら魔法省の別棟も建て替えするんだそうだ。
私が鑑定した魔道具は各部屋毎にマジックバッグに入れて、厳重に保管されるらしい。
隷属の首輪のような魔道具や精神干渉する魔道具は危険なモノとしてトゥリーさんには内緒でまた別部屋にまとめておいたんだけど、これは秘匿されるらしい。ちなみに、シヤモさんには罰として騎士団で訓練することが決まったと言われた。普通の罰じゃ罰にならなさそうだから、鍛えて根性叩き直すってことでこの罰になったらしい。あの性格が治るのかはわからないけど頑張ってもらいたい。
「報告が遅くなってしまいましたが、デビト・ワーレス達の処罰について報告いたします」
「はーい」
「セナ殿が処刑は望まないとのことでしたので、尋問してから全身に犯罪奴隷としての刻印を施した後、僻地にて労働を課すことになりました。一緒にいた貴族も同じ処罰にする予定です。もちろん全員同じ場所ではなくバラバラの場所です。声が出せないようにする魔道具を付けさせます」
ちなみに全身の刻印は顔や耳から足の裏まで本当に全身にタトゥーのような刻印をいれるらしい。しかも痛み止めや麻酔なんてものはなく、その痛みも罰なんだそうだ。
奴隷商人はまだ王都に来ていないが、おそらく同じ処罰になるだろうと言われた。
多分パパ達も罰を与えてくれると思うから充分だろう。
「そして今回魔道具の鑑定をしていただいた件ですが、冒険者ギルドでの指名依頼とさせていただきたいと思います。報酬として何か希望はございますか?」
私が前にタダ働きはしないって言ったことを気にしてくれたらしい。
ブラン団長に頼まれたから報酬とかは気にしてなかったんだけど……国王に頼られたくはないのでありがたく報酬をもらうことにした。
「なんでもいいの?」
「我が国で可能な範囲と限定されますが……」
「じゃあ、魔道具欲しい」
「魔道具ですか?」
「そう。改造したら使えそうなやつがあったから」
私がいいなーと思っていたのは、魔力を流すとホッカイロみたいに温まる板と、フードプロセッサーとして使えそうな回転する刃。あと、カラフルなマーカーペンだ。
マーカーペンはどうなっているのかわからないけど、魔力がインクの代わりになる仕様でインク切れにならないらしい。魔力を使うという意味では魔道具なのかもしれない。
この世界には契約ペンと呼ばれる魔力を通して使用するペンがある。このペンは名の通り契約書にサインする際に使われ、契約を簡単に反故できないように縛る目的で使われている。
おそらくその契約ペンからヒントを得たんだと思うけど、サインとして使わなきゃいい話だ。
「えっと……そんな魔道具でよろしいんですか?」
「うん」
「では、魔法省本部よりセナ殿のお部屋にお持ちいたします」
「はーい」
「明日以降に冒険者ギルドへ指名依頼を受けに伺ってもらえたらと思います」
「わかった」
ブラン団長に明日か明後日に時間を作れないか聞くと、明日の午後なら大丈夫らしい。フレディ副隊長とパブロさんも一緒にとお願いして部屋まで送ってもらった。
そうとなったら明日の準備をしなければ。
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