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5章

救われた者の望み

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食べ終わったらみんなでお城の部屋に戻ってリバーシタイム。

(ん?ブラン団長とトリ…じゃなくてジルベルト君?)
2人が部屋に向かって来る気配を感じて、みんなに伝えてリバーシをダイニングのテーブルに移動させた。



ブラン団長達が部屋に入るとすぐにジルベルト君が土下座の体勢になった。

「セナ様。僕なんかのためにありがとうございます」

「えぇっと…」

「…すまない。ト…いや。ジルベルトがどうしてもセナに会って話がしたいと言うから連れて来た」

「そっか。ブラン団長ありがとう。とりあえず座ろうよ」

ブラン団長はソファに移動してくれたけど、ジルベルト君は動かない。
見かねたグレンが後ろ側の首元を掴んで持ち上げ、強引にブラン団長の隣りに座らせた。

(首根っこって…猫みたいだわ)



「とりあえずどうぞ」
果実水とラスクをテーブルに出す。

「それで、ジルベルト君はどうしたの?」

〈セナに文句でも言いに来たのか?〉
グレンは威圧はしないものの警戒しながらジルベルト君に問う。

「いえっ!とんでもありません。許される罪ではないと思っていたので本当にいいのかと思う気持ちもありますが…その…あの…」
ジルベルト君は段々と小声になりモジモジし始めてしまった。

「ん?なーに?」

〈ハッキリ言え〉

「えっと…あのっ!僕を連れて行って下さいませんか!?」

「「〈は?〉」」

「僕を救ってくれた女神様の化身であられるセナ様のお役に立ちたいのです」

「いやいや。私は女神様じゃないよ」

「ダメでしょうか?」
ショボーンと落ち込むジルベルト君。

〈はぁ…大体セナの方が強いだろう〉
グレンが呆れ顔でため息を付きながら言う。

「はい…それは重々理解しています。僕も強くなってセナ様の盾くらいにはなれる様にします!
以前セナ様に自由になったら何がしたいかと聞かれた時にセナ様と一緒に旅がしたいと思ったのです。あの時は叶うはずがないと思っていたのですが…生きる事を許され自由となれるのならセナ様と共に生きて行きたい…いえ。セナ様にお仕えしたいのです」

(これは…雲行きが怪しいぞ。予想外だわ)

〈構わず置いて行けばいい〉

(それもどうだろう…)

「セナ様が一緒に居たくないとの事でしたら、後ろから離れ見守りながら付いて行きたいと思います」

「いやいや!それ完全にストーカーだから!」

ジルベルト君のストーカー発言を聞いて思わずツッコミを入れてしまう。
キラキラとした目でジッと見つめられてどうしようかと考える。
(この子こんなキャラだったっけ?)
後ろに付いて来られても困る。
私達のスピードに身体強化で付いて来られるのか…

「私が寝てる夜中にジルベルト君とポラルが守ってくれてたのは知ってるけど…」

『気付いてたの?』
クラオルがびっくりしながら聞いてきた。

「うん。騒がしかったからね。危なさそうだったら助けに行こうかと思ってたけど、ポラルは遊んでたみたいだったし、相手の人数も少なかったし、すぐに終わったから大丈夫かなって。数日で来なくなったしね」

〈セナが助けたんだ。どうするかはセナが決めろ〉

「う。行きたい街で色々準備してあげるつもりだったんだけど……うーん……後ろから付いて来られても心配だから……分かった。いいよ」

「ありがとうございますっ!」
キラキラと満面の笑みで頭を下げられた。

「でも!条件があるっ!」

「条件でございますか?」

「うん。無理そうだと思ったら一緒にはいられない。危険だと判断したら街に残って貰う。グレンやクラオル達家族も危なくなっちゃうからね。それでも良ければになるよ」

「チャンスと言う事ですね」

「えっと…まぁ、そうかな?」

「かしこまりました。ありがとうございます。セナ様に誠心誠意尽くしたいと思います」

「いや、尽くさなくて大丈夫だよ?ジルベルト君の安全第一にして」

「セナ様はやはりお優しいですね。僕のような者の安全を考えて下さるとは。さすが女神様です。強くなりセナ様をお守り致します」

「女神じゃないんだけど…」
(女神の化身から女神になってるし…)


「…つまり、ト…いや。ジルベルトはセナに付いていくという事でいいのか?」
成り行きを見守っていたブラン団長に確認された。

「うん。そういう事になったみたい」

(まさか自己満のために助けた事がこんな展開になるとは…責任って大事ね。これから気を付けないと。国王に足元救われるなんて偉そうな事言ってたけど、人の事言えないわ)

「…分かった。陛下には俺から伝えておこう」

「ごめんね。お願いします」

「…セナはいいのか?」

「自分の行動に責任持たなきゃいけないからね。予想外ではあるけど」

「…そうか。ところでセナ。寝ている間に守って貰ったという事は別の刺客が来ていたという事だな?」

ブラン団長は笑顔だけど、目が笑っていない。
これは……怒っていらっしゃる!無言の圧が……どうしよう……

「えっと……うん。でも犯人分かってるよ?」

「…はぁ。そういう問題じゃない。城で狙われる事が問題なんだ。この件も俺から報告しておく。ちなみに誰だ?」

疲れた様子のブラン団長にため息を付きながら言われてしまった。

「デビト・ワーレスに雇われた人だよ」

「またデビト・ワーレスか……他には何かないか?」

「他に?特にないかな?」

「…本当に何もないんだな?」

(めっちゃ怪しまれてる!)
「特にないと思う。あっちはまだ調べてるけど」

「…そうか。俺達もあっちの件は調べている途中だ。今のところセナの推理通りになっている。あと2、3日で全て調べ終わるだろう」

「ありがとう!」

「…さて。もう遅い。俺達は戻ろう。それにジルベルトには話があるからな」

われも話がある〉

ブラン団長が立ち上がるとグレンまで立ち上がった。
2人でアイコンタクトを取って頷いている。

〈先に寝ていろ〉

私の頭を撫でてからブラン団長達と出て行くのを「おやすみなさい」と見送った。

「うーん。グレンどうしたんだろ?」

『放っておいて大丈夫よ。お話ししてくるだけだわ。主様は心配しなくて大丈夫よ』
クラオルが頬にスリスリしてくれる。

「いいならいいけど」

『もう遅いから寝ちゃいましょ』

クラオルに促されてリバーシをしまったらベッドに入る。

クラオルとグレウスの温かさにすぐに眠気が訪れた。

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