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5章
コスプレ
しおりを挟む「こんにちはー!」
元気よくドアを開けて中に入る。
「おや。こんにちは」
おばあちゃんはニコニコと迎えてくれた。
「出来てるから確認してくれるかい?」
「うん!すっごい楽しみだったんだー!」
「ふふふっ。そうかい。じゃあこっちで着替えてもらえるかい?」
〈分かった〉
ワクワクしながらグレンが着替えるのを待ち、呼ばれてから個室の中に入る。
最初に頼んだ既製品のお直しのスーツ。
頼んでいたアレンジも理想通りで大満足!
次に軍服の方に着替えてもらう。
「おぉー!」
(リアル2次元!リアルの時点で3次元だけど!ありきたりだけど、2次元が画面から飛び出して来たみたい!)
「グレンかっこいい!やっぱ似合ってるねー!」
グレンが選んだクラオル推しの首元のネクタイとYシャツが見えるタイプの軍服。
〈そうか?〉
ちょっと嬉しそうにグレンが微笑む。
「うんうん!想像以上!ネライおばあちゃん凄い!あのデザイン画からこれが出来るなんて!」
「初めて作ったデザインだから楽しませてもらったよ」
おばあちゃんはニコニコと言ってくれる。
「どこか直すところはないかい?この飾りに少し悩んだんだよ」
おばあちゃんは肩に付いている装飾の紐を指さして言う。
「ここは…これがこうなる感じです」
グレンにしゃがんでもらって説明する。
「なるほどねぇ。確かにそっちの方がいいねぇ。他には何かあるかい?」
「私は特にないですけど、グレンちょっと動いてみて何かあるか確認して」
私が言うとグレンが動いてくれる。
〈いや。見た目より動きやすい。ブーツも申し分ない〉
「そうかい。良かったよ。じゃあこれを直すだけだね。直ぐに終わるからそのままでいてもらえるかい?」
〈分かった〉
グレンは大人しくぴしっと止まった。
(あぁー!良いわー!軍服かっこいいわ。イケメンはおなかいっぱいって思ったけど、軍服着ると別物だわ)
〈セナ。あまり見られると恥ずかしい〉
グレンを見つめていたら恥ずかしそうに注意されてしまった。
「ごめん。ごめん。あまりにもグレンが似合ってるからさー。これはナポレオンコートタイプも楽しみ過ぎるね!マント付きも良いなー。ふふふっ」
「喜んでもらえて嬉しいねぇ。はい。終わったよ」
〈着替えても良いか?〉
「カッコイイのにー。でも良いよ。私達はあっちにいるから着替えたら来てね」
〈分かった〉
移動してカウンターの所でおばあちゃんと話そうかと思ったら、近くのテーブルに案内してくれた。
「セナちゃん達は冒険者でしょう?必要と思う付与はしてあるからそのまま着て戦う事も出来るよ」
「おばあちゃん凄い!」
「ふふふっ。自動サイズ調整、自動温度調整、軽量化、防汚にしておいたよ」
「そんなに!?おばあちゃん大変だったでしょ?大丈夫ですか?」
「心配してくれてありがとうね。付与の仕事は旦那の仕事だから大丈夫だよ。元々冒険者の服を作っていたからね。むしろ得意分野で喜んで付与していたよ」
「すごーい!ありがとうございます!旦那さんにもお礼をお願いします!」
「ふふっ。伝えておくよ」
「あのね、私パーティーが終わったら1回この街出るんです。出来上がったやつは取り置きしておいて欲しいです。先に頼んだ4着分の服のお金を払いたいんですけど良いですか?」
「ふふふっ。こんなに楽しい仕事は久しぶりだし、セナちゃんにはブラックマンティスをもらったからお金はいらないよ」
「おばあちゃん。それはダメです!私はこれからも私の拙いデザイン画を理想の形に仕上げてくれるおばあちゃんに色々頼みたいんですよ!それに職人さんの技術は大事だもん。そんな安売りしちゃダメです!手に入らない魔物とかあったら言ってもらえれば狩りに行きます!」
「おやまぁ!そんな風に言ってもらえるとはねぇ。長生きするもんだねぇ。でもこの先は厳しいんだよ…期限があるから。すまないねぇ」
「期限?」
「今月中にはこの店を出なきゃいけないんだよ」
「えぇ!?そんな…私の萌えが…
服屋さん辞めちゃうんですか?」
「ちょっと色々あってねぇ。人様に言えない様な恥ずかしい話さ…最後にセナちゃんの服が作れて嬉しいよ。残りの服は出来上がったら商業ギルドに預けておくから安心しておくれ」
おばあちゃんは寂しそうに笑った後、気を取り直す様に言う。
〈戻った〉
グレンが軍服を抱えて戻って来た。
「さっき試着して確認したのと一緒に渡すから待っていておくれ」
おばあちゃんはグレンから脱いだ服を受け取るとお店の奧に行ってしまった。
(おばあちゃんの言い方なんか引っかかるんだよね。ちょっと調べてみたいけど、どうやって調べればいいんだろ?)
『主様?どうかしたの?』
「なんか引っかかるんだよね。調べたいんだけどどうすればいいかな?」
〈何を調べるんだ?〉
「このお店を今月中に出なきゃいけないらしいんだけど、その理由がなんか引っかかるの」
『主様の勘?』
「そうだね。しょうがない理由なら諦めるけど、私はこれからも服を作ってもらいたいんだよ」
〈セナは優しいな〉
「違うよ。私のデザイン画をあんなに理解してくれる貴重な人材を逃したくないだけ。完全に自分のためだよ」
『そういう事にしておいてあげるわ』
〈ここは店だろう?店ならば管轄は商業ギルドだ。行って聞けば何か分かるんじゃないのか?〉
「そっか!グレンナイス!商業ギルドか。お店を出たら早速行こう!」
「待たせたね。これがさっき試着した2着だよ」
おばあちゃんは綺麗な布で風呂敷の様に包んで渡してくれた。
「ありがとうございます!また来ますね!」
おばあちゃんに宣言してからお店を出る。
おばあちゃんはまた出口までお見送りしてくれた。
応援ありがとうございます!
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