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5章
作戦会議
しおりを挟むポラルはお休みタイムで私のおなかにくっ付いて寝ている。
ラスクを食べながらグレンを待っているとブラン団長達と一緒に向かって来ているのが分かった。
〈戻った〉
「おかえりー。てっきり伝言だけして戻って来ると思ってたよ」
〈セナが急ぎだと言っていたと言ったらすぐに集まった〉
「そっか。ありがとうね」
「…邪魔する」
「おはよう!呼んじゃってごめんね」
「…おはよう。いや。大丈夫だ。トリスタンがいなくて紙を…ん?トリスタン?」
「そうなの。ちょっと色々とあって。とりあえずみんなソファにどうぞー」
テーブルにブラン団長達用の果実水も出す。
ブラン団長達が向かい側に座り、私・グレン・トリスタン君の順で座る。
「…とりあえず頼まれていた紙だ」
「ありがとう!」
ブラン団長から大判の紙を受け取る。
クラオルに頼んでグレンのベッドルームに紙を運んでもらった。ウェヌスとエルミスに地下通路を探っていた風の子を呼んでもらい地下通路を書き出して欲しいと頼んだ。
風の子達のご褒美のパンは少し待っていてもらおう。
「…緊急と聞いたが」
「うん。まず宿を荒らした犯人が分かったの」
「…本当か?」
「はい。ご当主様です。正確にはご当主様より指示を受けた家の影の者です。宿を荒らし、セナ様を王城に呼ぶための指示になります」
トリスタン君が説明してくれた。
「…内部告発か?それを密告したら自分の立場が危ないだろ?」
ブラン団長達はトリスタン君を訝しげに見つめている。
「僕はセナ様を守れるのならどうなっても構いません。ご当主様にセナ様が狙われているのです」
「…ちょっと待て。どういう事だ?」
ブラン団長達は訳が分からないと首を傾げている。
まず昨日の夜あった事を私が説明して、トリスタン君は自分の任務の説明をした。
ブラン団長達は私を狙ったトリスタン君を怒りたいものの、トリスタン君の境遇を考えると何も言えないみたいだ。
戸惑い、複雑そうな顔をしている。
「なるほどねぇー。これは大捕物になりそうだね…」
パブロさんが黒いオーラを出しながら呟いた。
「…本当だったとして、自分も捕まるだろ?」
「どのみち任務失敗で処分されます。なので最後に少しだけでもセナ様のお役に立ちたいのです」
「「「…」」」
トリスタン君の言葉に何も言えなくなってしまったブラン団長達。
「それでね、パーティーでしでかした所を捕まえたいの。ただ王様達には計画がバレない様にしたいの」
話題を変える様にブラン団長達に話しかける。
「…何故?」
「ブラン団長に聞いたあの事件にも貴族が絡んでるけど、今回は権力のある貴族でしょ?しかも魔法省のトップ。国に必要だからって有耶無耶にされたくないの」
「…なるほど。言い逃れ出来ない様にするのか」
「そう。貴族を放任してた王様にも責任があると思うの。他国の王様がいる所で事件が起きたら放っておけないでしょ?」
「…計画があるんだな?」
「うん」
「…聞こう」
ブラン団長達に私が考えた計画を説明する。
途中でフレディ副隊長に危険だと言われたけど、結界を張るからと強引に納得して貰った。
「シュグタイルハンの王様を巻き込んだら国際問題になるのかが1番問題なんだよね。戦争になったら困る」
「…おそらくになるが、シュグタイルハンとは友好国で兄上の友人だから大丈夫だと思う。ただ…セナが目立つと思うがいいのか?」
「大丈夫ならいいかな。本当は目立ちたくないんだけど、この方が他の貴族の見せしめにもなると思うんだよね」
「…今後の事を考えてか…」
「そうそう。トリスタン君を虐待していたのも許せないし、ブラン団長の故郷だしね」
「!」
私が言うとブラン団長はものすごく驚いた。
「セナさんは相変わらず優しいね」
「…セナ。ありがとう。そして巻き込んですまない」
ブラン団長に頭を下げられた。
「ううん。みんなで悪者をやっつけようね!」
私が言うと揃って頷いてくれた。
トリスタン君は任務失敗と口封じのために命の危険があるので、結界を張った私の部屋で待機に決まった。
他の部屋って話もあったけど、何かあった時の事を考えて私の部屋。
ブラン団長達はトリスタン君が私と同じ部屋に泊まる事をすごく嫌がっていた。本当に渋々納得した感じだ。
(同じベッドで寝る訳じゃないんだけど…そもそもグレンも一緒なんだけど)
話している間にお昼ご飯の時間。
私のパンを貰ってばかりは悪いからとブラン団長達は私の部屋にご飯を運んでもらうらしい。パブロさんがお城の厨房に頼みに行ってしまった。
気にしなくてもいいのに。
トリスタン君は私のベッドルームに移動して、料理を運んで来た人にバレない様にしておく。
ブラン団長達がご飯を受け取っている間にグレンのベッドルームに移動して、地下通路の紙の回収と風の子達にお礼を言ってパンを渡した。
風の子達はパンのためにまた手伝ってくれるらしい。
料理を運んで来た人がいなくなったのでトリスタン君を呼んでみんなでご飯。
パブロさんは、トリスタン君のご飯も頼んでいてくれたみたいでちゃんと用意されていた。
「セナさんが気にすると思ったからね。(ズルいし)」
最後が聞き取れなかったけど、気にしてくれたらしい。
「そういえば、さっきセナさんが言ってたブラン団長に聞いた事件って何ー?」
食べ終わるとパブロさんがブラン団長に聞いた。
「…3年程前に止まった金貸しの事件だ」
「あぁー!あったね。書類にサインされてて手が出せなかったやつだよね?」
「…そうだ」
「3年程前と言えばカリダの街の領主が変わった時期ですね」
フレディ副隊長が思い出した様に呟いた。
「へぇー。そうなんだ。あ!そうだ!みんなにお願いがあるんだった」
「「「お願い?」」」
「そう!この地図に分かる範囲で住んでる貴族を書き込んで欲しいの。貴族エリアは分かるけど、どこの家に誰が住んでるかは分からないから」
「それ…出来ます。色々と調べた事がありますので」
トリスタン君がおずおずと言ってくれた。
「本当!?」
トリスタン君にペンと地図を渡すと早速書き込んでくれる。
「へぇー。そこの家って空き家じゃなかったんだ」
パブロさんがトリスタン君が書いている地図を見て反応した。
「こちらの伯爵様は領地開発に尽力されていて、王都には滅多に来られません」
「へぇー。詳しいんだね」
「はい…僕も裏の仕事をしていましたので…使えないといつも怒られていましたが、今だけはセナ様のお役に立ててますのでやっていて良かったかもしれません。…僕が知っている範囲で書きました。これ以上は商業ギルドや不動産を扱う商会などで調べないと分かりません」
「なるほど。ありがとう!すごく助かる」
ニッコリとお礼を言う。
「いえ。セナ様のお役に立てて嬉しいです」
トリスタン君が微笑むとパブロさんとフレディ副隊長が「笑った…」と呟いていた。
「セナ様。3年以上前のあの事件でしたらデビト・ワーレス様が関係しているかもしれません」
「デビト・ワーレス?」
「…謁見の時騒いでいた貴族だ」
「あぁ!あいつか!なるほど…」
(これはピースが揃って来たな…ただ主犯格に仕立てあげられた青年が分からないな)
「何故関係していると?」
フレディ副隊長がトリスタン君に聞く。
「ご当主様とデビト・ワーレス様は派閥が違い仲が良くありません。詳しくは分かりませんが、当時もデビト・ワーレス様達が街で何かをしていると聞きました」
「なるほどねぇ…あの老害は関わっていなくても詳しく知ってそうだね」
「そうですね。おそらくここ王都の事でしたら誰よりも詳しいと思います」
「そっかー。捕まえたら洗いざらい喋って貰おう!」
「…城は混乱しそうだな…」
「そうですね…」
疲れた様子のブラン団長にフレディ副隊長が反応した。
『主様。そろそろ商業ギルド行かなくていいの?』
「あぁ…そうだね。そろそろ行かないとだね」
「どちらへ?」
フレディ副隊長に聞かれた。
「商業ギルド。サルースさんも調べてくれてるから聞きに」
「…なるほど。俺達も行こう」
トリスタン君は私の部屋でお留守番。
プルトンにトリスタン君をお願いしてみんなで商業ギルドに向かう。
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