転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

5章

反応

　つらつらと考えていると、ノック音がして失礼しますとギルド職員さんが入って来た。

「鑑定が終わりました。さすがセナ様。大変素晴らしい薬草です！　サヴァ草とゲンコツ草ともにＳ判定と特Ｓ判定です。サヴァ草は１００本中20本が特Ｓ判定で、ゲンコツ草は１００本中50本が特Ｓ判定となりました。Ｓ判定の方のサヴァ草が１本につき銅貨５枚、ゲンコツ草が１本につき銅貨８枚となり、特Ｓ判定の方はサヴァ草が１本で銀貨１枚、ゲンコツ草が１本銀貨１枚と銅貨５枚となります」
「え。高くないですか？」

　ジョルガスさんがギルド職員さんから受け取った紙を見ながら説明してくれるけど、金額に違和感を感じる。
　確かカリダの街では、サヴァ草が銅貨３枚でゲンコツ草が銅貨５枚だったはず。

「カリダの街よりもここ王都の方が人口も多く、冒険者や人の出入りが多いため薬草の需要も高いのです。なので、必然的に買い取り価格も上がります。しかも！　セナ様に納品頂いたのはS判定と特Ｓ判定ですので！」
「は、はい。ありがとうございます……」
「人生で特Ｓを見られるとは思っていませんでした！」

　段々と興奮して身を乗り出してくるジョルガスさんにちょっと引きつつ、なんとか返した。
　同じ国でも所変われば金額が全然違うということを実感だわ。

「サヴァ草がＳ判定と特Ｓ判定合わせて１００本で金貨６枚、ゲンコツ草が１００本で金貨11枚と銀貨５枚となります。合わせて金貨17枚と銀貨５枚になります。ご用意したのが大金貨ではなく金貨となってしまったのですがよろしいでしょうか？」
「はい。大丈夫です」
「ではこちらをお受け取り下さい」
「ありがとうございます」

　ジョルガスさんからお金の入った袋を受け取り無限収納インベントリへ入れる。

「では、セナ様とジルベルト様のギルドカードに記載致しますのでカードをお願いいたします」
「はーい！」

　私がカードを渡すとジルベルト君も慌ててカードを渡した。

「セナ様もご一緒にランクを上げてしまいましょう」
「へ？　私も？」

　いきなり何を言うのかと声が裏返っちゃったよ。
　目線で説明を求めたら、ジルベルト君と同じく注目されるからとのことだった。　
（確かにこの街じゃ注目されそうだもんね……むしろ既にされてるよね。避さけられてたし。うっ。自分で言ってて悲しくなってきた）

「はーい……」
「ではセナ様はＥランク、ジルベルト様はＦランクといたしましょう」
「それだと僕は二つもランクアップになってしまいます」
「はい。ジルベルト様はお強いですから問題ありません。セナ様とご一緒のパーティですのでランクに差がない方がよろしいかと思います。差が出るとパーティランクも落ち、入れるダンジョンも限られますので」

　オロオロしているジルベルト君に大丈夫だよと声をかけて、ジョルガスさんにそれでお願いしますと頭を下げる。ジョルガスさんは早速カチカチといつもの機械をいじってカードを差し込んだ。

「はい。これよりセナ様はＥランク、ジルベルト様はＦランクとなりました。こちらカードをお受け取り下さい」
「はーい」

　ギルドカードを受け取り、ジョルガスさんと一緒に一階に降りようとすると、階段下に冒険者達が溢れているのが見えた。
（え。なに？　人いっぱいなんだけど……）
　とりあえずみんなで降りると、ものすごく注目された。何十人もいる人達からの視線をビシビシ感じる。値踏みするような視線だけではなく、まとわりつくような気持ち悪い視線まである。
（上から見下ろされながらガン見されるとか怖い！　怖すぎる！　この気持ち悪い視線はあいつらを思い出しちゃう……）

「ふぇぇ」

　泣きそうな声を出した私をグレンがサッと抱っこしてくれたのでギュッとグレンの服を掴む。

〈ジルベルト行くぞ〉
「はい」
「待て！」

　グレンが歩き出すと大きな冒険者に通せんぼされた。
　大声を聞いて私の体がビクッと反応すると安心させるようにグレンの腕の力チカラが強くなった。

〈邪魔だ。どけ〉
「さっき地下で戦ってたやつだな」
〈戦っていた？　笑わせるな。我われらは武器を試していただけだ。話しかけるな。どけ〉
「おいおい。冗談は……グッ」

　どいてくれない冒険者にグレンが威圧すると、冒険者は青い顔で汗を流しながら膝をついた。

〈フンッ。邪魔だと言っているだろ。ジョルガス。教育はしっかりしておけ〉
「かしこまりました。お任せください」

　ジョルガスさんに後を任せて、ギルドを出るとグレンは急いでお城に戻ってくれた。
　お城の部屋に戻ってもさっきの視線が頭から離れない。あいつらみたいにモヤモヤしたりはしなかったけど、気持ち悪いし怖いものは怖い。デビト・ワーレスの件が終わり、気を抜いていたときだったから余計に恐怖として反応してしまうんだと思う。
　ソファに座っているグレンに抱きついてプルプルしている間ずっとグレンが頭を撫でてくれていた。しばらく震えていると本当に小さな声でボソッと〈昼飯〉と聞こえて一気に気が抜けた。
（気が抜けて震えも止まったわ。飾らないグレンに助けられてるわぁー）

「ふふっ。おなか減ったの？」
〈む。すまん。減ったと言うより食いたくなっただけだから気にするな。昼飯なんかよりセナの方が大事だ。安心できるまでこのままでいい〉
「なるほど。グレンのおかげで大丈夫になったよ。ご飯は今日帰りに屋台エリアで買ってこようと思ってたんだよね。そしたらお昼ご飯とデザート、みんなで食べられるでしょ？」
〈買いにいくか？〉
『主様は今日は出ない方がいいわ。また絡まれたら厄介だもの』

　私のためにクラオルが反対してくれると精霊達もクラオルの意見に賛成らしい。みんな優しい！

《食べたいならグレンが買いにいけばいい》
〈そうだな……なら我われが買いに行くか。セナは大丈夫か？〉
「うん。もう大丈夫だよ。ありがとう。グレンだけだと場所とかわからないかもしれないから、ジルベルト君も一緒に行ってもらってもいい？」
「かしこまりました」

　ジルベルト君が了承してくれたのでグレンにお金を渡してお見送りした。

『主様。無理はダメよ。数日は休んだ方がいいわ』
「でもジルベルト君の服とか武器買いに行かないと……」
《本人が行けばいい。儂わしが付いていってもいいしな。セナの守りはウェヌスとプルトンがいれば大丈夫だろう》
『そうね。それがいいわ。ジルベルト一人が心配ならグレンも一緒に行けばいいのよ』

　みんな優しい。まさかトラウマになっているとは思わなかった。みんながいなかったら一人震えていたと思う。

　みんなで話していると、グレン達が戻ってきた。
　グレンは渡したお金以上に串焼きを大量購入。食べたかったからと自腹で買ってきたらしい。お皿に乗せた串焼きの山がダイニングのテーブルにフレンチトーストを置く場所がないくらい所狭しと並べられた。
　とりあえずはみんなでお昼ご飯の串焼きを食べ、ウェヌスに風の子と闇の子を呼んでもらったら、シフォンケーキとフレンチトーストでお疲れパーティーの始まり！

　パーティーは大盛況で風の子も闇の子もフレンチトーストをいたく気に入ってもらえたらしく、またお手伝いするから呼んで欲しいと口々に言われた。

　たっぷりと英気を養い、可愛い精霊の子達にお礼を言うとパーティーはお開きになった。
　片付けはクリーンをかければいいだけ。とっても楽チン！　生活魔法のありがさよ！

　シフォンケーキとフレンチトーストでおなかいっぱいな私は夜ご飯が入らない。みんなもおなかいっぱいらしいので、今日は作らなくて大丈夫みたい。

　パーティーが楽しかったらしく、今日はリバーシをしなくてもいいらしいので早々にベッドの中へ。
　明日はグレンとジルベルト君に服の件を話さないと……と考えながらもグレンの腕の中の安心感から瞼がだんだんと重くなってきた。