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5章

装備と紹介

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 お城の部屋に戻り、ソファでモフモフを堪能しているとグレン達が戻って来た。

「おかえりー」
〈ただいま〉
《戻った》
「戻りました」

 ラスクを出してジルベルト君が淹れてくれた紅茶を飲みながら、ちゃんと買えたのか聞く。

あるじは行かなくて正解だった。どこへ行くにも注目され、後ろを付けて来るやつも多かった》
〈あぁ。あまりにしつこいやつには威圧しておいたが、次々現れキリがなかった。買い物は……武器はまだましだが、防具はいい物がなかった。だからあの服屋に頼んできた〉
「服屋ってネライおばあちゃんのお店?」
《そうだ。防具らしい物は全て鎧など金属製の物が多くてな……ジルベルトには合わなかったのだ》
〈武器もだが、付与が酷かった。その中でもマシなものを選んだが、おそらく次の街で買い替えなきゃダメだと思うぞ〉
「そんなに? でもとりあえず買えたんだよね?」
「はい。こちらになります」

 ジルベルト君が買った武器を見せてくれた。グレンの言う通り安っぽい細身の片手剣と弓で、耐久性は低そう。
 カリダの街の武器屋さんで見た、安いエリアに置かれていた剣と変わらなさそうに見える。

「とりあえず買えたなら良かった。おばあちゃんのお店に頼んだなら、服が出来上がるまではここに滞在させてもらおうか」
「申し訳ございません」
「気にしなくて大丈夫だよ。どれくらいで出来上がるって言ってた?」
〈一週間らしい〉
「そっか、わかった。どんなデザインにしたの?」
〈セナが喜びそうなデザインにしておいた。あと、執事服も頼んでおいた〉
「執事服!?」

 グレンのひと言に衝撃を受ける。
 執事服ってアニメとかで執事が着ている燕尾服だよね? なんで執事服? 私なんか変なこと言ったっけ? 普通に武器と服買って来てって言ったよね?

「はい。厚かましいとは思ったのですが、持っていた方がいいとエルミス様にアドバイスをいただきましたので、頼んでしまいました」
《あぁ、わしが言った。仕えるのならあった方がいいだろう。他国で何があるか分からぬゆえ、一応持っていて損はないと思うからな》
「なるほど……って、普通にパーティメンバーでいいと思うんだけど」
あるじは強い。そしてドラゴンであるグレンが従魔だ。ただパーティメンバーと説明しただけでは納得しない奴らが現れるかもしれぬからな》
「念には念を入れてってこと? そんな説明が必要になるかなぁ? 貴族と王族は極力関わりたくないんだけど……」
《ふむ。あるじが嫌がったとしても、強欲な者が羽虫のように寄ってくるだろう。デビト・ワーレスのようにな》
「あぁ……それフラグにならないで欲しい……頼むのは全然大丈夫だから、ジルベルト君が嫌じゃなければいいよ」

 作ってもらっても、嫌なら着なきゃいい話だもんね。

〈そのようなやつはわれが蹴散らしてやるから安心しろ〉
「そんな物騒な……」
〈セナが言うか? セナも王族を使って捕らえたじゃないか。まぁいいが……そう言えば、セナの噂が広まっているが大丈夫かと、店主が心配していたぞ〉
「マジか……」
《しばらくあるじはあまり街には出ない方がいいだろうな》
「そうだね……大人しくしてるよ」

 エルミスの言葉で昨日の騒ぎを思い出してため息がこぼれてしまった。
 しばらくお買い物はグレンとジルベルト君に頼まないと。

《セナ様。私は少し精霊の国に戻りたいと思います》
「うん。わかった。いっぱいありがとう! とっても助かったよ!」
《呼んでいただきありがとうございます。セナ様のお役に立てたのでしたら嬉しいです。少し戻って仕事を済ませたら、またご一緒してもよろしいでしょうか?》
「もちろんだよ! ウェヌスも何かあったら言ってね? チカラになれるかは分からないけど、一緒に考えることはできるから」
《ありがとうございます! では行ってまいります》
「行ってらっしゃい」

 ウェヌスはキッチリお辞儀をしてから、精霊の国に戻って行った。

♢

 グレンからの催促でお昼ご飯を済ませて、ソファでくつろいでいるとクラオルに話しかけられた。

『主様。従魔の話はしなくていいの?』
「あぁ、そうだね。エルミスはもう知ってるけど、二人に紹介しなきゃね」
「〈紹介?〉」

 二人とも揃って首を傾げている。

「みんな出てきてー!」

 新しく従魔になってくれた子達を呼んで自己紹介。

「黒豹の子猫がネラース。水色の子グマがアクラン。赤い小鳥がルフス。白い子犬がニヴェスだよ。みんなモフモフで可愛いでしょ?」
「セナ様の従魔……」
〈ほう……ククッ。やはりセナは規格外だな〉
「ん? どういう意味?」
〈いや……セナは面白いってことだ〉
「んん? なんか誤魔化された気がするけど……まぁ、いいか。みんなー! グレンとジルベルト君だよ。仲良くしてね!」

 私が言うと、みんな元気よく片手を上げて返事をしてくれた。
 うん。可愛い! 少しモフモフを堪能させてもらいましょう!
 グレンとジルベルト君も挨拶をして、仲良くなれそうだと安心できた。

 モフモフさせてもらっていると、グレンに呼ばれた。

〈セナ。さっき言うのを忘れていたが、あの服屋は今まで通り冒険者や平民の服を作ることにしたらしいぞ。貴族の相手をするより、気が楽だと言っていた。あの店はセナのお気に入りだと噂が流れているから早速問い合わせがきていた〉
「本当に続けてくれるんだ! 良かったー! 噂は仕方ないね。実際おばあちゃんを助けたかったことが発端だし」
〈貴族も諦めていないようだが、セナの魔道具で選別されているから今のところは大丈夫らしい〉
「そうだね。その問題もなんとかしてあげたいな……」
《こういう時は、先人の知恵よ!》

 ずっと黙っていたプルトンが声を張りながらビシッと私を指差した。

「先人の知恵って……パパ達?」
《あぁん! 違うわ! セナちゃんは罰を与えたい訳じゃないんでしょ?》
「うん」
《王都に詳しい人物に聞くといいと思ったのよ》
「なるほど。王都に詳しいって国王達かサルースさんとジョルガスさんくらいしか思い付かないんだけど」
《そうねぇ……商業ギルドなら詳しいんじゃないかしら?》
「じゃあ、明日聞きに行ってみようか?」
《それがいいと思うわ!》
「今回協力してもらったから、お礼も渡さないとだね」
《セナちゃん優しい!》

 お礼は何がいいかと考えると、忘れていたことを思い出した。

「あぁ! そうだ! ジルベルト君にプレゼントがあるんだった」
「プレゼントですか?」
「そうそう。これなんだけど」

 不思議そうに首を傾げているジルベルト君に、アクエスパパに作ってもらったマジックバッグを渡す。

「これは……」
「マジックバッグだよ。ジルベルト君持ってないでしょ? ずっと弓と片手剣持って歩くのも大変だと思うから、これに入れちゃって大丈夫だよ。容量もいっぱい入るはずだし、時間停止機能も付いているはずだから好きに使ってね」
「そ、そんなに高級品を僕なんかによろしいのですか?」
「うん。ないと不便でしょ? これはジルベルト君が使って大丈夫だよ」
「ありがとうございます……」

 前みたいに泣き出しはしないものの、瞳をウルウルさせている。
 ジルベルト君は感動やさんだよねー。裏切ったりしなければ、私に戻ってくることはないからその辺は説明しなくてもいいかな。



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