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5章
教会
しおりを挟むクラオルに起こされるまで爆睡していた。
爆睡と言うか…落ちたと言うか……
「うーん…またパパ達かな?」
ベッドに腰掛けて呟く。
『何が?』
「ううん。なんでもない。グレンは…戻って来てないみたいだね」
『そうね。今日戻って来るのかしら?』
「え?そんなに長引くような話してるの?話って普通の話じゃないの?」
『主様が心配する様なイジメとかじゃないから安心してちょうだい』
「本当?」
『本当よ』
クラオルは安心させるかのように肩に登ってスリスリしてくれる。
「クラオルが言うなら。とりあえずご飯がいるか確認しないとだね」
「((グレンー。おはよう。朝ごはんどうするー??))」
〈((もうそんな時間か。我の分は大丈夫だ。夜くらいに戻る))〉
「((無理しないでね?))」
〈((おう!任せろ!))〉
(なんか最後テンション高くなかった?任せろって何を?寝てないからハイになってるとか?)
『主様?どうしたの?』
首を傾げているとクラオルに心配そうに聞かれてしまった。
「いや。なんか“任せろ!”ってテンション高く言ってたんだけど、よく分からないし、なんでそんなにテンション高いのかなって」
『寝てなくておかしくなったんじゃない?』
「やっぱそう思う?戻って来たらちゃんと休ませよう。とりあえず夜まで戻って来ないみたいだから、朝ごはん食べちゃおー」
ベッドから立ち上がり日課を済ませると、今日もプルトンがテンション高く私の髪の毛をセットした。ここ2日いじられた感じでは本当に毎日セットしてくれるみたいだ。
ダイニングに移動して朝ごはん。グレンがいないならお弁当の残りで充分。
食べ終わったらウェヌスを介して精霊の子達からの報告を受ける。
まだ動き出さないみたい。
騎士団が魔法省と老害の家に調べに入った事で混乱しているらしく、私が昨日報告を受けた貴族以外も、王都に住む貴族全体が事実確認で慌ただしくしているらしい。
(やっぱり謁見で発表されてからかな?)
『そうそう。ガイア様から教会に来て欲しいって伝言よ』
報告を受けて考えているとクラオルが言う。
「そう言えば王都に来てから教会に行ってないね。コテージでも会わないから忙しいのかと思ってた」
『行けば理由が分かるわ』
「んー?まぁ、とりあえず行ってみよう!貰った食材のお礼とコテージの改装のお礼も言わなきゃだし、会えるならみんな紹介したいしね」
《まぁ!私達を紹介してくれるの!?》
「もちろんだよ。グレンはいないけどウェヌスもいるしね」
《ありがとうございます》
ウェヌスは顔を赤くして照れている。
「じゃあ早速行こうか。ポラルくっ付いてー」
〔ハイ〕
グレンに念話で教会に行って来ると伝えてから、お城を出てマップで教会を探すと貴族エリアに2つと、平民エリアに4つあるらしい。
どっちかと言うと平民エリアの方に行きたい。
お祈りの最中に「平民に気が付きませんでしたわ!オーホッホ!服が汚れてしまったわ。弁償なさい」なんて言われたくない。
自分で勝手に想像してゲンナリする。
「人が多いね。身体強化使えないから歩きにくい。マップだと商業ギルドが近いから転移しちゃおう」
人混みを避け路地に入り、周りに誰もいない事を確認してから商業ギルドに転移する。
「ふぅ。こういう時にグレンのありがたみを実感するね」
『ふふっ。グレンに言ったら調子に乗りそうだわ』
「そうかもねぇー。可愛いんだけどね」
『ドラゴンを可愛いって言えるのは主様くらいよ』
「そうかなぁ?グレンの性格が可愛いじゃん。頼んだら何でも手伝ってくれるし。ドラゴンの時は可愛いよりカッコイイの方だと思うけど」
セカセカと歩きながら喋っていると教会に到着。
カリダの街の教会よりこじんまりとしていてアットホームな雰囲気。
騒がしくはないけど、住民がお祈りに来ている。
中に入ると全体的に雰囲気は明るく、お祈りに来ている人は、並んでいるベンチに座ってお祈りをしていた。
(なるほど。ここでは像の前でお祈りするわけじゃないのね)
他のお祈りしている人に倣ってベンチに腰掛けてお祈りする。
(アクエスパパ。エアリルパパ。イグ姐。ガイ兄ー!)
「待ってたよ」
声が聞こえて顔を上げるとガイ兄がニコニコと立っていた。
「久しぶりー!」
ガイ兄の足に抱きつくと頭を撫でてくれた。
「パパ達とイグ姐は?忙しいの?」
「ふふふっ。いじけているんだよ」
「いじけてる?」
「そう。とりあえずいつもの場所に移動しようか?」
ガイ兄が私と手を繋ぎ、指をパチンと鳴らすとお馴染みのリビングに移動した。
「とりあえず座って待っていようか?直ぐに来ると思うから」
「はーい」
「待っている間のおやつが必要だね。うーん。これでもいいかな?」
言いながらパチンと指を鳴らす。
テーブルの上には湯のみに入った温かいお茶とお皿に入ったお煎餅とおかきが現れた。
「おぉー!おかきとお煎餅だー!これ食べてもいいの!?」
「くくくっ。もちろん。全部食べてもおかわりもあるから安心していいよ」
「やった!早速いただきます!……んー!美味しい!幸せー!」
あまりの美味しさにクラオル達にも渡してパクパクと食べてしまう。
「くくくっ。そんなに喜んで貰えると嬉しいよ」
「ん!?お茶はほうじ茶だ!」
「セナさんは温かいお茶は緑茶よりほうじ茶が好きだと日本の神に聞いたからね」
「ありがとうー!そうなの!めっちゃ嬉しいし美味しい!」
(ヤバい!久しぶりに食べると止まらない!)
「うーん。みんな遅いね。そうだな、セナさん“せっかく来たのに会えないパパ達は嫌い”って言って貰えるかな?“パパ達よりガイ兄が好き”でも構わないよ」
「んん?」
すごい笑顔でいきなり何を言うのかとおかきを持ったまま首を傾げる。
「言ってみて」
「せっかく来たのに会えないパパ達は嫌い?」
ガイ兄に促されるけど意図が分からず疑問形になってしまった。
「セナさん!」
「セナ!」
「セナ!」
「うぐっ!ゴホッゴホッ」
いきなりソファの横に3人が現れてビックリしてむせてしまった。
『主様大丈夫!?このお茶飲んで!』
クラオルが草魔法の蔓でお茶を渡してくれたのを受け取る。
「……ふぅ。ビックリした。クラオルありがとう」
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