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5章

報告

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 ネライおばあちゃんのお店からお城の部屋に戻ってくるとジルベルト君が迎えてくれた。
 ソファに座ってジルベルト君が淹れてくれた紅茶を飲む。

「ふわぁ。美味しいー。やっと終わったねぇ……」
『そうねぇ。これで心置き無く旅に出られるわね』

 クラオルとグレウスが擦り寄ってきてくれてとても癒される。

「うん。思ってたより長居しちゃったねぇ……ガルドさん達元気かなぁ?」
〈ガルド?〉
呪淵じゅえんの森で記憶喪失の私を助けてくれたパーティの人だよ。ってそうだ! ウェヌスは一緒にいてくれてるけど、お仕事大丈夫なの?」
《はい。こちらでのセナ様のうれいが晴れた様ですので、そろそろ一度戻ることにはなりますが……》
「そっか……明日までは大丈夫?」
《はい。大丈夫です》
「それなら明日風の子と闇の子も呼んでお疲れパーティーしよう! みんな活躍してくれたからちゃんとお礼言いたいし」
《さすがセナ様はお優しいですね。伝えておきます》
「ありがとう! 午前中はおばあちゃんのお店にも行かなきゃいけないから、午後でもいいかな?」
《はい。もちろんです》
「ありがとう!」
〈パーティー? またあのニジゲンを着るのか?〉

 グレンの中では軍服は“ニジゲン”となったらしい。
 私が“リアル2次元”と騒いだからだな。

「ふふっ。いつ着てくれてもいいんだけど、着なくて大丈夫だよ。パーティーって言ったけど、みんなへのお礼だからね。この部屋でみんなで美味しい物を食べようかと思って」
〈美味い物か! いいな!〉
「さて、今日はこの後ゆっくりしようかな」
『私達は賛成よ』

 ラスクをつまみながらまったりタイム。クラオルとグレウスを撫でて癒される。

 夜ごはんを作りに一度ベッドルームからコテージに行き、作り終わったら部屋に戻って夜ごはん。
 夜ごはんの肉うどんを食べ終わると、プルトンからリバーシの催促を受けた。
 リバーシを出すと第一戦目が誰がやるのかで揉め始めてしまった。

 なんとなく星が見たくなって、みんなに念話で伝えてからベッドルームからコテージの空間に入った。
 ドアが見えるように開けっ放しのままで、海辺の砂浜に座る。まだ完全に夜ではないものの段々と夜になっていく空をボーッと眺める。

『主様』
あるじ……』

 クラオルとグレウスがきてくれたので、膝の上に乗せゆっくりと撫でているとなぜか二人共心配そうにこちらを窺っている。

『主様大丈夫?』
「うん? 大丈夫だよ。もうすぐ出発なんだなぁーって思って」
『寂しいの?』
「そうだねぇー。カリダの街でも、王都でもずっとブラン団長達にお世話になっちゃったから、離れるってなるとやっぱり寂しいね。大丈夫だよ。前みたいに泣いたりしないから。すごい寂しいけど、私はやっぱり旅に出たい。会えるかわからないけど、ガルドさん達の元気な姿を見たいんだよね」
『主様……無理しなくていいのよ?』
「ふふっ。ありがとう……みんなにお別れも言わなきゃね」

 もうネックレスの魔道具は渡してしまった。何かあるだろうか?と考えても特に思い付かない。
 一段落して頭が働かなくなったらしい。


《((セナ様。こちらに団長が向かって来ております))》

 ちょっと焦った声でウェヌスから念話がきた。部屋から近いのかもしれないと急いで部屋に戻る。
 部屋のリビングに戻るとリバーシはダイニングのテーブルに移動していて、みんな準備ができていた。
 私がソファに座るとブラン団長が部屋に着いた。

 とりあえずの現状の報告だとブラン団長が説明してくれたのは、デビト・ワーレス達一派がほとんど捕らえられたことと他の街にある彼らが持っている不動産に家宅捜索が入ったこと。そして関係していた奴隷商人を捕らえたことだった。
 商業ギルドと冒険者ギルドに頼んでいた他の街にある物件を調べるということも、全て動き出していたらしい。仕事が早い。

「……セナから聞いて準備はしていたが、城内は今せわしなく動いている。今は尋問中だ。デビト・ワーレス自体の尋問は罪状がほとんど決まっているため直ぐに終わりそうだが……セナはデビト・ワーレスの家に潜入したんだよな?」
「うん」

 言いにくそうに聞かれ、どうしたのかと首を傾げる。

「……デビト・ワーレスの地下室に入れなくてな……今は魔法省も人材がいないため派遣してもらうことが難しい状況だ。悪いが協力してもらえないか?」
「大丈夫だよ! 今すぐ?」
「……いや。もう遅いから明日頼みたい」
「明日は朝ネライおばあちゃんの家に行くからその後でもいい?」
「……あぁ。構わない。そしてあの書類や帳簿を全部渡してもらっても構わないか?」

 ブラン団長に言われたので全部テーブルの上に乗せると、ブラン団長はマジックバッグに全て収納した。

「あ。あの赤い日記帳、おばあちゃん達に聞いてみて望んだら見せてあげるか、説明してあげることってできる? お孫さんの亡くなった真相だから、知りたいかもしれない」

 私が言うとブラン団長は了承してくれたばかりか、おばあちゃん達が望むなら一緒に入っていた指輪をおばあちゃん達に渡してくれるらしい。

「……セナ。…………処罰に希望はあるか?」
「へ?」
「……今回捕まえられたのもセナの功績だ。ジルベルトのように解放はしないことはわかっているが……」
「あぁー、なるほど。私的には死刑よりも厳罰を希望するけど……捕まえることしか考えてなかったや」
「……そうか」
「丸投げになってるね。ごめんなさい」
「……いや。希望がないならないで構わない。いらん気を回させたな」

 ブラン団長は申し訳なさそうに眉を下げた。
 むしろ気を遣わせちゃって申し訳ないよ。捕まえただけで解決した気になってたもん。

 ブラン団長はまだまだ仕事があるらしく、私の頭を撫でてからお仕事に戻っていった。
 そのお仕事は間違いなくやつらを捕まえてもらったせいだろう。

 いつもの寝る時間よりは少し早いものの、ずっとバタバタしていた私は気が緩んだのか眠い訳ではないけどベッドに入りたい。
 ブラン団長が帰ると直ぐにリバーシを再開したみんなを見て、今日くらいはいいかと、黙ってベッドに入った。
 おそらくエルミスとウェヌスは気付いていたから大丈夫だと思う。

 目を閉じているとウェヌスが近付いてくる気配がした。
 ドアを通り抜けたんだなぁと思っていると優しく頭を撫でられた。心地良さにチカラが抜け、眠たくなってくる。
 ウェヌスが何か囁いていたけれど、微睡みに沈む私には聞き取れなかった。



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