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5章
信者
しおりを挟む魔道具のアクセサリーを作り終わってひと段落。
「さて次は馬車のデザインだね。多分集中しちゃうから先に夜ご飯作ろうかな?」
精霊達は一緒にキッチンにきて手伝ってくれるらしい。
グレンが夜には戻ると言ってたのでお肉。
ノーマルな鶏肉を挽き肉にして鶏そぼろ丼。
ついでに玉ねぎのお味噌汁がなくなったので、大根と人参のお味噌汁も作った。
わいわいと話しながら料理を作り終えたら、リビングで馬車のデザインを考える。
精霊達はクラオル達の所に遊びに行った。
理想は屋根付きの箱型。
御者席にも扉を付けて中から出入りできるように。アニメやマンガを思い出しながら描いていく。
無駄に絡まれたくないので見た目はシンプルイズベスト。
何パターンか考えているとグレンから戻ると念話が届いたので、みんなに念話で声をかけて部屋に戻った。
〈戻った〉
「失礼致します」
「おかえりーいっ!?」
ジルベルト君が部屋入ってくるなり土下座になってビックリする。
「セナ様。本当にありがとうございます」
「へ?」
「僕はセナ様に付けて頂いたジルベルトとしてセナ様に全身全霊をかけてお仕え申し上げます」
「……いやいや。いきなりどうしたの?」
「ブラン様、グレン様に昨夜から先程までお聞き致しました。セナ様はお心が広く優しく清廉されており、正に女神様だと」
(ひぇぇー! なんじゃそりゃー! どこの聖人よ!?)
「いやいや! 私は自己中の塊だよ! そんな凄い人格者じゃないから! ちょっとグレン! 何言ったの?」
〈我は事実しか言っていない〉
「じゃあなんでこうなったの?」
〈ブランとセナの話をしたらこうなった〉
「どんだけ誇張したの?」
ジト目でグレンを見る。
〈我は事実しか言っていない。皆に優しく、料理は美味い。自分を犠牲にしてまで魔獣と戦い、嫌いな貴族の呼び出しもブランのためにこうして王都に来た。御者にも感動され泣かれていたし、褒美としてこやつを守っただろ。今は服屋のために動いているしな〉
『うん。事実ね』
《(事実だな)》
《(事実しかないわね)》
グレンの言葉にクラオル・エルミス・プルトンが反応した。
「いや。後半は概ね事実ではあるけど、優しい人には優しくなるし、料理もジルベルト君も自己満足のためなのに……魔獣は面倒だったからさっさと倒したかっただけだよ? 私そんな聖人君子じゃないよ」
〈セナの普通が優しいからな〉
「セナ様のお話を聞いて、やはりセナ様は女神様なのだと再確認致しました。精一杯仕えさせていただきます」
再び土下座をした後キラキラした瞳で私を見つめるジルベルト君。
「…」
(どうしよう。グレンに洗脳されてる気がする。これじゃあ信者だよ……)
〈先に言っておくが、元よりこうだったぞ〉
「えぇー!ってそんなわけあるかいっ! そもそもグレンのお話はなんだったの?」
〈セナを利用したり手を出さんように言い聞かせようと思ったんだが、心配なかったな。セナの話で盛り上がった故この時間になった〉
「ジルベルト君にも好みってもんがあるでしょうよ……」
〈セナは特別だからな〉
グレンの言葉にみんなが頷いている。
「あのね、ジルベルト君。私は普通の一般人。平民で庶民なんだよ。そんな優しくないの。自分の好き勝手してるだけなんだよ」
「はい。常日頃、心からお優しいのですね」
「家族や大切な人を傷付けるなら王様だろうとケンカ売っちゃうんだよ? 一緒にいたら危ないこともあるよ?」
「従魔やご友人をとても大切にしていらっしゃるのですね」
「みんなを利用してるかもしれないし、ジルベルト君も利用してポイッってしちゃうかもしれないよ?」
「本当に利用するのでしたら、そのようなことは仰らないと思います。先程セナ様は大切な人を守るためにケンカを売ると仰いました。僕を使って頂けるのでしたら本望です。セナ様の足でまといにならないようにしっかりと付いて行きたいと思います。なんなりとご命令下さい」
私が洗脳を解こうと話している間も終始キラキラとした瞳を向けられ、再び土下座をした。
(ヤバい。私の頭ではもうお手上げだよ! これ以上なんて言えばいいの!? これパパ達に言ったら洗脳解いて貰えないかな?)
『主様。考えてることが何となくわかるけど、無理だと思うわ』
「え!? 治せないの?」
『主様思い出して。ガイア様達は従僕って言ってたでしょ?』
「そういえば言ってた……」
『主様の危険がなくなることを考えるとそのままだと思うわ。むしろ主様を守れと神達が喜んで後押しすると思うもの。それに神達も心を変える事はできないわ』
「マジか……」
「前々から思っておりましたがやはりセナ様は従魔と話せるのですね! さすがセナ様です。セナ様にお仕えできるとは身に余る光栄です」
「えっと……うん。話せるけど、私そんな凄い人じゃないんだよ……」
「わかっております」
(絶対わかってない!)
「もう……これどうしよう……とりあえずジルベルト君。ソファに座ろうか」
「いえ。僕は……「いいから!」」
ジルベルト君が拒否しそうだったので遮る。
「命令。命令でいいからお願いだからとりあえず座って」
「かしこまりました」
(なんでニッコニコなの? 命令されて嬉しいの?)
「とりあえずジルベルト君。私は別にジルベルト君に仕えてもらいたい訳じゃないの。どっちかと言うとパーティメンバーとして……ってえぇ!?」
ジルベルト君が急に泣き出してビックリする。
「セナ様はやはりお優しい……僕なんかを対等に扱って頂けるなんて……やはり誠心誠意お仕え申し上げますっ!」
「なんでそうなった!? そのまま対等になってくれればいいのに……」
「セナ様のような女神様に対等など畏れ多いです」
『主様。言っても無駄よ。命令として普通になりなさいって言わなきゃダメだと思うわ』
「マジか……重症過ぎるでしょ……」
(私が泣きたいわ)
〈セナ。飯が食いたい〉
グレンからご飯の催促がきた。
「はぁぁ……じゃあご飯にしようか」
(混乱気味の私の雰囲気を察知したのか、ただ単におなかが減ったのか……多分後者かな)
ダイニングのテーブルに移動してみんなにご飯を渡していく。
精霊達はグレンのベッドルームへ移動してもらってご飯を渡しておいた。
ジルベルト君の分は作っていなかったので私の分をジルベルト君に渡した。おそらく足りないだろうからおにぎりも付けて。
「ぼ、僕もよろしいのですか?」
「うん。それだと足りないでしょ?このおにぎりも食べてね」
「こちらはセナ様のお食事ではないのですか?」
「細かい事は気にしなくて大丈夫だよ。ちゃんと食べてね」
「ですが……」
「分かった。命令です! ちゃんとおなかいっぱいになるまで食べて。足りなければちゃんと言って。わかった?」
(毎回これは大変だわ……明日の朝ちゃんと言い聞かせよう……)
「か、かしこまりましたっ……」
泣き止んだのに再び泣きながらご飯を食べていくジルベルト君。
私は簡単におにぎりで済ませた。
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