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5章

勝負

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アクエスパパのテンションが上がるとみんなニコニコと笑顔を振りまき始めた。

「セナさんが喜んでくれると思って選りすぐりました!」

エアリルパパまでテンションが上がっている。

「ふふっ。不思議そうな顔だね。とりあえず移動しよう」

ガイにぃの一言でみんなが立ち上がったので私も慌てて立ち上がる。
ガイにぃが指を鳴らして移動した先は、前にもきたことのあるガゼボが建っている草原だった。


「僕から紹介しますね!僕の子は風と雷と闇属性の魔法が使えます!セナさんが以前モフモフがいいと仰っていたので、モフモフにしました!」

エアリルパパがテンション高く指を鳴らすと、エアリルパパの隣りに子猫サイズの小さな黒豹が現れ、大人しく座った。

「次は俺だな!俺の子は水と氷属性が使える。おまけに力持ちで、ちゃんとモフモフだ!」

アクエスパパが指を鳴らすと、薄い水色の毛がキラキラと輝くぬいぐるみみたいな子グマがこれまた大人しく座った。

わらわの番じゃな。わらわの子は炎と光属性じゃが、偵察もできるし鍛冶も手伝える」

イグねぇが指を鳴らすと、イグねぇの肩に文鳥サイズの赤い小鳥が現れた。

「最後は私だね。土と草と無属性が使えるよ。セナさんが好きな料理の食材や薬草などを探す手伝いができるよ」

ガイにぃが指を鳴らすとモフモフの白いティーカッププードルサイズの子犬がガイにぃの隣りにちょこんと座っている。

「か……可愛い!みんな可愛い!」
「予想通り喜んでくれたのぅ。ほれみなセナに挨拶するのじゃ」

イグねぇが声をかけると四匹とも近付いてきてくれた。

「わぁ!ちっちゃくて超可愛い!みんなぬいぐるみみたい!」

四匹ともうるうると私を見ていて、順番に撫でてあげると、体をこすりつけてきた。

「うはぁ!モフモフ!」
抱きしめて撫でくり回しモフモフを堪能する。

黒豹は毛が短いけど柔らかくサラサラしていて肌触りがいい。
水色の子グマは少しひんやりとしていて、予想外にフワフワ。
小鳥はまさに羽毛でホワホワ。
子犬は秋田犬みたいでフワッフワのモッフモフ。
四匹とも幼女サイズの私でも簡単に持ち上げられた。


「ふぅ。可愛いねぇ。モフモフさせてくれてありがとうね」

満足するまでモフモフしてから頭を撫でて解放してあげる。

「この子達は?」
「セナに選んでもらおうと思っての」
「選ぶ?」
「ずっとセナさんに送ろうと思っていたんだけど、タイミングが無くてね。この子達は縮小化できる子達で、本来はもっと大きいから背中に乗れるし、馬車も引ける。そして巨大化もできるから戦える。セナさんが旅するにはちょうどいいと思ったんだよ」

ガイにぃがニコニコしながら説明してくれた。

「えっと、うん。それで選ぶって?」
「この四匹からセナの好きな者を選んで貰おうと思ってのぅ」
「……エアリルパパ。アクエスパパ。イグねぇ。ガイにぃ。全員正座してくれるかな?」

自分が思っていたより低い声が出た。

「「「「え」」」」
「全員正座!」
「「「「!」」」」

私の一言で慌てて四人ともその場で正座をした。

「選ぶ?この子達から?選ばれなかった子はどうするの?選ばれなかった子の気持ちはどうなるの?ちゃんと考えた?
パパ達神様だよね?まさか私が死んだ時みたいに誰の子が選ばれるかとか勝負してたりしないよね?」
「「「「!」」」」
『『『『!』』』』
「まさかだよねぇ?」
「「「「それは……」」」」
「それは?」
「「「「ごめんなさい」」」」
「まさかガイにぃまで勝負に乗るなんて……」
「うっ……」
「はぁ……誰もこの子達の気持ち考えなかったの?私と一緒に行くのが嫌な子がいるかもしれないのに?」
「「「「ごめんなさい」」」」
「誰か選ぶなんてできないから全員選べないかなー」
『『『『!』』』』

私の言葉に黒豹達がビクッと反応した。

「あーあ。こんなに可愛いのにパパ達神様は道具みたいに扱うんだねー。私、とってもショック」

大げさにため息をつきながらしゃがんで黒豹達を撫でてあげる。

「「「「!」」」」
「パパ達はみんなに優しいと思ってたのに……」
「「「「!」」」」
「ショック過ぎてもう教会にきたくなくなっちゃうかもしれない」
「「「「!」」」」

私がチクチクと嫌みを言い続けるとそれはもう盛大に落ち込む神様達。
エアリルパパにいたってはもう泣き始めてしまっている。

「まぁ、冗談はこの辺にしておいて」
「「「「冗談?」」」」
「んー。2/3くらいは本気だったけど」
「「「「2/3」」」」
「うん。だって賭けの対象になるなんて嫌だろうし、選ばれなかった子達が可哀想じゃん。むしろ私に付き合うハメになる子が可哀想かもしれないけど。それにこんなに可愛い子達を選べなんてコク過ぎだよ。と、言う訳で。みんなが選んでくれるかな?」

本当は仲良くなってからモフモフ従魔と契約して貰いたかったけど……選んでもらえたら家族として迎えようと、聞いてみた。

『『『『!』』』』
「でも一応条件があるの。ここにいる私の家族と仲良くすること。ドラゴンのグレンと、昨日から一緒に行動することになったハイエルフのジルベルト君もいるから、その二人とも仲良くしてくれること。後は街とかで勝手に暴れたり、魔法やスキルを使わないこと。
これが条件だよ。嫌だったら遠慮しないで言ってね。パパ達神様に言われたからって無理して付き合わなくていいんだよ。ちゃんと自分の気持ち大切にして」
『ミィー』

私が言い終わるとすぐに黒豹が足元にスリスリと寄ってきてくれた。たいへん可愛い!

「わぁ!キミは一緒にきてくれるんだね」
なでなでしながら名前はどうしようかと考える。

『ワフッ』
『チチチッ』
『クーン』

黒豹を撫でていると他の子達も寄ってきた。

「みんな一緒に来てくれるのかな?」

私が確認すると全員頷いてくれた。

「じゃあ、名前考えないとだねぇ。何がいいかな?」

パパ達を放置してモフモフを撫でながら名前を考える。

「黒豹みたいなキミはネラース」

手で持ち上げながら決めた名前を呼ぶとピカーっと光った。

『よろしくおにゃがいします』

ペコりと頭を下げられた。
声の感じから男の子らしい。
よろしくねと撫でてあげるとゴロゴロと気持ちよさそうに喉を鳴らしながら擦り寄って来る。

「ふふっ。可愛い。ちょっと待っててね」
私が言うと大人しく近くに座ったので、もう一度撫でてあげてから次の子グマを持ち上げる。

「うーん。キミはアクラン」
『よろしくお願いしますなの』

こちらは女の子の声だった。

「小鳥のキミはルフス」
『よろしくっち』

こちらも女の子。

「白い秋田犬みたいなモフモフのキミはあのワンちゃんを思い出すんだよねぇ…名前はニヴェス」
『よろしくお願い致しますン』

この子は男の子の声だった。
みんな名前を付けてあげると挨拶してくれた。
忘れないうちに従魔の首輪を付けないと。
黒豹のネラースは虎じゃないけどゴールデンタイガーアイ。水色の子グマのアクランは真っ青なラピスラズリ。赤い小鳥のルフスはピンクゴールド。白い子犬のニヴェスは綺麗な灰色のイーグルアイ。
(全部みたいなやつだけどね)

全員の首輪を決めたら付けて魔力登録して、冒険者カードにも従魔登録させた。

「これで登録が終わったよー!みんな仲良くしてね?それにしても一気に大所帯になったな…これ以上増えたら名前こんがらがっちゃいそう…」
『主様…』

クラオルが心配そうな声で呼びながらスリスリしてくる。

「ふふっ。クラオル可愛い。クラオルもグレウスも大好きだから安心してね。みんなは何かわからないことがあったら、私かクラオルに聞いてね。クラオルはみんなに教えてあげてね」
クラオルとグレウスを撫でながら新しく従魔になった子達に伝えた。
『しょうがないわねぇ』

ちょっと嬉しそうな声でクラオルが返事をしてくれた。

あるじよ。神達はいのか?》

見守っていたエルミスがチラチラとパパ達を見ながら言う。

「そうだねぇ。とりあえずみんなは影に入ってて貰ってもいいかな?」

私が言うと嫌がることもなく、大人しく影に入ってくれた。

「さて、パパ達は反省してくれた?」

正座のままのパパ達に聞くとみんなブンブンと激しく頷いた。

「じゃあいいよ。でももうこういう勝負はしちゃダメだよ?」

私が言うとパパ達はホッと息を吐いて足を崩した。

「今回は私達の責任だね。もう勝負したりはしないから安心して」

ガイにぃが言うとパパ達がコクコクと頷いている。

「もう怒っていませんか?」

エアリルパパが私を窺うように聞いてきた。

「怒ってるってよりショックだったんだよ。パパ達がこの子達の気持ちを考えていない事が。私のせいで嫌な思いさせちゃうのは嫌だったの」
「そうだったんじゃな。もう勝負などはせぬ。セナに嫌われたくないしのぅ。変わらず会ってくれるかの?」
「うん。もうしないんでしょ?私も教会に行くし、イグねぇもコテージにきてね?」
「うむ!セナに嫌われたかと思うたぞ」

私を抱きしめてイグねぇがホッと息を吐いた。

「とりあえず戻ろうか?」

ガイにぃが指を鳴らすとまたソファの部屋に移動した。




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